エンタープライズ:ニュース 2003/09/11 04:02:00 更新


「Enterprise Gridという旅」は始まったばかりか

OracleWorld 2003の3日目、「Linux and The Grid」をテーマにパネルセッションが行われた。10gが掲げるEnterprise GridとLinuxについて、技術的な側面から議論が交わされた。

 サンフランシスコで開催されているOracleWorld 2003の3日目、「Linux and The Grid」をテーマにパネルセッションが行われた。OracleのLinux担当バイスプレジデントやHewlett-Packard(HP)のパートナー、Oracle 10gのベータユーザーなど5人が登壇し、10gが掲げるEnterprise Gridと、その中心的なプラットフォームとしてOracleが選択しているLinuxとの関係について、技術的な側面から議論が交わされた。

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右から、CERNのシアーズ氏、HPのアストフォーク氏、Oracleのコックアーツ氏とダーゴ氏、IDCのオロフソン氏

 IDCのアナリスト、キャロル・オロフソン氏は、「わわれわのようにコンピューティングの世界に長くいる者にとって、グリッドは少し皮肉な感じがする」と切り出す。

 同氏によると、データベース・グリッドは、複数のサーバを仮想化して1つの大きなマシンとして稼動させる意味で、「バーチャルなメインフレーム」であり、過去にメインフレームからクライアント・サーバへと分散化の道を歩んだにも関わらず、「処理の一極集中化」への道へ逆戻りしているという。

 しかし、周りの状況はかつてのメインフレーム時代とは大きく変わっている。1つには、Intelプロセッサを中心にハードウェアコストが劇的に下がっていること。そして、OSについても、「OSをどう書くかはあまり問題ではなくなってきた。大学生でも書けるくらいなのだから」と同氏は漏らす。

 つまり、ハードウェアやソフトウェアのテクノロジーの進化により、プロセッサ自体、あるいはOS自体の個性はそれほど重要ではなくなろうとしており、競合性の世界が変わったという。また、従来データを幾つかのデータベースやサーバに分け、さまざまなアプリケーションが別サーバで稼動するような環境を構築していたとしても、技術の進化を背景に、経済性を追求するためにそれを統合化しやすくなった。そこで鍵となる技術が、Oracle 10gが掲げるEnterprise Gridというわけだ。

商用グリッドへの道

 世界各国からやってきているエンジニアやプレス、またOracleとライバル関係にある企業が共通して持っているテーマが、「グリッドコンピューティングを商用で運用できるのか」だ。

 HPでパートナーを務めるグレッグ・アストフォーク氏は、「グリッドはまだ始まったばかりの旅」と表現する。コンピューティングリソースの共有、利用率の向上、柔軟性、仮想化をキーワードとする同氏は、「HPはグリッドは疎結合のサービスモデルとして、これまでの科学技術分野に留まらず、エンタープライズ、娯楽分野でも展開したい」と話す。

 OracleのLinux担当バイスプレジデントのデイブ・ダーゴ氏は、「複数のデータベースを統合する作業は標準化できる」と話す。安価なサーバを何百台も連携させて巨大なシステムを構築するEnterprise Gridにおいて、各サーバごとの環境をいかに構成するかもテーマになるが、このプロセスも標準化できるとしている。

 逆に言えば、サーバごとの環境設定や一括管理をするためのツールを標準化し、コモディティ化していけるかどうかが、Enterprise Gridの成功を占う1つの要素になることが分かる。

 さらに、OracleのLinuxエンジニアリング担当ディレクターのウィム・コッカーツ氏は、LinuxベースのEnterprise Gridを成功させるためには、メモリチューニング、拡張性、非同期処理、汎用的I/O、キューなどの処理をうまくこなしていくことが必要と述べている。

 Q&Aセッションでは、グリッドが始まったばかりの旅なのかという話題で盛り上がった。

 ある記者の「始まったばかりの旅ということはお金をたくさん使わなくてはいけないということか」という質問に、10gのベータユーザーであるCERNのジャミー・シアーズ氏は、「CERNでは来年の秋の本番稼動の準備ができている」とし、技術的な準備は整っていると話す。

 また、IDCのオロフソン氏は、「グリッドというここで言葉を一度忘れてもらいたい。基本的にはネットワーク技術がベースになっており、全く新しい世界というわけではない」と加えている。

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[怒賀新也,ITmedia]