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» 2004年06月01日 16時03分 公開

RFIDを使ったサプライチェーンを考える

次世代のインターネットの活用方法として、製造元から出荷先に製品を移動させる際の追跡にRFIDを使うことを挙げ、そのために必要な各種技術について解説していく日本語訳:澤田侑尚)。

[Peter Varhol,FTPOnline]

FTP ONLINEもしあなたがウォールマートのトップサプライヤーの一人なら、この話はすでにご存じだろうが、ウォールマートは、その中の大手100社が2005年までにRFID(Radio Frequency Identification)による出荷トラッキングを利用することを宣言している。2006年には数千社が同様の局面に直面することになるであろう。

 これにより、RFIDはサプライチェーンにおけるメインストリームとなっていくだろう。サプライヤーは、ウォールマートに対してRFIDシステムを、他の顧客に対して別のシステムを維持するといった面倒なことは望んでいないからである。

 仮にウォールマートがRFIDの採用を推進していなかったとしても、遠からずRFIDが主流になるだろう。RFID製には、サプライチェーンを通してトラッキングを可能にするという、明らかな利点があるからである。

 ここで、普及に関する一番の障害となるのは、RFID発信機のコストだが、ウォールマートがサプライヤーたちにRFIDを使うよう要求することで、このコストは一気に下がりそうだ。また、RFIDをネットワーク上でサポートするアプリケーションの構築ニーズが高まるため、開発者にとっては新しく興味深いチャレンジへの場が開けるだろう。

RFIDで可能になること

 エンタープライズJavaアプリケーションを用いてすべきことは何か? それはすべてであるといえるが、いくつかのバックグラウンドが優先される。RFIDは商品のトラッキングに関して、既存のバーコードによるアプローチを代替するものとして見なすことができる。無線発信機を用いた電子タグは、積荷やパレット、理想的には個々の商品に貼り付けられる。このタグが、タグリーダーとして知られる無線信号レシーバーの受信範囲を通過する時に必ず、その場所を通過したという承認信号を送信する。

 そしていま、インターネット上のタグリーダーという興味深い領域が登場した。EPC(Electronic Product Code)の形式に沿って送られる承認信号は、非常にIPアドレスに似通っている。IPアドレスをベースにしたホスト名を調べたいとき、我々はDNS(Domain Name Service)を使用する。ONS(Object Name Service)と呼ばれるEPCを使った類似のネームサービスはDNSと同じ様式で機能し、インターネット上でアクセス可能な製品情報の検索メカニズムを提供する。

 これらが意味するのは、企業はRFIDとEPCネットワークを使うサプライチェーンを管理する、独自のアプリケーションを作ることができるということだ。それらのアプリケーションで何ができるのか、簡単なシナリオを以下に記す。

サプライチェーン上の製品をトラッキングしたい場合

 もし確実な識別とトレース能力が要件であれば、EPCはそのための信頼性と利便性を持った方式を提供する。一度EPCのネットワークが構築されれば、この目的のために行うべきことはほかに何もない。

出荷時の製品内容と同じであることを保証したい場合

 もし製品の真実性が重要であれば、製造から販売までを一貫するかたちで、サイズや重量、その他の必要なデータを記録したEPCにより、製品の識別を積極的に行える。

サプライチェーンのボトルネックをチェックしたい場合

 出荷物および製品が通過点を通る回数をチェックすることで、企業は流通網の過剰なステップを測定できる。サプライチェーンの効率の向上は、最小限の費用でジャストインタイムデリバリーに近づけることを意味する。

在庫状況をチェックしたい場合

 在庫量を可能な限り抑えたいのであれば、販売の比率とサプライチェーンの長さを知ることである。また、在庫の正確な状態を知ることで、在庫切れの状態を防ぐと同時に、コストをコントロールするための本質的な情報を提供する。

 これらの多くは、既存のテクノロジーで実現可能だが、コストとそれにかかる労力――サプライチェーンの流れに沿って何度もバーコードスキャンを要求される労働者、これらの情報を蓄えるデータベースに、スキャンされた情報をアップロードする――といったことを考えると、とても受け入れられるものではない。また、そうした場合、記録と保存のプロセスで人間の介在が必須となるため、ミスや相違も起こるだろう。

EPCネットワークでやりとりされる情報

 EPCネットワークがどのように機能するかについて解説していこう。まず、EPCネットワークでは多くのインフラを必要とする。これらのほとんどは、インターネットとそれに関連したテクノロジーの形ですでに存在している。基本はタグおよび、データと組合された無線発信機で、それは製品および梱包箱、パレット、出荷物全体に対して無造作に加えることが可能な電子回路の中に埋め込まれる。また、そのレシーバーとなるタグリーダーは、サプライチェーンに沿った戦略的な地点に配置される。

 このタグリーダーはインターネットに接続される。タグ付けされた製品がタグリーダーの受信範囲を通過する際、データはリーダーに送信され、インターネットを利用して、EPCレジストリへとデータを転送する。転送されるデータはEPCに埋め込まれた情報やそのほかの情報、つまり、タグとリーダーの双方からの情報が合わさった形のものとなる。

 リーダーは位置情報とタイムスタンプを持ったレジストリを提供する。この情報は、サプライチェーンのあらゆる場所でトレースが可能な、正確な測定方法を提供する。しかし、タグは製品のサイズと重量および、各種の指定期日、各種の輸出規制といったより多くの情報を保持できる。

