日本経済の成長を支えてきた製造業だが、その製品開発手法は時代とともに移り変わっている。日本市場で高いシェアを持つ「Obbligato II」についてNECに話を聞いた。
日本経済の成長を支えてきた製造業だが、その製品開発手法は時代とともに移り変わっている。製品の形状や重さ、デザインなど、さまざまな要素はかつて、1つ1つの試作品を実際につくってテストが行われていたが、現在は3D CADソフトを活用することによって、コンピュータ上のバーチャルな環境でシミュレーションを行うことができる。
また、CADによるシミュレーション機能だけでなく、製品を構成する部品をいかに効率的に管理していくかも、製造業の成否を左右する。そこで、BOM(部品構成表)の管理機能もPLMの中心的な製品として認識されている。こうした機能を含んだツールとして日本市場で高いシェアを持つ「Obbligato II」について、NECに話を聞いた。
「Obbligato」シリーズの発売は1991年。以来、導入企業は450社に上る。現バージョンであるObbligato IIの製品開発の背景には、ものづくりの競争力強化には「高付加価値製品開発」「グローバル分散開発」「コラボレーション開発」の3つが不可欠であるという認識があるという。
三洋電機、アンリツ、三協立山ホールディングスをはじめとして、電気メーカーのほとんどに導入されている。
だが、NECとしては、自社を統合システムインテグレーターと位置付けており、PLM専業ベンダーではないと考えている。それに沿った形で、製品、導入サービスを展開する。
Obbligato IIの特徴は、散在するデータを一元管理し、全体最適の視点で製品ライフサイクルを実現できる点に尽きる。企画BOM、設計BOM、調達BOM、販売BOM、保守BOMなど、さまざまな業務機能を統合した「統合BOM管理」を構築することが機能の中心になる。これにより、多数の部門の意向を反映させた「すりあわせ型」の製品ライフサイクルを実現することができるわけだ。
具体的にObbligato IIでは、ERP、SCM、CRM、レガシーシステム、さらに、CASEツール、3D CADツールなどのデータソースから、3Dモデル、図面、文書、部品情報、設計の変更情報、金型情報、コスト、品質、環境などのデータを1つの環境に取り込むことができる。その上で、各種の製品データを利用して統合BOMを構築し、企画、設計、試作/評価、生産準備、量産といったプロダクトライフサイクルを管理することができる。その際、イントラネットやインターネットを経由して入力される営業/技術情報、顧客、サプライヤー、EMSといった情報も随時システムに反映され、全体の一元管理が可能になっている。
また、製品開発を行う際の開発プロジェクトの進ちょく管理、リスク管理、コスト管理を効率的に行えることも強みだ。特に、コスト管理については、「年率15%で価格が下落する商品の3カ月後のコストは分からない。だからこそ、把握する必要がある」(NEC担当者)という考えに基づき、「見える化」を進め、「コストBOM」のようなコンセプトでコストマネジメントを行うことができるという。情報が散在している企業のコストを見える化する際には、大きな力になる。
そのほか、「InfoCage/持ち出し制御」機能との連携により、機密データの閲覧、編集を制限できること、外部メディアへのデータの持ち出しを制御できること、ACLエディタ(アクセスコントロールリストの定義ツール)によるきめ細かな設定機能により、セキュリティ機能が充実していることも特徴となっている。
NECは今後、開発プロジェクトの管理、ビジネス情報の管理への注力により、経営視点の強化、経営者と現場のプロセスの融合を図るという。また、SAP PLMと連携可能にするなど、外部とのインタフェースを拡充しており、これをさらに進める。また、SolidWorks、NX、Catiaなどの他社のCADツールとの連携を強化する。
また、日本でのシェアの高さから、Obbligato IIは東南アジアでの知名度が非常に高い。それを強みに、中国、東南アジアへの市場展開を強化していく考えだ。
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