DDS/DATテープストレージ、その知られざるベストセラーの秘密バックアップストレージ図鑑(1/3 ページ)

登場から17年たったDDS/DATテープストレージ。全世界で1700万台以上出荷され、テープストレージ市場の50%を占めるベストセラーだ。コストとパフォーマンスの上で、中小企業に最適なバックアップ装置の秘密を探ろう。

» 2006年07月13日 10時37分 公開
[関根史和,ITmedia]

 世の中に多くのストレージデバイスがある中で、コストとパフォーマンスの最適なバランスを考えると、磁気テープストレージの右に出るものはない。フラッシュメモリやHDDは、即時のデータアクセスのしやすさでは群を抜いているものの、メガバイト当たりのストレージコストは比較的高い。その点で、フラッシュメモリやHDDはバックアップストレージよりオンラインで一次ストレージに適している。

 一方で、CDやDVDドライブのような光記憶媒体は、適度な容量でかつデータアクセスにも優れる。しかし、毎日行うバックアップやアーカイブの容量が大きければどうだろう。メガバイト当たりのコストは高額になり、容量が大きくなる定期的なバックアップを行うには、媒体容量の制限が問題になってくる。

 これらメディアに比べ、磁気テープストレージは、大容量、小サイズ、オフサイト管理という利点を持っているだけでなく、長期間にわたるデータバックアップを低コストで行える技術として今でも優位性を保っている。

 中でもDATドライブは1989年の発表以来、現在、第5世代が製品化され、全世界で1700万台以上出荷されている。実際に900万台を超えるドライブで採用されている実績を持つ。小規模や中規模ビジネスの市場において、信頼性と費用対効果の高いバックアップに対するニーズに対応できるとして、現在でも幅広く使用され続けているのだ。今回は、磁気テープストレージ市場の中でも50%弱という出荷台数シェアを占めているDATドライブについて説明していこう。

テープドライブ・メカニズム

天板を取り除いたときのHP DAT72メカニズム

 磁気テープを利用したコンピュータ用の記憶装置であるDDS(Digital Data Storage)は、もともと音楽のデジタル録音用のDAT(Digital Audio Tape)の原理を元にしており、ヘリカル・スキャン記録技術を使用している。ドライブに使用されているメカニズムは、データストレージの特別な要求を満たせるように設計され、データは「ECMA」「ISO/IEC」「ANSI Digital Data Storage(DDS)」の4規格に基づいて記録される。

ヘリカル・スキャン記録方式

 現在使用されている多数のコンピュータテープドライブや、一般的なオーディオテープ・メカニズム(例:コンパクトカセット)は、テープに沿って情報が記録される。しかし、メカの精度や磁気の混信(異なるデータトラックからの信号間の相互作用)など、さまざまな制限がある。データ保全性と互換性を保持しつつ、データ密度を増やすのは非常に困難なのだ。最初に開発されたデジタルオーディオテープ(DAT)では、このような制限を克服するため、テープ全体を使って斜めにトラックを記録する仕組みを採用した。

 具体的には、2つのWriteヘッドを垂直軸から6度の角度で回転ドラムに搭載。テープがドラムと同じ方向に約15ミリ/秒の速度でゆっくり動く間に、ドラムは約9000rpmで回転(DAT72ドライブの場合)し、互いに反対側に位置するヘッドがテープ上を螺旋状(ヘリカル)に走査(スキャン)しながらデータを記録する。この構造から、DATのような記憶方式はヘリカル・スキャン記録方式と呼ばれる。(下図参照)

 さらに、データトラック間の磁気の混信を最低限に抑えるため、2つのWriteヘッドが書き込むデータに異なった角度を付けている。この角度は、アジマス角(Azimuth angle)と呼ばれる。各ヘッドは異なったアジマス角にセットされているため、テープ上の隣接するデータトラック間での混信を最小限に抑制するというわけだ。

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