妊娠・出産漫画7選! 泣けて笑えてタメになる!

» 2015年09月25日 06時00分 公開
[ぶくまる]
ぶくまる
妊娠・出産漫画7選

 妊娠・出産というのは人生の一大事。もちろん喜びも大きいですが、一方で迷う方、不安な方もいらっしゃると思います。また、少子化が進む昨今、子どもが欲しくても、心身的・経済的事情から、なかなか決心がつかないという方も多いのではないでしょうか?

 今回は、社会派ドラマから爆笑コミックエッセイまで、妊娠・出産をテーマにした漫画をご紹介します。これから出産を控えている妊婦さんや、その旦那さんはもちろん、予定はないけど……という方にも読んでいただきたい、笑えて泣けて安心できて、そしてタメにもなる7作品です。

産科医が直面するさまざまな妊娠・出産の形『コウノドリ』

コウノドリ 1巻

コウノドリ』 鈴ノ木ユウ/講談社

 最初にご紹介するのは、2015年10月に綾野剛さん主演でドラマ化される『コウノドリ』。主人公は、児童養護施設で育った産科医・鴻鳥(こうのとり)サクラ。正体不明のジャズピアニスト「ベイビー」としての顔も持っています。サクラが働く産婦人科に来るのは、幸せな妊婦ばかりではありません。貧困からの未受診妊婦、超未熟児での出産、そして未成年の妊娠と中絶問題……。あらゆるパターンの妊娠と出産が、フィクションでありながらリアルに描かれています。

 まず、第1話の冒頭で描かれていますが、「妊娠・出産は治すべき病気ではないため、通常の出産には保険が適用されない」ということを認識している方は、実はそう多くはないのではないでしょうか? 多くの人が「無事に生まれて当たり前」だと思っているかもしれませんが、実際の出産は千差万別。さまざまな出産の問題を、優しく、ときには厳しく一緒に考えてくれる、サクラのような産科医がいてくれたら、妊婦さんたちもきっと安心できるはずです。

 第7巻では、NICU(新生児集中治療室)が舞台となっています。日本ではいま、33人に1人の新生児がNICUに入院するという現状があるそうです。一生懸命生きようとする命、生かそうとする医師、そしてわが子にこんなつらい思いをさせてしまったと、自分を責める親……。

 ときには助けられない命があり、望まない最期を迎えてしまうその瞬間は、胸が締めつけられます。最善を尽くし、最後まで新生児の命の力を信じるからこそ、助けられなかったことに疲弊し、病院を去っていく医師もいます。医学の進んだ日本であっても、決して万全ではない医療体制。病院という現場中心で描かれているだけに、医師たちの苦悩する姿から、現代日本の医療問題も浮き彫りとなり、考えさせられます。

 本作は、難しい妊娠・出産のケースも取り上げているので、全てが明るい結末ではありませんが、それでも読後感は良く、得るものが大きいです。きっとそれは、この作品が本当に伝えたいことを、きれい事でごまかすことなく、リスクも含めて真摯(しんし)に描いているからでしょう。

 ヒューマンドラマとしても、医療ドラマとしても読みごたえのある『コウノドリ』は、これから産む方にも、すでに産んだ方にも読んでほしい、いま一番の注目作です。

『コウノドリ』を立ち読みする

ほんわかタッチでくわしく描いた実録ニンプライフ!『ニンプ道』

ニンプ道

ニンプ道』 たかはしみき/主婦と生活社

 「こげぱん」の作者で、結婚エッセイや育児エッセイも人気のたかはしみき先生による、実録妊婦コミックエッセイです。

 妊娠を意識し始めて(しかも夫の「2人でいいや」発言で、どうなる妊娠!)、実際に妊娠して出産するまでが、ほんわかしたタッチで描かれています。夫の転職話が持ち上がった時に、絶妙なタイミングでやってきた「主さま(胎児)」。産婦人科に行く前に始まったつわり、不安な中、豆粒のような主さまと初めてのご対面! 何とか妊娠初期を乗り切ったと思ったら、母体に甲状腺ホルモンの異常が見つかり、まさかの主さまピンチ! 安定期になれば安定するなんて、うそだった? そして、悩まされる便秘、母親教室について、戌の日の安産祈願のお参りなど、妊娠・出産時の体調やイベントが、軽いギャグを織り交ぜながら紹介されています。

