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» 2012年05月24日 10時00分 公開

電子書籍界の黒船「Kindle」とは?(前編) (4/4)

[山口真弘,ITmedia]
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2011年11月:カラー液晶タブレット「Kindle Fire」の登場

Kindle Fire Kindle Fire

 翌2011年3月に、iPadの第2世代に当たる「iPad 2」がAppleから出荷されたのと前後して、Android 3.0を搭載したカラー液晶タブレット端末が各社から発売され始める。スマートフォンやタブレットというカラーの汎用端末に注目が集まり始め、米国市場でKindleの直接のライバルであるBarnes & Nobleも、それまでのE Ink端末に加えて「NOOK Color」といったカラー液晶端末をラインアップするようになった。

 こうした流れに応える形で、Kindleもカラー液晶タブレット「Kindle Fire」を発売したのが2011年11月。Appleがラインアップしていない、スマートフォンとタブレットの中間に当たる7インチという画面サイズを、199ドルという低価格で投入したことで話題となった。

 Kindle Fireは、GPSやカメラなどAndroidの標準機能を搭載していないとはいえ、その時点でのiPad 2のローエンドモデル(16GバイトのWi-Fiモデル)が499ドルだったことを考えると、価格面のインパクトは大きかった。本稿執筆時点で日本国内への出荷には対応していないが(技適マークを取得していないため日本国内で無線接続すると電波法違反になることに加え、そもそもアメリカのクレジットカードと住所がなければ動画やアプリが買えない)、2011年のクリスマス商戦から2012年の年始にかけて、600万台ほどを売り上げたとする説もあるほどだ。

 技術的なところでは、クラウドを利用してブラウジングを高速化する技術「Silk」の搭載が目玉とされているが、つまるところ価格を売りにした機能制限つきマルチメディアタブレットであり、ポジショニング的にはiPadなどのカラータブレットへの対抗製品とみるのが正解だろう。しかし本製品の投入でシェア的に影響を受けたのはAppleではなくむしろAndroidタブレットのライバルであるSamsungであるとの調査結果もあり、Amazonの目論見通りの結果となったかは定かではない。

 一方、Appleが2012年3月に投入した第3世代製品「新しいiPad」では、解像度の向上という新しい方向性が提示された。もし将来的にRetinaディスプレイを採用した6〜7インチのiOSデバイスが登場すれば、現行のKindle Fireが影響を受けることは必至で、対応が注目される。現在のKindle Fireはあくまでつなぎの製品であり、次世代の製品こそが本命であるとのうわさもあるなど、Amazonのカラータブレット事業は今後も目が離せない。

2011年11月:タッチインタフェースを採用した第4世代Kindleの登場

 2011年11月に発売された新しいKindleのラインアップでは、前述のKindle Fireが大きな注目を集めたが、第4世代を迎えたE Ink端末の進化も目覚しいものがあった。というのも、この第4世代のラインアップの中心モデルに当たる「Kindle Touch」と「Kindle Touch 3G」で、それまで採用されていたカーソル操作が廃止され、タッチ操作が全面的に採用されたからだ。

 「E Ink×タッチインタフェース」という組み合わせは、2008年に北米市場向けに発売されたソニーReader(PRS-700)ですでに実用化されていたほか、2011年5月に登場した「NOOK Simple Touch」、同じく2011年5月に登場したカナダKoboの「Kobo eReader Touch Edition」などでも採用されていたが、Kindleはこれまでタッチ対応製品の投入を見送っていた。この第4世代モデルで晴れてタッチ対応となり、ようやく操作性の面で他社のE Ink端末に肩を並べたというわけだ。

 余談だが、かつてKindle 2やDXが国内で出回り始めたころ、Kindleの利用経験がない人に説明なしでKindleの本体を渡すと、ほとんどの人がキーに触れずにまず画面にタッチするという興味深い光景が見られた。つまりKindle 2の時点ですでに、いかにもタッチインタフェースらしい外観を有していたわけだ。それから2世代を経て、Kindleはようやく外観にふさわしいインタフェースを獲得したことになる。

 タッチインタフェースへの対応により、初代Kindle以来ほとんど変化のなかったカーソル操作を中心としたメニュー体系は一新された。新規のユーザーを取り込むためのハードルを下げるという点において、やや癖のある従来のインタフェースではなく、タッチによる直感的なインタフェースへのリニューアルは不可欠だったといえる。Kindle FireやiOSアプリと操作性を極力統一するという意味合いもあったことだろう。

 また、タッチ対応のインタフェースは、国際展開時に有利である点も見逃せない。本体のボタンに文字が印刷されている場合、各国語ごとにハードウェアを用意しなくてはいけないが、タッチ対応モデルであればボタン類はすべて画面上で提供できるため、ハードを共通化できる利点がある。現在の「Kindle Touch」は日本語表示が完全といえずブラッシュアップが待たれるが、日本国内でのKindle Storeの展開時はこのKindle Touch(もしくはその後継モデル)が中心となっていく可能性は高いだろう。

 ちなみにこの第4世代モデルのラインアップでは、ローエンドの無印Kindle(俗に言うKindle 4)のみが例外としてカーソル操作を採用している。また従来のKindle 3も「Kindle Keyboard」と名を変えて併売されている。両者はいわば価格重視のローエンドモデルという位置づけだが、ローエンドのカーソル操作対応E Ink端末からハイエンドのカラータブレットまで、全方位的なラインアップを推し進めつつあることが顕著に現れているといえるだろう。

まとめ

 以上、Kindleの初代モデル登場から現在までの歴史を振り返ってみた。初代の時点では399ドルだったKindleも、いまや広告付きモデルで79ドルから。当初9万点でスタートした蔵書数は、およそ4年半で110万点を突破している。まさに隔世の感だ。

初代Kindle(左)とKindle Touch(右) 初代Kindle(左)と、Kindle Touch(右)。発売日でいうとちょうど4年の開きがあるが、タッチインタフェースの採用とホームボタンを除く物理ボタンの廃止、小型化、ほぼ左右対称のデザイン、筐体色の変更など、面影はほとんどない

 もっとも、単純に蔵書の点数だけ見れば、Kindle Storeを上回るラインアップを持つ電子書籍ストアは存在するし(Barnes & Nobleの『The NOOK Book Store』のラインアップは本稿執筆時点で公称250万点とされている)、また初代Kindleにあった通信回線内蔵という強みも、現在では失われてしまっている。では現在、Kindleならではの強さはいったいどこにあるのか。後編となる次回では、機能やサービスといった観点から、Kindleの優位性についてチェックしていきたい。

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