エンタープライズ:ニュース 2003/12/18 04:12:00 更新


OracleWorld パネルディスカッション:Webサービス標準確立への道のり

 東京ビッグサイトで開幕した「OracleWorld 2003 Tokyo」の初日となった12月17日、「XML/Webサービスの標準化活動の意義と活動」をテーマにパネルディスカッションが行われた。標準化の進展待ちという側面ものぞかせているWebサービスについて、その当事者たちがそれぞれの立場から議論を戦わせた。米国のメディアにおいては、標準の策定における各団体同士が対立する場面なども取りざたされており、今後の展開に注目が集まる。

owws.jpg
右から日本オラクルの鈴木氏、DOPGの佐治氏、WS-Iの成田氏、OASISの岡部氏、W3Cの萩野氏、ZDNetエンタープライズの浅井編集長

 登壇したのは、World Wide Web Consortium (W3C) アジア担当技術統括副責任者の萩野達也氏、OASIS日本代表の岡部恵造氏、WS-I Japan SIG 世話役を務める成田 雅彦氏、DOPG Webサービス・コアテクノロジー分科会の主査の佐治信之氏、日本オラクルでコアテクノロジー本部アーキテクトグループ担当ディレクター、鈴木俊宏氏の5人。また、モデレータを当編集部、ZDNetエンタープライズの浅井英二編集長が務めた。

 OASISの岡部氏は、「IT業界のあらゆるベンダーのあらゆる製品でつながりあいたい」と話す。同氏はWebサービスの定義について話した際、「従来は人がアクセスしたWebに、アプリケーションがアクセスするようになること」と説明した。

 だが、モデレータからは、「標準を策定する際、同じ内容の標準案を複数の団体が提出することなどにより競合が発生し、団体同士の関係がスムーズではないことも事実ではないのか」との問いが投げかけられた。

 これに対して、OASISの岡部氏は、「メディアのヘッドラインとしては面白いかもしれないが、実際はそれほど競合していない」と対応したが、「ぶつかっているのはオーケストレーション、トランザクションなど」とも話している。競合しながら行き先を模索しているといった雰囲気もあるようだ。

 岡部氏は、「ベンダー同士が戦うより、エンドユーザーの意見をベースにしていくべき」とした。一方で、WS-Iの成田氏は「それは少し違う」と反論。WS-Iは、2002年2月にWebサービスの相互運用性を推進するために設立された組織。製品レベルで自ら標準を策定することはしない点で、W3CやOASISなどの典型的な標準化団体とは異なると言われる。

 「米国人はルールは守る国民なので、各標準化団体も標準としてコンセンサスが取れないことはやろうとしない。こじれたときはルールベースで解決すればいい」(成田氏)

知的所有権について

 次に、Webサービスに関して、開発した技術に関する知的所有権をいかに管理していくかに話が移った。

 これについて、「ロイヤルティフリー」の考え方を持つW3Cの代表、萩野氏は、「お金をとっていいという考えもあるが、コアの部分はフリーであるべき」と応じた。アプリケーションなど上の階層ではOKかもしれないが、下の部分はフリーであるべきとしている。

やはり英語の問題が・・・

 標準策定において、中心となるのは残念ながら米国であり、日本はそれが上から降ってくるのを待つしかないというイメージは捨て切れない。それも紛れもない事実という。

 岡部氏は、「オープンに標準化するとは言うものの、みんなで声を掛け合って同じ早さで歩むというものではない。だれかがイニシアティブを取るということだ」と話す。

 そうした状況において、OASISにアジアのボードメンバーがいないのは厳しい状況という。放置すれば、「標準が外国で決まってしまう」からだ。

 日本オラクルの鈴木氏は、標準について、グローバルスタンダードとローカルスタンダードの2つがあると指摘する。日本語パソコンのキーボードなどは、典型的なローカル標準だ。モデレータによれば、実際にはユニコードが出現しており、ローカルスタンダードを依然として採用している日本は、ひょっとしたら大きなチャンスを逃がしているかもしれないという。

 岡部氏は、「世界でも有数の英語の苦手国民である日本人にとって、実際には日本で標準化ができないと厳しい状況」と話す。

 一般的な話として、日本人のプレゼンテーションの質の高さに外国人は驚くことも多いという。だが、それは「通訳がつけば」という条件付きでの話。米国では当然、ネイティブ英語で議論が交わされるため、楽観できる状況にはない。

 数年前のインターネットバブルの時に、「インターネット時代では、英語ができなくてはスタートラインにも立てない」との意見を聞くこともあったが、Webサービス標準策定という現場ではそれが現実の話になっている。

関連記事
▼WS-I、Webサービスセキュリティ標準策定の作業部会を設置
▼Webサービス標準、競合未解消のままデモ実施
▼Webサービスのセキュリティ問題に取り組むWS-I
▼マイクロソフト、Webサービスを巡って標準化団体と袂を分かつ
▼特集:Webサービスの行方
▼OracleWorld 2003 Tokyo Report
▼基調講演:エリソンCEOの代役はウォール街から転身したフィリップス執行副社長
▼OracleWorld Tokyo開幕、グリッドのOracle 10gやユビキタスで沸き返る
▼「i」から「g」へ、ITの未来が一堂に会するOracleWorld Tokyo
▼グリッドの幕開け、Oracle 10gが国内デビュー
▼Oracle 10gが「グリッドの時代」を告げる
▼OracleWorld 2003 San Francisco Report

関連リンク
▼日本オラクル

[怒賀新也,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.