 検診の度に人間らしくなる主さまが妙にかわいく、読者も家族の出産を待つような気持ちになります。ニンプライフ情報も豊富で、時期によってのおすすめの「ニンプ着」や、入院時に必要なアイテムなど、妊娠している女性にとっては具体的で参考になる情報が満載! 「妊娠○カ月になったらこれを準備しなきゃ」と、妊娠期間を先取りしてシミュレーションできます。

 また、妊娠初期から出産後までの、妊婦さんの心の移り変わりも細かく描かれているため、本作は男性にもおすすめ。これを読めば、妊娠中の奥さんの気持ちが分かるようになるかも。

 陣痛〜分娩〜出産の章は、他の作品と比べても非常に詳細に描かれているので、出産を疑似体験できます。豊富な情報たっぷりのたかはし先生のエピソードの数々は、これから妊娠・出産を考えている女性だけでなく、「ニンプあるある」として、既にお母さんになった方にもおすすめです。

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ある日双子を妊娠したら? 『双子の親になりました』

双子の親になりました

双子の親になりました』 三豊ちぇり/実業之日本社

 不妊治療の末、授かったのは双子! 双子の妊娠と出産って、1人とどう違うの? 双子を育てるって大変? などなど、双子の妊娠・出産と子育てについて描かれたコミックエッセイで、出産前後から1歳までの双子ライフが紹介されています。

 かわいいイラストで、双子ならではの妊娠・出産・育児の苦労や楽しさが描かれているところがポイント。自分は双子を育てる器じゃない! と落ち込んでしまったり、顔を見合わせて笑う双子に「双子を生んでよかった!」と思ったり。ベビーカーで双子を連れていると、珍しさもあっていろんな人に声をかけられるなど、さくらんぼママ(双子のお母さんのこと)ならうなずける話題も満載です。

 本作は、三豊ちぇり先生自身の経験と120人のさくらんぼママへのアンケートを基に構成されていて、そのアンケート結果を見ることもできます。また、双子妊娠に関する難しい専門用語も、イラストと文章で解説されているので、理解しやすく勉強になります。

 そして、三豊ちぇり先生の旦那さんによる、男性目線のショートエッセイも見どころ。1カ月の育休を取った話など、これからさくらんぼパパになる男性には特におすすめです。実際に双子を妊娠していて知識を得たい方はもちろん、双子への憧れを抱いている人も楽しめる作品となっています。

『双子の親になりました』を立ち読みする

読者の体験談を漫画に! 笑える出産が盛りだくさん『松本ぷりっつの子育てバッチコイ!ぶっとび出産体験編』

松本ぷりっつの子育てバッチコイ!ぶっとび出産体験編

松本ぷりっつの子育てバッチコイ!ぶっとび出産体験編』 松本ぷりっつ/竹書房

 読者から投稿された子育て・出産エピソードを、『うちの3姉妹』で人気の松本ぷりっつ先生が漫画化している『松本ぷりっつの子育てバッチコイ!』シリーズ。その中から今回は、第2巻の「ぶっとび出産体験編」をご紹介します。

 笑える出産から感動の出産、そして仰天の出産まで実にさまざま! 出産ってこんなにいろいろあるんだ……と、出産経験のある方もびっくりすることが多いかもしれません。出産現場にトラブルはつきもの、妊婦さんだけじゃなく、家族や医療関係の人々のぶっとび具合にも抱腹絶倒です。

 決してきれい事だけじゃ語れない出産。出産経験のある人に聞いても「肝心なことは話してくれなかった」「出産して初めて出産が何たるか知った」という方も多いのではないでしょうか? 出産のときにウ○コも一緒に出産するとか、緊急出産の際に真っ裸で分娩室に搬送されるとか、この作品を読めば、知らなかった事実も赤裸々に。これから出産する若い方や男性には、ちょっと刺激が強いかもしれません。でも、それこそが出産! 笑いながら、出産への心構えもできますよ。

『松本ぷりっつの子育てバッチコイ!ぶっとび出産体験編』を立ち読みする

死産を乗り越えて高齢出産した作者の実感が満載『妊娠17ヵ月! 40代で母になる!』

妊娠17ヵ月! 40代で母になる!