 EPCの詳細を見てみよう。EPCは2つのフォーマットで表現できる。1つはビットレベルのフォーマットで、64ビットまたは96ビットを使用するが、その全体がタグにストアされ、タグリーダーに転送される。

2番目は標準フォームであり、こちらは開発者にとってより重要なものとなる。この形式はURI(Universal Resource Identifier)と同じように表現される。

urn:epc: <version>.<manager>.<object>.<serial>

version:EPCのバージョンナンバー(10進数)
manager:生産者番号(10進数)
object:生産者により割り当てられる製品タイプ(10進数)
serial:生産者により割り当てられるユニークな製品コード(10進数)

 例えば、urn:epc:1.2.24.400がEPCにおけるURIフォームとなる。

 お気づきのように、この表記はIPアドレスの体裁を持っている。実際に、IPアドレスと同じ様式で使用でき、特定の位置情報を明確に検索できる。こうした位置情報はサプライチェーン上における製品の特定の状況を表現することになる。

 他のデータタイプの転送に関して、EPCネットワークはXMLの一種を使用し、タグリーダーおよびEPCレジストリとクエリーの間でデータを転送する。このフォーマットはPML(Physical Markup Language)として知られている。

 PMLはXMLをベースにしており、各種のプロプライエタリなアプリケーションでも取り扱えるように、(アドレスや日付、送り状番号などの)データの共通タイプと(購入や見積りに関するリクエストなどの)トランザクションを記述するために使われる。PMLドキュメントは、ネットワーク上でEPCにクエリーをかける人々に対して情報を提供する、EPCレジストリ内の専用コンピュータであるPMLサーバの中にストアされることになる。

可視化

 このことが実際の場において、どのように機能するのかを想像してみよう。ある製品がサプライチェーンを通るとき、タグリーダーはその通過を自動的に書き記す。そして、タイムスタンプと位置情報をあわせて、その情報をレジストリに向けて受け渡す(現実には多様なレジストリがあるため、クエリーは全てのレジストリからのデータを集約せざるを得ないだろう)。それらの製品に関する情報を検索したい場合は、インターネット上でEPCを使ったクエリーを行う。

 まとめると、EPCは製品を識別し、また、PMLは製品を記述し、ONSはそれらを一緒にリンクする。これらのコンポーネントの標準化は、既存のインターネットテクノロジーを使うことで、電子的に製品を識別しトラッキングする能力を提供することになる。

 こうしたEPCネットワーク上で動作するアプリケーションには、高度な機能が求められる。対象となる品目がよほど高額でない限り、個々の世界が1つの品目に対するクエリーの作成を妨害しあうことはないだろう。むしろ、サプライチェーンが本当に能率的かどうか、また、サプライチェーンを通る荷物が一箇所に留まっているかどうかを確認するために、多様な品目の検索を実行し、決定の分析を実行するソフトウェアが要求される。また、他のタイプのアクティビティが、RFIDの利用に際して価値を加えることができる。

求められる経済性と標準仕様

 これらの作業全体におけるキーポイントは、タグとその経済性である。使い捨て回路の無線送信テクノロジーは、1990年代半ばから利用可能になっている。このタグの現在のコストは1個あたり70セントだ。ロジスティックの専門家たちは、RFIDがバーコードに取って代わるためには、そのコストが5セント程度ほどに下がる必要があると評価している。

 RFIDはSun Microsystemsのビジョンと、全ての情報に対してパイプとしての役割を担うネットワークユーティリティに対してよくフィットしている。スコット・マクリーニー氏は2004年におけるメジャーで新しいネットワークの使用法として、RFIDを挙げている。そしてEPCを取り込み、センターリポジトリへのクエリーを行う、Javaアプリケーションを書くことは簡単である。そこには、世界中の生産者から消費者へと移動する、無数の出荷物と製品に関連する情報がある。

 何が必要かといえば、EPCネットワークのインフラストラクチャと機能を定義する標準のセットであり、それは、現実のネットワークを構築するためのインプリメンテーションを伴う。

 EAN InternationalとUniform Code Councilのジョイントベンチャーである、EPCglobalが標準の仕様を定義中である。EPCglobalは、さまざまな業界でEPCネットワークが採用されるよう、ワールドワイドで活動している。彼らは非営利の標準化団体であり、そのゴールはEPCとRFIDの利用を通じてサプライチェーンでの製品に関する情報を可視化し、それぞれの組織をより効率化することである。

 加えて、MITに設置されるAuto-ID Labsが、この領域における設計と構築およびテストに関する、研究と開発を行っている。それはインターネットを通じて、世界中のどこででも即座に、各種のオブジェクトを識別するコンピュータを実現するものだ。

 いくつかのベンダーでは、これら標準に準拠したものを実装することに取り組みつづけている。例えばVeriSignは、DNSにおける自身の管理能力を、EPCネットワーク内でも同じ役割に位置付けたいと望んでいる。

 各企業は、彼ら自身のレジストリの中に、データを保持する彼ら自身のネットワークを構築できるが、共通のインフラストラクチャを持つことで、サプライチェーンにおいて最小限の制約が生じる。これは、アプリケーションにおいても同じことがいえる。一度、そのようなインフラストラクチャが実現してしまえば、サプライチェーンの最適化を図るアプリケーションがより生まれてくるだろう。

執筆者に関して

 Peter Varhol氏は、Compuware Corporationのテクニカルエバンジェリストである。同氏へのコンタクトは peterv@mv.mv.comまで。

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