Tibco、データバスを核に日本版SOX法対応で企業を支援

アプリケーション統合ベンダーがそのデータ統合技術を核に、日本版SOX法に代表される内部統制対応のトレンドに乗ろうとしている。業績好調というTibcoもその1つだ。

» 2006年04月05日 15時35分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 かつて「EAI(エンタープライズアプリケーション統合)」ベンダーと呼ばれた米WebMethodやVitriaなどの多くの企業が、現在はSOA(サービス指向アーキテクチャ)やビジネスプロセス管理(BPM)をメインメッセージにビジネスを展開している。Sunmicrosystemsに買収されたSeeBeyondも同様だ。ここ数年の間、「コスト負担が重い」といった理由でEAIソリューションの導入が進まず、EAIベンダーが全般的に業績の不振に悩まされたと考えられている。

 そんな中で現在、同じくEAIベンダーとして知られる米Tibco Softwareは業績好調という。同社の取り組みについて、上級副社長を務めるMurat Sonmez氏に話を聞いた。

「SOX法はテクノロジーにはさほどのインパクトを与えなかったが、コンサルタントには大きな影響を与えた。Y2K(2000年問題)以降初めて、生き返る機会を与えられたといえるかもしれない」と笑うSonmez氏。日本版SOX法で一番特をするのは会計周りを担当するコンサルタントかもしれない

 Sonmez氏は「1997年に設立以来、現在がこれまでで最も良好な状況」と話す。

 「この8年間でビジネスを4億5400万ドルにまで成長させました。これは実に、年率40%の成長を続けたことになり、ソフトウェア業界としては世界で最も急速に成長した企業の1つといえます。利益も上がっています。インテグレーションという分野では明らかに市場をリードする存在です」(同氏)

 同社は、業種別ソリューションにも特化しているが、何よりも技術的な優位性を核と位置付けているという。同社の技術は5層に分かれており、最下層から順に「SOA(サービス指向アーキテクチャ)」「BPM(ビジネスプロセス管理)」「Business Optimization」「Predictive Business」「Ajax」となっている。

 同社の1つの顧客に、ラスベガスでカジノを運営しているハラーズエンタテイメントがある。Tibcoは同社に4番目のPredictive Business」を提供しているという。名の通り、ビジネスを予測しながら運営していくものとなっている。

 「ラスベガスでギャンブルをすれば、多くの人は結果的にお金を失うということを知っています。全米で最も優れているといわれるハラーズでは、たとえ負けたとしても顧客が満足して、次回も遊びに来てくれるような仕組みを提供しています」(同氏)

 具体的には、ある顧客がスロットマシンで数百ドルを失いかけている際に、その情報をTibcoが提供するサービスバスがリアルタイムに把握している。その情報から、顧客が損をして腹を立てているであろうことを予測するという。さらに、連携している他のアプリケーションからその顧客が好きなショーを探し出した上で「幸運の大使」を派遣、その顧客に対して「今夜はいかがでしたか。お客様のためにとっておきのショーとスペシャルディナーをご用意しました」などと声を掛けるという。顧客に機嫌を直しもらい、もう一度ギャンブルをしてもらうことが目的だ。「国民性の違いか」とも勘繰ってしまうが、米国では実際にこれで成功しているという。

コンプライアンス対応に注力

 同社は、キーとなるアプリケーションおよびデータ統合技術を核に、現在最も注目しているキーワード「日本版SOX法」への取り組みを強化しているという。3月10日に閣議決定した「金融商品取引法案」において、日本版SOX2008年3月施行とした当初の見通しから1年間先送りにされた格好だが、施行されることは間違いなく、延期した分厳格な適用が求められてくると考えて間違いない。

 エンロンやワールドコムといった米国企業による不正会計処理にかかわる不祥事を撲滅するために、2002年7月に米国で制定されたのがサーベンス・オクスレー(SOX)法。その日本版の施行により、日本企業も情報システム側でさまざまな対応を迫られると言われている状況だ。SOX法は、内部統制の確立を図り、部外者による監査とその監査機関自体の監視まで行うことで適正な情報開示を行わせ、不正取引を駆逐しようというものだ。「日本版」では特に、内部統制の厳正な適用のためにITを活用することが明文化されている点が特徴といわれている。

 そして、実際にIT側が対応を図ろうとした場合に最も重要な要件が、さまざまなデータを透明化して一元管理できるようにすることであり、そのために必要なバスを同社は提供していると同社はアピールしている。

 「エンロンではCEOが自社の会計不祥事の責任をCFO(最高財務責任者)になすり付ける場面があったが、SOX法によってそれは許されなくなった。不正に対してCEOが管理責任を問われることが法制化されたからである」(同氏)

「2006年がTibcoにとっての日本年と位置付けられている」と話し、ビジネス展開を本格化させると話す木鎌三千雄社長

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