経営者よ、管理者よ、「裸の王様」になってはいませんか?企業にはびこる間違いだらけのIT経営:第20回(1/2 ページ)

ある程度年齢を重ね、キャリアも積み、役職が上がってくると「改めて学ぶ」ということから遠ざかりがちだ。勉強の足りないベテランほど淘汰の対象になる。

» 2006年12月07日 09時00分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト編集部]

勉強不足を痛感し身が震える

 現在のコンサルタントという仕事柄、多くの経営者や管理者にお会いする機会が多い。

 お会いして話をさせていただく中で、彼らについてずっと心に引っかかっているものがあった。大変口幅ったい言い方で恐縮だが、「ITはもちろん、経営そのものについても勉強が足りないのではありませんか?」ということである。

 このことは、筆者が企業人としての現役時代に社内や業界で感じていたことでもあるが、現役を引退して経営を客観的に見ることができる立場に立っていっそう痛感するようになった。筆者自身に対してもそうである。

 自分としては、現役時代に本を読むことも、仲間と議論することも、社外研修や展示会やセミナーに出かけることも、積極的に努力をしたつもりである。しかし現役を引退して4年余り、その間に必要に迫られて座学や実地体験・見聞によって得た経営感覚からすれば、現役時代の勉強がいかに不十分であったかを思い知らされている。

「勉強したつもり」も後々尾を引く病の一つ

 世の中にいかに勉強をしない、あるいは勉強をしているつもりの経営者や管理者が多いか。勉強をしない上司を持った部下も災難である。大いに憂えるべきだ。

 私が体験した「勉強不足」の例を、いくつか挙げよう。

 「ITがサッパリ判らないので、一切お任せします」と、A社長は最初から降りるお任せ型だった。IT導入にはトップの適切な関与がいかに重要か、そのためにトップ自身がITについて少しは書物を読んだり関係者と議論をしたりすることがいかに必要かを説いても、A社長は一切聞く耳を持たなかった。A社長は「まあ、まあ、とにかくお願いしますよ。そのためのコンサルタントなんでしょうから。社長が勉強したらコンサルタントは要らないでしょう」と繰り返した。筆者は、コンサルティングを引き受けることをついにお断りした。

 「とにかくITを導入して、わが社を先進企業にしたい。仲間の社長が導入したERPソフトを、わが社で是が非でも導入したい」と主張するB社長は、妄信型だった。この種のトップは、聞きかじりのベンダーを一方的に指名して、とにかく導入すること自体が目的化し、社内にベンダー至上主義を徹底するから手に負えない。

 筆者はB社長に、ITを導入するには経営の問題点や課題を明らかにして、業務改革の一手段としてITを位置づけること、そしてIT導入の目的や期待効果を明確にしてから取り掛かることなどを説得した。そのためには勉強が必要であることを説き、IT関連の書物や経営者向けセミナーをいくつか紹介した。あるいは、トップとシステム部門や筆者を交えての議論の機会も作った。B社長はよく勉強し、熟慮を重ねた結果、グループウェアを導入することを決断した。

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