アジア3カ国のウイルス「動向と対策」AVAR 2004

11月25日、26日の2日間にわたり、ウイルスの最新動向や対策などについて議論するカンファレンス「AVAR 2004」が開催されている。

» 2004年11月26日 02時56分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 アジア太平洋地域を中心に、各国のウイルス対策ベンダーや研究者らが一堂に会し、最新動向や対策などについて議論するカンファレンス「AVAR 2004」が、11月25日と26日の2日間にわたって開催されている。主催は非営利団体のAVAR(Association of anti-Virus Asia Reasearchers)で、今回は7回目の開催だ。

 いまさら言うまでもないことだが、インターネットが普及した現在、ウイルスやワームは日本国内だけではなくグローバルに影響を及ぼす問題となっている。初日に行われたパネルディスカッションの1つでは、こうした背景を踏まえ、日本のほか韓国、中国の3カ国におけるウイルス発生状況と対策が紹介された。

日・韓・中それぞれの取り組み

 まず日本の場合だが、「ウイルス届出件数は増加しているが、一方で実害率は低下している」(IPAセキュリティセンター ウイルス・不正アクセス対策グループリーダーの小門寿明氏)。引き続きウイルスは蔓延しているものの、一部のユーザーを除けば対策がかなり進んできたとの見方を示した。

 ただ、今年も顕著に見られる傾向として「電子メール」および「ソフトウェアの脆弱性」を悪用し、不正アクセスの手法を用いるタイプのウイルス届出が特に多く見られるという。このことから「従来のウイルス対策に加え、不正アクセス対策も必要だ」と同氏は述べ、パッチ適用などの重要性を指摘した。

 続いて登場した韓国情報保護振興院(KISA)のチョウ・ジュンスプ氏は、2003年に登場し、韓国のみならず全世界にインパクトを及ぼしたワーム「Slammer」に言及した。インターネットが何日も麻痺する状態に陥ったというこの手痛い経験から、「ISPやベンダーはセキュアな環境作りの重要性を、家庭ユーザーはパッチ適用の重要性をそれぞれ認識した」(チョウ氏)。何より、「ネットワークインシデントに無関係な人などいないことを学んだ」(同氏)という。

 この事件を機に韓国政府は、情報セキュリティに関する法制度の整備に取り組み始めたほか、KISC(Korea Internet Security Center)を設置し、24時間体制でのネットワークインシデント監視を開始した。同時に、ユーザーの認識を深めるべく「インシデント対応マニュアルを作成し、中小企業向けに配布した」(同氏)といった対策も進めている。

ディスカッション パネルディスカッションの模様

 一方、急激な勢いでインターネットが普及している中国でも、やはりウイルスが問題となっている。中国・National Computer Virus Emergency Response Centerのチアン・チャン氏によると、「インターネットのユーザーは増加しているが、同時にウイルスへの感染も増加している。しかも繰り返しウイルスに感染する割合が高く、ウイルス対策活動が不十分と言える」という。

 中国では、ウイルス作成を罰する条項を盛り込んで刑法を改正するなど法制度の整備を進める一方で、ウイルス監視ネットワークを立ち上げ、モニタリングを行っている。さらに「ほぼ毎週のようにウイルス予報を出しているほか、中央電視台や新華社と連携してウイルス対策/セキュリティ情報の提供、啓蒙に努めているということだ。

ウイルスが犯罪の手段に

 パネラー各氏はさらに、情報セキュリティの世界において今後懸念される動きについて触れた。

 小門氏は、ウイルスと不正アクセスの境界があいまいになってきたと指摘。さらに、いわゆるフィッシング詐欺もそうだが、「詐欺に近い形の、人の心の弱みに付け込む脅威が増加してきた」(同氏)という。

 韓国でも「フィッシング詐欺は多く発生している」(チョウ氏)。今のところ、韓国の金融機関をかたったものは見られないというが、「今後、オークションサイトなどに同様の攻撃が広がることが懸念される」と同氏は述べた。これとは別に、IRCなどを通じてリモートコントロールされてしまう「ボット」および「ボットネット」の広がりにも注意が必要だという。

 中国のチアン氏は、ウイルス作者の質が変化している点に言及した。「以前のウイルス作者は他人のネットワークを攻撃すること自体を目的にしていた。しかし昨年から今年にかけては、重要な情報や資産の詐取といった明確な目的を持ち、ネットワーク犯罪の手段としてウイルスを用いるようになっている」(同氏)。

 国境を越えて広がっていくこうした犯罪を未然に防ぐ取り組みが必要であり、それには「国内での取り組みだけでなく、国際的な協力が不可欠だ」とチアン氏は語った。

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