妊娠17ヵ月! 40代で母になる!』 坂井恵理/講談社

 5年間一緒に暮らしているパートナーの子を39歳で妊娠した漫画家・坂井恵理先生。それまで子どもを欲しいと思ったこともなかったのに、どうする? 親になるってどーやって? 思いもよらなかった妊娠から死産、そして再妊娠と出産までの17カ月に起こったことや考えたことが描かれています。

 全体的にはコミカルなタッチで非常に読みやすい本作。出産の高齢化が進む昨今、高齢出産に不安を抱える妊婦さんも多いと思いますが、本作には高齢で妊娠した者にしか分からない悩みや「あるある」がたっぷり描かれています。『女医が教える 本当に気持ちのいいセックス』の著者である、産科医・宋美玄さんの解説も参考になります。

 第一子の死産のことなど、リアルな経験談もありのままに描かれているため、当然つらい部分もありますが、作品の冒頭で坂井先生が書いている通り、「ハッピーな妊婦雑誌では取り上げられないこと」を赤裸々に描くことで、初めて伝えられることもあるのだと感じます。

 特に、高齢出産の予定がある妊婦さんの背中を、そっと押してくれる1作です。

『妊娠17ヵ月! 40代で母になる!』を立ち読みする

見習い看護師が見つめる弱き妊婦の姿『透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記』

透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記 1巻

透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記』 沖田×華/講談社

 本作は、作者自身の産婦人科での看護師見習い体験を漫画化しています。主人公の×華(ばっか)は看護学科の高校3年生で、母親の勧めで産婦人科院の見習い看護師として働くことに。妊娠と中絶、生まれることが許されなかった、エタノール入りの小さいケースに入れられる「透明な子」の存在……。産婦人科で知るさまざまな人生が、過剰な演出なく、淡々と描かれています。

 中絶や性虐待など、明るく幸せな出産よりも、普段表に出てこない、産婦人科が直面する「影」のエピソードが多い本作。沖田×華先生が経験した1997年当時の状況を元に描かれているため、現在の医療制度などとは異なるところもありますが、各人が抱える苦悩や悲しみは、いつの時代も変わりません。

 作者の沖田×華先生は、アスペルガー症候群などの発達障害と診断され、3年で看護師を辞めた後、風俗嬢、アダルトビデオへの出演、整形手術などを経て漫画家デビューしています。そのためか、社会的弱者に対する視線がとても優しいです。

この小さな手帳は 母と子だけの愛で満たされている
お互いが作り出す生きる糧
どんな素晴らしい絵本や教科書もかなわない

 母子健康手帳は愛そのものという、沖田先生だからこその一節です。泣けるという評価も多く、今後も続きが期待されている作品です。

 本作で沖田×華先生自身のことを知りたくなった方は、『毎日やらかしてます。アスペルガーで、漫画家で』をどうぞ。

『透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記』を立ち読みする

男性も妊娠する世界で気づかされる“ニンプ”に優しい社会とは? 『ヒヤマケンタロウの妊娠』

ヒヤマケンタロウの妊娠

ヒヤマケンタロウの妊娠』 坂井恵理/講談社

 本作は、男性も妊娠するようになって10年経ったという未来のお話。エリートサラリーマンである桧山健太郎は、独身なのに妊娠してしまいます。健太郎は「男性が妊娠すること」への世間の偏見に気がつき、意地もあって出産を決意します。“妊夫”生活の中で初めて知る、妊娠している者に対する世間の視線や態度。そして健太郎は、社会を変える小さなアクションを起こすことに……。

 電車内で、会社で、街の中で、妊夫・妊婦に心ない一言を発する人もいれば、そっと気遣ってくれる人もいます。自分が妊娠するまでは意識すらしなかった周囲のささいな態度で、メンタルが大きく左右されるということを、健太郎は身をもって知るのです。

 本作の作者は、先にご紹介した『妊娠17ヵ月! 40代で母になる!』の坂井恵理先生。男性の妊娠という奇想天外な設定ですが、その内容は妊娠・出産の大変さをリアルに描いており、男性が疑似体験するにはうってつけの1冊です。妊娠中の女性の方は、旦那さんにもおすすめしてみてはいかがでしょう?

『ヒヤマケンタロウの妊娠』を立ち読みする

まとめ

 いかがでしたか? ときに爆笑、ときにシリアスと、作品によってさまざまな出産シーンが描かれていますが、共通しているのは、どの作品も未来に広がる何かを感じさせてくれるということです。

 これからの方にとっては疑似体験の1つとして、出産した方にとっては自身の経験と重ね合わせて、読後、心に残るものは多いのではないでしょうか。

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