情報通信研究機構、富士通、富士通研究所の3社は専用ハードウェアによる423ビットの素因数分解に成功したことを発表した。将来の安全な暗号システムに貢献するという。
独立行政法人 情報通信研究機構および、富士通、富士通研究所は9月1日、専用ハードウェアを用いて、素因数分解問題を解く実験に世界ではじめて成功したことを明らかにした。
素因数分解問題は、インターネットの暗号通信などで広く用いられるRSA暗号の安全性の根拠となっている。逆に言えば、RSA暗号は素因数分解問題を解ければ解読可能となるため、RSA暗号の安全性を保証するには素因数分解問題がいかに難しいかを検証することが重要となる。これまで、ソフトウェアによる素因数分解実験は数多く行われてきたが、専用ハードウェアによる分解実験は行われていなかった。
今回発表された専用ハードウェアによる素因数分解実験システムは、現在最も高速な素因数分解の分解方式といわれる一般数体篩法をベースとし、最大768ビットの数まで入力可能。ボトルネックとなる篩処理に専用のハードウェアを、篩処理以外の線型代数処理および平方根計算処理はソフトウェアにより実現し、それらを組み合わせることで構成されている。
本システムを用いた分解実験の対象とした数は、未分解の423ビット(10進128桁)の数だったが、同システムを約1カ月間稼働させることで、62桁と66桁の素因数に分解することに成功した。
理論的には、RSA暗号鍵と同程度の大きさの合成数の素因数分解問題が解ければ、RSA暗号も解読される。今回分解実験に用いられた合成数は、一般的に用いられているRSA暗号の鍵(1024ビット)よりも小さいものだったので、現実のRSA暗号が直ちに解読できることを示すものではない。むしろ、専用ハードウェアによる暗号解読の可能性を精密に見積ることが可能になることで、その結果を考慮してRSA暗号鍵長の更新時期を適切に設定し、将来の安全な暗号システムに貢献できると考えられている。
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