IT市場で最も注目を集めている企業群が中堅・中小企業であり、ITベンダーもこぞって対応を本格化させている。5年周期ともいわれるIT投資において、2000年問題以後初めて訪れたリプレース期という見方もある。
オンラインムック強い中堅企業のIT化シナリオ。
伊嶋 謙二(ノーク・リサーチ代表)
現在IT市場で最も注目を集めている企業群が中堅・中小企業(SMB)であることは誰もが認めるところだ。ソフトウェア/ハードウェアベンダーはこぞってSMB市場への注力を本格化させている。
背景には大企業へのIT導入がある程度一巡したという事実があるだろう。そこで、ベンダーの目がSMBに向かったことは確かだ。一方で、SMB自身も自社の経営、特にコアコンピタンスにかかわる部分をIT化し、ITで利益を出すシナリオを描かなくてはならない時期を迎えており、本格的なIT投資を視野に入れているという事情もある。
そのツールとして注目されているITソリューションの代表格がERPだ。国内のERPベンダーに加え、大手外資系ベンダーのSAP、オラクルに加え、近々マイクロソフトも参入すると言われており、競争の激化とともにSMB向けのERP市場の盛り上がりが予想されている。
いわゆるSMBといわれる属性での明確な定義付けは難しいが、本特集では年商規模で5億円以上500億円未満をSMB、それ以上は大企業と定義したい。内容としては前半2回でSMBを取り巻くERPベンダーの実態、戦略などを分析する。最後となる3回目は、SMBにとってのERP導入の重要性と、その導入をスムーズに行うためのプロセス、注意点を考察していく。
ノーク・リサーチでは2005年9月から12月にかけて国内で販売しているERPベンダーのうち、直接面接が可能であった37社を対象に、SMBにおけるERPパッケージ市場の実態調査を行った。
まず、グラフ1はERPパッケージのライセンス売上高市場規模を年推移で示したものだ。グラフ1は、ERPパッケージのライセンス売上高の規模として特に成長著しい市場がSMBであることを明らかにしている。2004年度は前年度から14.7%の伸びで591億円、2005年度見込みが前年度から12.2%の伸びで663億円となっている。
この伸びの要因は以下の3点に要約できる。
国内SMB向けERP市場では、オフコン、PCサーバのリプレースが活発であったこと。また、西暦2000年問題に合わせて自社のシステムをパッケージに転換したSMBユーザーのリプレースも活発であった。一般に、情報システムの切り替えは5年周期と言われており、2000年前後にシステムの入れ替えをしたユーザーの転換期が2004年前後から始まり、今後もしばらく続くことが予想される。
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