MicrosoftのWindows Vistaチームは、仮想化マシンでVistaの低価格版の使用を認めるかどうかで方針が二転三転したことを認めている。
Microsoftでは、低価格バージョンであるVista Home Basic(199ドル)とVista Home Premium(249ドル)を仮想マシンで使用できること、そして情報著作権管理、デジタル著作権管理およびデータ暗号化サービスのBitLockerを仮想マシンで使用するのを禁じた制限の撤廃を、6月20日に発表することになっていた。
事実、Vistaチームのスポークスマンは今週初めに行われたブリーフィングで、仮想化をめぐる潜在的なセキュリティ問題に対する意識の高まり、そして選択肢の拡大を同社に求める顧客の声が、VistaのすべてのSKU(製品型番)に対して仮想化を認めることを決めた主要な動機だと米eWEEKに語っていた。
同スポークスマンによると、この6カ月間で状況が変化し、今日ではハードウェアの仮想化に関連したセキュリティ問題に対する意識が高まり、OEM各社は、まだ仮想化を利用していない大多数の顧客のマシンで脆弱な部分を少なくするために、ハードウェア仮想化機能を無効にした状態でマシンを出荷しているという。
「われわれは、仮想化推進派やパートナー、マスコミ、アナリストなどからのフィードバックも重視している。従来と同様、今でもセキュリティが問題だと考えているが、われわれに寄せられたフィードバックは、MicrosoftがEnd User License Agreement(EULA)を通じて選択をするのではなく、エンドユーザーが自身の知識に基づいて選択できるようにすべきだというものだった」と同スポークスマンは話していた。
しかしその後、何かが起きてMicrosoftの方針が180度転換し、同社の広報担当者は6月19日夜、「MicrosoftではWindows仮想化方針を見直し、昨年秋に発表した当初の方針を維持することを決めた」とeWEEKに語った。
これは、今後もVistaのハイエンド版であるBusiness(299ドル)とUltimate(399ドル)だけが仮想化を認められることを意味する。仮想化は基本的に、1台のマシン上で複数のOSを動作させる技術で、これにより柔軟性、効率、可用性を改善することができる。
Microsoftは昨年秋に仮想化方針を発表したとき、ハードウェア仮想化技術がマルウェアによる攻撃を受ける恐れがあるといったセキュリティリスクが仮想化環境に存在することを考えれば、同社では、これが顧客の選択肢とセキュリティとの間の「最適なバランス」であると考えているとしていた。
「仮想化環境でマシンを防護するには深い技術的ノウハウが必要であり、こういったことは一般コンシューマーよりもIT専門家や高度な技術マニアの方がきちんと管理できる可能性が高い。このため、われわれはまずBusinessとUltimateの両SKUだけに仮想化を許可し、Home BasicとHome Premiumには認めないことにした」と同社は当時に説明していた。
SWsoftのメーカーであるParallelで企業コミュニケーションを担当するディレクター、ベン・ルードルフ氏も、Microsoftの今回の決定に批判的な見方をする一人だ。同氏はブログ記事の中で、「この戦略は仮想化などの最先端技術を採用しようとするユーザーの動きを押しとどめるものだ」と指摘している。
「こういったユーザーはVistaにアップグレードしなくなるだろう。つまりMicrosoftは、Windows PCではアップグレード顧客を、またMacやLinuxのユーザーについては新規顧客を獲得する機会を実質的に失うことになるのだ」(同氏)
また、AppleのMacは現在、WindowsベースのPCと同じIntelプロセッサを搭載しているので、Macユーザーは仮想化技術を利用してMac OS X OSとWindowsを切り替えて使うことができる。
ルードルフ氏によると、今回の方針は、通常はWindowsを使うことがないMacユーザーの市場全体に対してVistaへの門戸を実質的に閉ざすものであり、また、世界各国の企業がVistaにアップグレードするのも難しくなるという。
しかし、こういったユーザーの数はMicrosoftにとっては魅力がないというだけのことかもしれない。それは、今回の方針転換の前にVistaのスポークスマンが「広範なWindowsの顧客ベースと比較すれば、コンシューマー市場での仮想化はまだニッチなビジネス機会に過ぎない」とeWEEKに語っていたことからも推察される。
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