本屋探訪記:GOOD BYE! BOOK246

BOOKSHOP LOVER=本屋好きがお届けする詳細な本屋レポ。本屋が好きならここに行け! 今回は南青山にあった旅の本専門の本屋「BOOK246」を紹介。

» 2015年01月11日 10時00分 公開
[wakkyhr,eBook USER]

 旅は好きですか?

 僕は旅をしない。漠然とした憧れはあるけれど、不安とか面倒とかお金がないとかいろいろな理由をつけて行動に移したことはない。でも、いつかはしてみたい。異国の地に立って違う言葉を話す人や観たことのない景色を観てみたい。そう思うならすぐにでも行動すれば良いものの、結局は想いを馳せるだけの僕は、ただ憧れるだけのワナビーに過ぎないのかもしれないが。

 そんな僕が旅気分に浸れるのが読書。時間も場所も気にせず、いつだって好きな場所に行ける読書は最高の娯楽であり、中でも旅の本は異国情緒を味わわせてくれる。疲れたとき、ほっと一息つきたいときに僕は旅の本を読む。気分は別世界。本を閉じて現実に戻ってきたら明日からも頑張ろうという気持ちになれるのだ。

まさかの失態

 旅の本を専門に扱う「BOOK246」という本屋が南青山にある。知らない方のために公式サイトから引用する形で紹介しておこう。

BOOK246は「旅」をキーワードに書籍・雑貨を集めた「旅の本屋」です。ガイドブックから文芸書や写真集、様々なタイプの個性豊かな地図、オリジナルラゲッジタグからアンティークグッズまで、旅にまつわる多様なアイテムを販売しています。実際に役立つだけでなく、店内に一歩足を踏み入れるだけで旅の気分を味わえる、どこか旅に出たくなる、そんな本屋です。(BOOK246 Webサイトより)

 ここが閉店すると聞いた。ああ、なんたる失態。そうなる前に行けていなかった自分が悔しい。穴があったら入りたい気持ちを押し殺して急いで駆けつける。

 ダークブラウンの本棚が印象的な店内には、写真家から贈られたという異国情緒あふれるさまざまな場所の写真があって気分を高揚させてくれた。写真を寄贈される本屋。素敵である。このときはBOOK246への愛があふれた展示が壁に貼られていた。

 ビニール製のカーテン(屋台によくあるようなアレだ)で仕切られた先にはカフェコーナーも。旅の本を買い込んでそのままカフェで読むだなんて最高の贅沢ではないか。


専門書店の素晴らしさ

 専門書店はひとつの切り口でさまざまな本を引き寄せる。自分では思いもつかない本があることもある。これはかなり楽しい。一見、旅には関係なさそうで大型書店だったら手に取りもしないであろう本でも旅の本専門店にあるからこそ手に取ってみたくなるものだ。

 あえてひとつのジャンルに特化することは自ら可能性を狭めているのではないかと思ったこともあるが、実はそうではなく、「〜の本専門店」に置いてあるからこその出会いを演出していたのではないか。何でもある大型書店や、通い詰めないと分からない個性を持つセレクトショップもいいものだ。ただ、「〜の本専門店」と銘打ったカジュアルなジャンルセレクト型本屋がもっとあっても良いのでは、と思う。

GOODBYE BOOK246

 とにもかくにも2014年4月15日でBOOK246は大勢のお客さんの名残惜しさを背に閉店してしまった。

 ラストの贈本市には多くのお客さんが来ていたようだし、もしかしたらBOOK246に影響を受けた本屋が今後どこかに生まれるかもしれない。僕はその本屋にぜひ行ってみたいと思う。もちろん今度は閉店間際ではないときに。

GOODBYE BOOK246

著者プロフィール:wakkyhr

本屋開業を目指す本屋好きサラリーマン。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。同名のネット古本屋も営み、「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。理想の本屋さんを開くべく本の世界で縦横無尽に活動中。好きな作家はクラフト・エヴィング商会。一番好きな本屋は秘密。

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