成田空港から3時間足らずで降りたった中国・東北地方の港湾都市、大連は、初夏を思わせる清々しい風が、次々と建設される高層マンションの間を吹き抜けている。富の象徴ともいえる摩天楼を支えているのは、海運や金融、観光とともに急成長するソフトウェア産業だ。
その拠点、大連ソフトウェアパークで日本ヒューレット・パッカードの小田晋吾社長は、「この1年の進化には目を見張る。日本HPも頑張らないといけない」と話した。
HPはグローバルカンパニーとして、世界各地のリソースを活用し、顧客に優れた製品やソリューションを提供している。
「HPでは優れたサービスが、そのための適した場所から提供される。それによってコストは下がり、品質は高まる。それを可能にするのは、優れた人材、プロセス、そして技術だ」と話すのは、大連ソフトウェアパークに大規模なオフィスを構える上海HPの陳生氏。彼が統括する大連サイトでは約2000人が働く。
HPは1985年、中国HPを設立し、ITベンダーとして他社に先駆けて中国大陸に進出している。一方、上海HPは、PCやプリンタの製造業務を行うために1996年に設立され、その後、社内のバックオフィス業務や製品販売後の技術サポートを担うコールセンター業務、あるいはソフトウェア開発といった分野にも領域を拡大している社内向けの組織だ。
上海HPはその拠点の1つとして大連を選び、2004年のソフトウェア開発センターを皮切りに、自社製品のサポートコールセンターや、顧客からヘルプデスク業務を請け負うトレードコールセンター、そして社内業務を行うBPOセンターを次々と開設してきた。大連が、ソフトウェア開発やBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)のインフラ整備に努め、また、優れた人材の育成に力を注いでいるからだ。
HPでは、優れたソリューションを適した地域から顧客に届ける、という意味で、「グローバルデリバリーセンター」と呼び、この大連サイトを北アジア地域のハブとして位置付けている。
例えば、技術サポートのコールセンター業務では、コスタリカ、バンガロールとともに大連が3大拠点となっている。大連のスタッフの半数にあたる約1000人が、北京語、広東語はもちろん、日本語、韓国語などで北アジア各国の顧客らの問題解決などにあたっている。
日本HPが販売したPC、プリンタ、サーバ、そしてストレージのテクニカルサポートや修理診断サービスなどに従事する日本チームだけでも240人の規模を誇り、今年末には320人まで増員する計画だという。
日本HPでボリューム製品のコールセンター業務を統括するグローバルデリバリー統括本部コマーシャルソリューション本部の野田敏樹本部長は、「顧客からの電話の約6割は大連に移管が進んだ。もちろん、顧客満足度は日本と同等以上を目標だ」と話す。
PCやプリンタのユーザーサポートはほぼ100%を大連のエンジニアが引き受けているほか、この3月に日本市場にも投入されたPavilionデスクトップPCについては、ゼロから大連でユーザーサポート業務を立ち上げている。
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