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“解像度不問”の高速読み取りを実現――「ScanSnap S1500」を試すナンバーは3倍、速度は8倍!?(1/4 ページ)

» 2009年03月11日 15時00分 公開
[瓜生聖,ITmedia]

シャープでエレガンテなイタリアデザイン

「ScanSnap S1500」

 PFUのScanSnapシリーズは2001年の登場以来、一部のモデルを除いてマイナーチェンジを繰り返して現在に至っている。ここにきてモデルナンバーが「S1500」と4ケタになったが、はたして何が変わったのだろうか。早速試してみた。

 まずは外観から。「ScanSnap S1500」(以下、S1500)のカラーリングは、前モデルを踏襲したシルバーと黒のツートンカラーだが、丸みが少なくなり、シャープな印象になった。給紙カバーを開くとこの印象はさらに強まり、黒からシルバーに変わったサイドガイド、スタッカー裏のシルバーのライン、青く発光する長方形のスキャンボタンなど、直線的なデザインでまとめられている。

 ユニークなのはADFカバーのデザインだ。これはスタッカー裏のデザインとまったく同じになっている。前モデル同様、スタッカーを下ろさずに排紙することも可能なので、どちらの使い方をしても外観がほとんど変わらない。また、スタッカーは収納時には磁石で固定するように変更された。

 設置面積にはほぼ変化がないが、容積としては一回り大きくなっているようだ。ただし、その違いは大きくはなく、S510と同じ専用キャリアバッグが利用できる。

本体前面/背面/右側面

超音波方式マルチフィードセンサー

超音波方式マルチフィードセンサーの採用でA3キャリアシートの混載読み取りにも対応した

 ADFカバーを開くと紙送りローラーの下に深いくぼみがあるのが分かる。これが新たに搭載された超音波方式マルチフィードセンサーだ。超音波方式マルチフィードセンサーはPFUの業務用モデル、fiシリーズに搭載されているもので、2枚以上重なって給紙されるマルチフィードを高精度で検出する。これによって元原稿と出力データを目視確認する必要性が減り、紙媒体の電子化プロセス全体の短縮化、生産性の向上が図られている。

 このマルチフィードセンサーの効果が如実に表れているのがA3キャリアシートの混載読み取りサポートだ。A3キャリアシートは本来A4サイズまでしか読み取ることのできないScanSnapシリーズにおいて、A3片面読み込みを擬似的に実現するもの。具体的にはクリアシート状のキャリアシートにA3原稿を半分に折って挟み込み、ScanSnapの両面読み取り機能を使って読み込んだデータを自動的に合成する。最終的にA3片面読み込みと同等の結果が得られる。

 A3キャリアシートを使用した場合、キャリアシートの表と裏、それに半分に折りたたんだ原稿が2枚分、計4枚分が1度に給紙されることになる。そのため、今まではA3キャリアシートは例外扱いとしてA4サイズ以下の原稿とは別に読み込む必要があった。S1500ではA3キャリアシートとそれ以外の原稿を混載しても正しく判断できるようになり、大量の紙資料を順序を維持したままスキャンすることが楽になった。キングファイルに納められている資料の場合、ほとんどがA4でまれにA3が折りたたまれて収録されているというケースも多いだろう。A3キャリアシートに挟み込むという一手間は必要だが、スキャン後にPDFファイルを結合したり、ページ順を修正したりといった作業がいらなくなるのは作業効率の向上にもつながる。

 ただし、A3キャリアシートを用いた合成処理に関していえばそれほどインテリジェントな処理をやっているというわけでもないようだ。原稿をセットする際にはキャリアシートの右端に原稿の折り線をぴったり合わせるようにしないと合成時に隙間ができてしまう。折り曲げ部分にテキストが重ならないような文字中心の原稿などであれば問題ないが、画像や表などではそのままでは継ぎ目が分からないように読み込むのは難しい。

原稿サンプルは「ゲーマガ」(ソフトバンク クリエイティブ)2009年4月号付録ポスター。元はB3サイズだが、スキャン用にB4サイズに裁断している。なるべくぴったり合わせたつもりだが、真ん中に筋状の隙間が見える(画面=左)。中央部を等倍表示させたところ。読み取りモードはスーパーファインだが、原稿サイズがB3のため、4960×3512ピクセルというサイズになる(画面=右)

 また、ScanSnapシリーズにおいて読み取り速度の向上は随時行われてきたが、今回は今までにない、大幅な速度向上となった。S1500を除く今までの全モデルは解像度によって速度に違いがあり、高解像度になると速度が低下していた。ところが、S1500ではエクセレントモードを除くノーマル・ファイン・スーパーファインの各モードにおいてまったく差のない両面20枚/分の読み取り速度を実現している。これは前モデルであるS510において最底解像度であるノーマルモードの18枚/分を超える速度だ。筆者はS510を愛用しているが、ノーマルモードでは解像度が足りないと感じることが多く、通常12枚/分のファインモードに設定している。そのため、S1500では2倍近い速度向上となった。

 こうなるとノーマル・ファイン・スーパーファインの選択の根拠はファイルサイズや解像度のポータビリティなどに限られてくる。例えば、A4サイズで同じカラー原稿をJPEGで保存した場合、ノーマルモードで1234x1762(290Kバイト)、ファインで1644x2351(470Kバイト)、スーパーファインで2468x3511(940Kバイト)という結果になった。PDFの場合はノーマル366Kバイト、ファイン545Kバイト、スーパーファイン1.13Mバイトと、2割程度JPEGよりも大きくなるものの、各モードに関してはほぼ同じ傾向を示す。

 この高速化に付随して自動解像度モードが新たに追加されている。解像度を問わず高速読み取りが可能になったからこそ実現した機能だが、解像度を決定するアルゴリズムは単純で、A6原稿長(148ミリ)より短い場合はスーパーファインモード、それより長い場合はファインモードが選択される。そのため、例えば往復はがきを縦向き(横長)にセットした場合はスーパーファインモード、横向き(縦長)にセットした場合はファインモードで読み取られることになる。

 なお、エクセレントモードでも0.6枚/分から5枚/分に向上した。分かりやすく書き直すと1枚あたりの読み込み時間が1分40秒から12秒に短縮されたということだ。さすがにノーマル〜スーパーファインと同様とはいかなかったが、解像度別の速度向上率として見ると8倍以上という驚異的な速度改善となっている。

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