エンタープライズ:ニュース 2003/11/04 22:31:00 更新


ライフサイクル管理でソリューション志向を鮮明に打ち出すBorland

BorCon 2003が午前のゼネラルセッションを皮切りに本格的に開幕した。今回、Borlandが最も力を入れてアピールしたかったのが「Borland ALM」のソリューション。チーム開発の生産性を求める企業顧客らの声にこたえるものだ。

 米国時間の11月3日、カリフォルニア州サンノゼで行われているBorlandの年次デベロッパーカンファレンス「BorCon 2003」は、午前のゼネラルセッションを皮切りに本格的に開幕した。

 BorCon 2003でBorlandが最も力を入れてアピールしたかったのが「Borland ALM」(Application Lifecycle Management)のソリューション。昨年のBorCon以降、同社の製品ラインはStarBaseやTogetherSoftなどの買収によって様変わりし、ソリューション志向が強まっている。

 「新製品発表が少ない? ゼネラルセッションではデベロッパー、アーキテクト、ビジネスアナリストらがチームとして連携できるBorland ALMソリューションをスニークプレビューした。これこそがアナウンスメント。新製品としてはDelphi 8もある」と話すのは、Borlandで18年のキャリアを誇るデビッド・インターシモン氏。デベロッパーらを「私のファミリー」と呼ぶ、デベロッパーリレーション担当副社長で、長年BorConのホストを務めている。

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デベロッパーらからは「デビッド・アイ」と呼ばれるBorland18年の「生き字引」


 そのゼネラルセッションは、「どのようにして優れたソフトウェアを迅速に開発するか?」をテーマに行われた。セッションのホストとして登場したブレーク・ストーンCTOは、「Borlandでさまざまな革新が起こっているが、最もエキサイティングなのがALM」と話す。

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「自分たちが使いたいツールをつくる、それが最大の差別化」と話すストーンCTO


 彼は企業顧客のような大きな組織が抱えるソフトウェア開発の問題点として、新しい技術の登場が引き起こすソフトウェアの複雑さやチームとして効率良く開発していく難しさを挙げ、その解決には個々の生産性はもちろんだが、「再利用」や「チーム内でのコミュニケーション」がカギになるとした。

 Borlandも、IBM Rationalらと同様、かつてのウォーターフォール型開発ではなく、反復型のスパイラルモデルを提唱する。つまり、要件定義が完了すると分析・設計に移り、それが完了すると開発に入るといったやり方ではない。こうしたウォーターフォール型では、得てしてソフトウェアが出来上がってみると、ユーザーが意図したものとのズレが大きくなってしまう。正確な要件定義が難しかったり、時間とともに絶えず要件自体が変化してしまうからだ。

 これに対して反復型は、ツールを統合し、コミュニケーションを円滑にすることで、開発チームのどこで何が起こっているかを即座に把握しながら、要件定義、分析・設計、開発、テスト、配備という一連のサイクルを繰り返すもの。ストーン氏は、「一度開発したら終わり、次は新たなソフトウェアで置き換える、というのではなく、メンテナンスを通じてソフトウェアの品質を高めていくことができる」と話す。

 ALMソリューションのためにツール間の連携を担当するトーマス・マーフィー上級プログラムディレクターは、開発ツールの変遷を示し、Borlandが常にこの分野をリードしてきたことを強調した。

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「開発ツールの水準をALMが再び引き上げる」とマーフィー氏


 1980年代は使い勝手の良いエディタとコンパクトで速いコードを生成するコンパイラの時代だったが、1990年代になるとIDE(Integrated Development Environment)が登場する。もちろんその先陣はBorlandだったが、ここでも個人の生産性向上という域を出なかった。

 しかし、企業のような大きな組織では、チームとしての生産性が求められている。開発資産を再利用しやすいWebサービスが本格的に普及しようとしていることも、チームとしての生産性に目を向けさせているといっていい。マーフィー氏はソフトウェア開発のライフサイクルすべてをカバーするツールを「ILDE」(Integrated "Lifecycle" Development Environment)と呼ぶ。IDEが広く普及した今、BorlandはILDEによって再び開発ツールの水準を引き上げようとしている。

 ステージでは、例えば、デベロッパーがソースコードを変更すると、アーキテクトはUML(統一モデリング言語)図がリアルタイムにシンクロすることでその変更を知ることができる「Live Source」機能をはじめ、さまざまなツール間連携がデモされた。

 ストーンCTOは、「Borland ALMは、ツール間の境界がなく、1つの製品として統合されている。最初はEnterprise Studio 7 for Javaからだが、.NETでもALMのビジョンは不可欠だ。順次、C#やDelphiといったほかの言語でもBorland ALMを実現していく」と話す。

 この日、.NET Framework用のBorland ALMソリューションが、Microsoft Technology Centerで提供されることが明らかにされた。同センターは、オースチン、シカゴ、ボストン、およびシリコンバレーに開設されている。Microsoftの顧客のほか、.NETに移行を図りたいBorlandの顧客もサービスを受けられるという。

 Borlandは今年1月、.NET Framework SDKを他社に先駆けてライセンスしている。

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[浅井英二,ITmedia]