コラム
» 2005年04月19日 19時01分 公開

プロプライエタリ・ソフトウェアに学ぶ新規ユーザー獲得法Magi's View(2/2 ページ)

[Kris-Shaffer,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine
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オープンソースとデスクトップLinuxの改善点

 iLifeが示しているのは、Appleがクールな機能を満載した大いなるソフトウェアを作ったということだけではない。そこから入ればすぐに成果を手にできる扉を入門者にわかりやすく用意することの重要性をも示しているのだ。それが入門者を引きつけて放さないのである。上級者向けに外部プログラムとの拡張性と協調性を備え、基本的な単純性と効率性を犠牲にすることなく機能を増やすことができるようにしている。こうした点について、オープンソース・ソフトウェア、とりわけデスクトップLinuxの改善余地は大きいと思われる。近年、Microsoftから容易に移行できるオフィス・ソフトウェアの開発では大きく進展したし、各分野にLinux向けの強力なアプリケーションが幾つか存在する。確かに、Linuxソフトウェアは、使った人に「すごい!」と思わせる。しかし、その「すごい!」をそのまま新規ユーザーの獲得に結びつけることのできる十分に入りやすい扉が用意されていないことが多いのである。

 しかし、決して、初心者用Linuxソフトウェアを一般大衆に与えよと提案しているのではない。また、オープンソースやLinuxの開発者たちがユーザーの立場に立っていないと言っているのでもない。こうした点では、Mozilla Foundationなどのグループが大きな成果を挙げている。しかし、オープンソース全体がコミュニティとして、こうした点を真剣に追求すれば、オープンソース・ソフトウェアの利用と人気は急速に拡大するだろうと思うのである。

 一般ユーザー向けに構成されているLinux(大概は、デスクトップ・アイコンが幾つか追加されており、それについて若干の説明がある。5分もあればできることだ)であれば、普通の人にもすぐに快適に使えることを、わたしはこの目で見て知っている。この快適さがあれば、人々はLinuxを主要なOSとしてすぐにも使うことができる。そして、それが、Linuxの持つ多くの機能やさまざまなプログラムに触れる機会を作り、使ってみようかと思わせるのだ。また、誰かに新しいシステムの基礎を教えてもらわない限り近づこうとしなかった人々がいることも知っている。しかし、開発者やディストリビューターがほんの少し手助けするだけで、ほとんどすべてのユーザーを、そうした状態に陥らせずに済むのである。

 手始めに、Linuxディストリビューションのシステム・デフォルトを初心者向きに設定しよう。これは簡単だが効果的である。経験のある熟練者はどのみちデフォルトの多くを変更するものだ。ならば、デフォルトを変えそうもないユーザー向けの設定にしない理由があるだろうか。WebアプリケーションやAVや事務用の基本アプリケーションを選定する際、これが特に意味を持つ。新規ユーザー向けに、デスクトップからクリック1つでアクセスできるようにするのだ。しかも、プログラムの名前かアイコンを見れば、初心者にも、どのようなプログラムかすぐに分かるようにする。インストール・パッケージがこのように設定されていないなら、経験豊かなLinuxユーザーは、Linux初心者の友人たちのために設定してあげようではないか。こうした簡単なことで、新規ユーザーが自分の新しいデスクトップに馴染みやすくなるのである。

 Linuxのディストリビューターやデスクトップ管理の開発者は、ファイル構成をわかりやすくしよう。簡単なことだが、新規ユーザーにとっては、それだけでも大助かりなのだ。例えば、Mac OS Xでは、ユーザーのホーム・フォルダの中にあらかじめ必要なフォルダが用意されており、文書やさまざまなAVファイルを置くことができる。Finderのサイドバーには、こうしたフォルダやアプリケーション・フォルダへのリンクがある。また、Appleアプリケーション(多くのサードパーティ製アプリケーションも)の「開く」や「保存」ダイアログでは、適切なフォルダがあらかじめ設定されている。こうした配慮を取り入れることで(KDEファイル・マネージャなどを少し変更するだけのことだ)、新規ユーザーはずっと快適に使うことができるようになる。一方、熟練者はといえば、彼らはファイル構成やサイドバーを好みに合わせて変更することができるのである。

 アプリケーションの開発者にも、配慮をお願いしたい。例えば、アプリケーションごとに特別なファイル形式を採用するのではなく、アプリケーション間でデータを直接エクスポートできる(iLifeなどのように)インポート/エクスポート機能を用意する。そうすれば、あまり知識のないユーザーにとっては混乱しにくくなるし、誰にとっても効率が高くなる。従来のインポート/エクスポート機能を捨てるのではなく、補完するのである。アプリケーション間のドラッグ&ドロップも、もっと使いやすくなるだろう。そして、こうした点でもオープンソースの特技であるカスタマイズ性能を発揮すれば(スイート内のアプリケーション間だけでなく、関連のある外部アプリケーションにも直接エクスポートできる機能など)、プロプライエタリのアプリケーションよりも魅力あるものになるだろう。

 開発者がそうした機能を統合してくれないのなら、オープンソースのサードパーティ製プラグインを作って、オープンソース・アプリケーション間の相互運用性を改善しよう。さらに、そうしたプラグインに対応するプロプライエタリ・アプリケーションとも、相互運用できるようにする。例えば、プロプライエタリではあるがRewireという良い例がある。これがあれば、専門家向けのプロプライエタリなオーディオ・アプリケーション間で相互運用が可能になる。また、オープンソースのMIDIシーケンサもあり、楽譜をLilypond形式に直接エクスポートできる。

 可能であれば、関連するアプリケーションをスイートとして同梱(iLifeのように)しよう。時間はかかるだろうが、理想的である。オープンソースにも、Kontactという素晴らしい例がある。幾つかのアプリケーションがグループ化され相互に連携し、Kontactのサイドバーから簡単に切り替えることができる。NewsForgeの2月の記事では、ScribusとGIMPとInkscapeの統合が提案されている。すべてのアプリケーションをスイートにできるとは限らないが、大概のオープンソース・アプリケーションには、統合すれば新規ユーザーにとって使いやすくなる可能性がある。

結論

 いろいろと述べたきたが、新規ユーザーにも使いやすいアプリケーションやディストリビューションを実現する方法のごく一部を挙げたに過ぎない。少数とはいえ、そうした努力を始めたプロジェクトもある。こうした努力を続けることで、魅力的で、取っつきやすく、ユーザーが繰り返し使ってくれるようなソフトウェアが現れてくるのだ。Linuxを見た人が1回クリックしたらLinuxの「すごい!」機能を目の当たりにするようなLinuxディストリビューションが増えてくれば、そしてソフトウェア開発者がアプリケーション間の連携を図ることに真剣になれば、オープンソース・コミュニティーは、新規ユーザーの勧誘と獲得に向けて歩みを早めるどころか、大きく前進できるだろう。

 Linuxは、強力で汎用性のあるオペレーティング・システムである。クールで手放したくなくなるような機能やアプリケーションも多い。それを分かってもらうのに2カ月もかかるなどということのないようにしようではないか。

クリス・シェイファー:音楽家。空いている時間に、Webデザインとオープンソース技術関連の仕事をしている。最近のプロジェクトには、Mac OS X向けグラフィカル・アプリケーション――コマンドラインを使う必要のないオープンソース楽譜アプリケーションLilyPond――の製作などがある。


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