AWSはWeb UIをAIエージェントが自動操作する新サービス「Amazon Nova Act」を提供開始する。開発から本番運用まで一体で扱える統合型ソリューションとして注目されている。
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AIエージェントを業務環境で使うにはモデルへのアクセスだけでは不十分で、ワークフローの制御やプロンプトの調整、ツール選定、複数コンポーネントの統合などに多くの時間が割かれていた。課題は知能の高さそのものではなく、安定した動作や統合性、迅速な本番導入にあった。
こうした点に対応するため、Amazon Web Services(AWS)は2025年12月2日(現地時間)、ユーザーインタフェース(UI)を操作するAIエージェントによってワークフローを自動化する新サービス「Amazon Nova Act」(以下、Nova Act)を一般提供開始したと発表した。
研究プレビューとして提供されていた段階から、開発者が実運用での利用を強く求めていたことを受け、開発、展開、管理までを一体化したサービスとして正式投入される。
Nova Actは、本番利用を前提としたWebブラウザ自動化のための統合型ソリューションとして設計されている。生産環境のUIワークフローを自動化するAIエージェント群を構築、配備、管理できるサービスで、大規模運用時においても90%を超えるタスク信頼性を実現するとしている。独自の「Amazon Nova 2 Lite」モデルを基盤に、Webブラウザ操作、API呼び出し、必要に応じた人による介入への切り替えをする。主な用途として、Webの品質保証テストやデータ入力、データ抽出、決済フロー処理が挙げられる。
従来の多くのAIモデルは、実行を管理する制御層や操作系と切り離された状態で学習されており、安定性低下の一因になっていた。Nova Actでは実際のUIを模した合成環境「Web Gym」でエージェントを動作させながら強化学習をする手法を採用し、モデルや制御機構、ツール、SDKを一体で学習させている。この構造により、実行完了率の向上とUI変化への対応力を持つエージェントシステムを実現した。
開発者には、Webブラウザのプレイグラウンドで自然言語による操作定義を試せる環境を用意している。検証後は「Visual Studio Code」などの統合開発環境にエクスポートし、専用拡張機能を通じて詳細な調整ができる。拡張機能には構築や認証、展開、実行を管理する専用タブが備えられ、「Docker」コンテナ化からAWSへの配備、実行状況の可視化までをIDE内で実行する構成となっている。
本番展開後は、管理コンソールで実行ログやエージェントの判断過程、スクリーンショットを確認でき、人による対応が必要な場面では通知設定も可能とした。複数ドメインのAIエージェントをオーケストレーションする「Strands Agents」フレームワークと連携し、Webブラウザ自動化を含む複合的な業務ワークフロー構築に対応する。
Nova Actは現在、米国東部(バージニア北部)リージョンで利用可能で、料金や他のリージョンへの展開状況は専用ページで案内するとしている。AI利用への安全制御やコンテンツ管理機能も組み込まれている。
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