非破壊自炊ということで話題をさらったSV600だが、実際に数百ページにおよぶ本1冊をスキャンするのはかなりの苦行だ。ページめくりの手間を軽減してくれるとはいえ、1ページ1ページ手でめくっては文字やイラストにかかってしまわないよう気をつけながら余白を指で押さえ、スキャン後にも見開きごとのページ補正、指の消去と、基本的には1ページごとに1つ1つ作業をしていかなくてはならない。
今回、いろいろなサンプルを試してみたが、最もSV600の便利さを体感したのは学校の卒業アルバムだった。指で押さえなくてもページが保持される、ページ数も20数ページと、かなり手軽にスキャンできた。ウン十年前のアルバムということもあって、紙自体かなり変色している部分もあったが、だからこそ今のうちにデジタル化しておく必要性を感じた次第だ。
そのほか、名刺スキャンは並べて配置することでまとめて処理できる、というのが売りだが、実際にはScanSnap iX500で順次読み込むほうがはるかにラク、かつ素早く処理できる。これは名刺がほぼ同じサイズであり、iX500で読み込む際に都度、原稿ガイドの幅を調整する必要がないからだ。逆に、サイズがまちまちな領収書の取り込みはSV600のほうがラクだった。ただし、思い立ったときにさっと処理する、ということを考えるとSV600を出しっぱなしにできるだけのスペースは必要になる。もちろん、A3サイズまでスキャン可能というのは単純にそれだけでメリットがあるのだが。
SV600の原理は非常にシンプルだ。だからこそ、そこには工夫の余地がある。SV600の登場を待つことなく、レゴで自動ページめくり機構付きのスキャナを作った猛者は今までにもいる。SV600に対応した“自動ページめくりシステム”が出てくるのもそう遠い話ではないかもしれない。
また、そこまで凝らなくても、例えばガラスやアクリル板など透明な板とスキャンマットを金具でつないだオプションなどは考えられないだろうか。高被写界深度レンズであればあらぬところにピントが合ってしまう心配もないだろう。原稿を指で押さえなくて済むだけでもずいぶんとラクになるはずだ。ただ、そうなるとコピー機の仕組みに近づいてしまうような気もする……。
あるいは指に透明なつけ爪のようなものをつけ、それで押さえることで指の消去を不要にするとか、書籍の片側は透明なテグスのようなもので固定し、反対側だけ指で押さえるなど、“あと少しだけラクになる”方法はいくらでも考えられそうだ(アイデアをお持ちの方は是非@itm_pcuserまで)。
iX500とSV600は相互補完的な位置づけにあるが、執筆時現在、SV600の実売価格が5万円台半ば、iX500が3万円台後半ということを考えると、個人で両方買いそろえるのは2の足を踏む価格になる。
それでは1台だけ購入するとなった場合にどちらを選択すべきかといえば、これはもちろん、予想される用途や確保できる設置スペース次第にはなるが、SV600は(特に1台目のスキャナとして考えるなら)かなりクセがあることは覚えておきたい。とはいえ、A3対応スキャナが欲しい、子供のクレヨン画を保存したいといったように、明確な目的がある場合には十分に応えてくれる製品だ。
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