秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。同人誌の用語を解説していく「ミソノ流ワンポイント用語解説」も必見。
一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメやマンガのパロディや、コスプレの写真集などさまざまなジャンルがありますが、こちらの連載では、私設図書館「シャッツキステ」の司書メイド・ミソノが、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心にご紹介します。作家の「好き」が形になった同人誌、その魅力を体感してください。
タイトル:『おおむねプロレスの味方です』シリーズ
『おおむねプロレスの味方です 激震サンダーウォーズ』A5 24ページ 表紙カラー・本文モノクロ
『おおむねプロレスの味方です 旗上オープニングシリーズ』A5 30ページ 表紙カラー・本文モノクロ
『おおむねプロレスの味方です 倉庫維新』A5 28ページ 表紙カラー・本文モノクロ
著者:ジヨン・テンダ
サークル名:にこらてすら
Webサイト:http://dokuhu.blog19.fc2.com/
同人誌入手先:中野ブロードウェイ3F「タコシェ」店頭(http://tacoche.com/)
Twitter:@john_tenda
大きな本屋さんで、プロレスコーナー担当の方が「最近はプロレスが女性にも人気ですよ」とおっしゃっているのを聞いたとき、何だか心がざわめきました。以来、「プロレス……気になるわ……」と深層心理で思い続けていたのでしょうか。ふらふらと引き寄せられた同人誌は、プロレス好きOLさんのマンガでした。
妹から「昔から一つのことにハマると異常なまでにのめり込む性格」と評されるOLの鶴田友美。彼女はいま、全力でプロレスにはまっていた!
物語の出だしのセリフを拾うと「田中のスーパーフラーイ!」「石井のジャーマーン!」「スライディングD!」鶴田さんは号泣しながら「田中―!! 石井もよくやったよぉー!」とテレビ画面の前で打ち震えます。……はい、とにかく鶴田さんがものすごくプロレスを愛しているのは分かりますが、その他はよく分かりません! 分からないのに、そのテンポのよさと、「おし高まってきた!! スパーしよう」と突然言い出す鶴田さんの熱さにぐいぐいと引き込まれていきます。
1作目では部署にやってきた戦力増強の大巨人・安藤さんをときに厳しく、ときに優しく、スパーもしながら交流を深め、2作目ではプロレス好きの後輩くんと何となくいい雰囲気になり、3作目では職場革命を行ったという力丸さんがいる倉庫勤務となり、アウェイでどう戦う……? と、会社を舞台に、鶴田さんの華麗な活躍が光ります! 鶴田さんはほとんどいつもプロレスのことを考えていますが、それが困難の解決につながったり、全然つながらなかったりします!
何かあると、すぐ「満員電車もサンマルチノのベアバッグに比べたら……マシ」とプロレスに例えてしまう鶴田さん。聖地後楽園ホールに立ち、「うひょー」とゆるんだ頬で喜びをあらわにする鶴田さん。……うれしいときも悲しいときも、病めるときも健やかなときも、ところかまわず好きなもののことを考えては心の平穏を保ち、それに関連したものと出会うとテンションがうなぎ登りになってしまう……プロレスのことは分かりませんが、その現象は私にも心当たりがありすぎます。いつの間にか情熱あふれる鶴田さんを応援したくなってきたではないですか。
でも3冊読んでも、プロレスのことはよく分かりませんでした。分かったのは、日常はこんなにもプロレスがあふれ、それに浸っている鶴田さんがとにもかくにもプロレスが大好きで楽しそうだということ。ざくっとした絵柄と、初心者おいてけ堀りで容赦なく挟み込まれたプロレスネタがぴたっとはまって、味わいのあるOL鶴田さんの世界を作り出しています。この、読んでいるとじわじわと効いてくる感じ……ああ、これを私もプロレスで例えてみたいなぁ!
『委託書店』
同人誌を入手する場所と言えば、同人誌即売会! ですが、近年、同人誌を取り扱う書店さんも飛躍的に増えてきました。大きな書店さんの一画にコーナーがあったり、専門の書店さんや、雑貨屋さんで購入できたりも。そしてその情報がインターネットを通じて知ることができるのも、助かりますよねー。意外な場所にも同人誌との出会いは広がっているのかもしれません。
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