エンタープライズ:ニュース 2003/04/24 08:35:00 更新


企業にアジリティをもたらすWindows Server 2003

Windows Server 2003のローンチイベントを翌日に控えた4月23日、マイクロソフトはサンフランシスコ市内のホテルで、インターナショナルプレス向けのブリーフィングを開催した。ホスト役を務めたWindows Server担当グループプロダクトマネジャーのボブ・オブライエン氏は、エンタープライズコンピューティングの本丸、データセンターへの進撃開始を宣言する。

 赤、青、緑、そして黄色の鮮やかなWindowsの旗が明日、カリフォルニア州サンフランシスコの空にはためこうとしている。この街は、シリコンバレーをサンノゼと共に形成している。サン・マイクロシステムズ、オラクル、BEAシステムズらの本社があり、IBMもWebSphereやDB2の拠点を構える。サンフランシスコ湾の西にはBSD UNIXの本山であるカリフォルニア州立大学バークレー校もあり、いわば、Java/オープン陣営のテリトリー。マイクロソフトが敵地に乗り込んだ格好だ。

 Windows Server 2003のローンチイベントを翌日に控えた4月23日、マイクロソフトはサンフランシスコ市内のホテルで、インターナショナルプレス向けのブリーフィングを開催した。ホスト役を務めたWindows Server担当のグループプロダクトマネジャー、ボブ・オブライエン氏は、「5年前にWindows(NT)では不可能と思われたことも、今や(Windows Server 2003によって)確かなものになった」と話し、エンタープライズコンピューティングの本丸、データセンターへの進撃開始を宣言する。

obrien01.jpg

「Windows Server 2003は信頼に足るOS」とオブライエン氏


 午前のゼネラルセッションを担当したマイクロソフトのバリー・ゴフ氏は、「この数年、企業はITコストの削減に関心を寄せており、われわれもそれを認識しているが、同時に企業はITによって戦略的な優位も築きたいと考えている。彼らのゴールはアジリティだ」と話し、同社の戦略がビジネスにアジリティをもたらすソフトウェアを開発・提供することだとした。彼はマイクロソフトでWindows Serverのプロダクトマーケティンググループでグループマネジャーを務めている。

goffe02.jpg

「Do more with less」を強調したゴフ氏


 しかし、ゴールへの道のりは遠い。企業が市場環境の変化を受けてアジリティを求めても、ITが素早くこたえることができないからだ。ゴフ氏は、マッキンゼーの調査結果を引用し、そうした障害のひとつとしてデータセンターの複雑さを指摘した。マッキンゼーの調査を待たずとも、多くの調査結果が示すとおり、企業のIT支出の約7割は既存システムのメンテナンスに費やされている。IT支出の大半を占めるスタッフたちは、さまざまなプラットフォームのメンテナンスに明け暮れている。

「新しいアプリケーションを導入しようとすれば、既存システムとのインテグレーションやメンテナンスのコストがさらに負担となる。ここにソフトウェア改善の余地とチャンスがある」とゴフ氏。

 彼は、マイクロソフトのプラットフォームが具体的な目標として掲げる4つの柱を紹介した。「コネクテッド」「生産性」「経済性」、そして「信頼性」だ。

 コネクテッドとは、包括的で統合されたインフラを提供し、さらに異なるシステムとも相互に運用できることを目指すものだ。Exchange Serverが、Windows Serverに組み込まれたActive Directoryと緊密に統合されているのが前者の例となるだろう。ゴフ氏は、「マイクロソフトだけでも20を超えるサーバ製品があるが、インフラの構築はわれわれに任せ、企業はビジネスロジックにフォーカスできる」と話す。

 また、「固有の技術」とのレッテルが貼られることの多いマイクロソフトだが、ゴフ氏はWebサービスに対する同社の取り組みを強調する。

 IBMと共にその支配力行使が懸念されている「WS-I」だが、「顧客を含む300の企業が参加しており、先ごろもサンがボードメンバーに選ばれた。IBM WebSphereやBEA WebLogic ServerのシステムとWebサービスを介して連携できるようになる」とゴフ氏。

 彼が「どこでもWebサービス」と表現するように、マイクロソフトはサーバ製品だけでなく、Officeのようなクライアント製品にも共通のインタフェースとしてWebサービスを組み込んでおり、ガートナーのマジッククアドラントでも、IBMと共にWebサービスのリーダーと位置付けられている。

拡大するWindowsのエコシステム

 開発の生産性については、既にJ2EE陣営が「単純な比較は無意味」と一蹴している.NET Pet Shop 2.0 vs. J2EE Pet Store 2.0をゴフ氏は改めて取り上げている。

「.NETであればコーディングは1/6で済む。われわれがいかに開発者の生産性にフォーカスしているかを示す良い例だ」とゴフ氏。

 マイクロソフトの強固なパートナーコミュニティーは、どのベンダーもうらやましいに違いない。パートナーの数は77万5000と桁違いに多い。ISVだけに限っても8万5000社に上る。そこでは、市場が形成されると同時に、顧客から見れば、競争による経済原則が働き、3番目の柱である「経済性」にもつながる。

 2月のIntel Developer Forumでは、Itanium 2/1GHzを32基搭載したNECの「Express5800/1000シリーズ」がTPC-Cベンチで強敵を打ち破り、2位にランクされたことが発表された。もちろん、Windows Server 2003 Detacenter EditoinとSQL Server 2000 Enterprise Editionの組み合わせで、どちらも64ビット版だ。

 43万3107tpmという記録もさることながら、ゴフ氏がスライドを見せながら強調したのは、1tpm当たりのコストだ。ベンチマークで首位に立つ富士通のPrimePowerサーバが28.58ドルであるのに対して、Express5800では1/2以下となる12.98ドルを実現している。

 また、インターネットサーバやファイル/プリントサーバでは、Linuxの脅威に直面しているものの、5年間の総所有コスト(TCO)を見れば、わずかにWebによるシンプルなコンテント配信がLinuxに劣るだけに過ぎないとゴフ氏は反論する。マイクロソフトは、この分野でも巻き返すべく、WebサービングとホスティングにフォーカスしたWindows Server 2003 Web Editionを投入する。

関連記事
▼ボーランドが.NETとJavaを橋渡しするC# Builderを正式発表
▼大規模な宣伝攻勢でWindows Server 2003を売り込むマイクロソフト
▼ウインテル戦略に賭けるユニシス
▼企業アプリケーションにとって最適なプラットフォームとは?
▼「Visual Studio .NET 2003日本語版」がRTM
▼サーバソフトウェア製品から.NETラベルを外すマイクロソフト
▼今後の企業インフラに求められるもの 〜マイクロソフトからの回答は?〜

[浅井英二,ITmedia]