スケジュール優先で抜け落ちた仮想化機能とその後

Windows Server Virtualizationのリリーススケジュールを守るため、一部の機能の提供が見送られることになった。

» 2007年06月26日 23時00分 公開
[Michael Cherry,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Windows Server 2008(旧コード名:Longhorn)のリリースから180日以内というリリーススケジュールを厳守するため、Windows Server Virtualizationサービス(コード名:Viridian)の初期リリースには、幾つかの主要機能が搭載されないことになった。これらの機能は今後1年以上も提供されないことになるため、競合する仮想化テクノロジーへのユーザーの乗り換えが起こらないとも限らない。また、仮想化のパフォーマンスを向上する新しいプロセッサ機能に対応するVirtual Server 2005 R2 SP1の提供も、2007年第2四半期に延期された

 この変更は、2007 Windows Hardware Engineering Conference(WinHEC)開始直前に投稿されたブログ記事の中で、言葉を慎重に選んで公表されている。投稿のタイミングからすると、Microsoftは悪いニュースを先に公表することで、ほかのWinHECでの発表に対する影響を避けようとしたのだろう。

Viridian初期リリースで一部機能を見送り

 仮想化テクノロジーは、同一デバイス上で同時に複数の異なるOSの実行を可能にする技術だ。各OSは、同じ物理コンピュータ上の専用のバーチャルマシン(VM:ソフトウェアにより作り出されたコンピュータ)内で稼働する。2004年にMicrosoftは、仮想化技術を独立した製品ではなく、Windows OSの機能として統合することを決定した。またMicrosoftは、Virtual PCおよびVirtual Serverを開発したConnectixの買収によりかなりの知識や技術を手に入れたことは確かだが、Connectixから受け継いだVirtual Serverのアーキテクチャやコードベースは採用せず、Windowsに搭載する仮想化サービスをゼロから開発することを決めている。

 新しいWindowsの仮想化アーキテクチャの中核となるのは、Windows Hyperviserと呼ばれるコンポーネントである。これは、ホストOSの最下位レイヤーで稼働し、VM内で稼働する複数のゲストOSのハードウェアアクセスの抽象化や制御を行う。

 新しいアーキテクチャと古いVirtual ServerのVMとの下位互換性は確保されるため、既存のバーチャルハードディスク(VHD)ファイルの新しいLonghorn Serverへの移行は、比較的簡単に実行できるだろう。

実装が見送られた機能

 Windows Serverの仮想化機能のうち、初期リリースでの搭載が見送られた機能は次のとおりである。

  • ライブマイグレーション:クライアントへのサービスに影響を与えることなく、稼働中のVMをサーバ間で移行できるとして話題にされていた重要な機能。
  • 仮想リソースのホットアド:ストレージ、ネットワークカード、メモリ、プロセッサなどのハードウェアを、稼働中のシステムに追加できる機能。
  • 16を超えるコアまたは論理プロセッサのサポート:現在は16を超えるCPUコアを搭載しているシステムはほとんどないが、Viridianがリリースされる頃には普及も進んでいるだろう。このサポートが提供されないと、16を超えるコアが搭載されたハードウェアで仮想化サービスを使用する場合に、膨大なサーバ負荷を処理する能力に影響が出る可能性がある。

Virtual Server 2005 R2 SP1のリリースを延期

 Microsoftは、現行のVirtual Server 2005 R2製品のSP1のリリースも延期している。SP1は1年前からβ期間に入っているが、最終リリースの予定が変更され、現在では2007年の第2四半期末までとなった。SP1では、バグフィックスのほか、AMD PacificaやIntel VTハードウェアがサポートされる予定で、Windows以外のゲストOSのパフォーマンスが大幅に向上するだろう。またSP1では、ゲストOSを実行した状態で、ホストOSからVHDのスナップショットを取得でき、VMのバックアップとロールバックが容易になる。Windows Server 2008はSP1の要件ではないが、SP1ではホストOSとしてもゲストOSとしてもサポートされる。

 Virtual ServerとViridianの両方に対応する管理製品System Center Virtual Machine Manager 2008 R2は、ユーザーがデプロイと移行をテストできるViridianのパブリックβのリリースから60〜90日の間にリリースされる予定だ。

機能削減でリリースは予定どおりに?

 Microsoftは、機能を削減および延期したことでViridianを予定通り出荷できると考えているようだ。

仮想化スケジュール Microsoftの仮想化製品のスケジュール
幾つかの主要な仮想化機能の搭載が、将来のリリースに先送りされることになった。具体的にどのリリースに搭載されるかについては発表されていない。Microsoftでは現在、Windows Server 2008(旧コード名:Longhorn)のリリースに合わせて、2007年末までに新しいWindows Server 2008の仮想化テクノロジ(コード名:Viridian)の最初のパブリックβのリリースを予定している。一部機能の提供を先送りすることで、当初の公約どおり、Windows Server 2008のリリースから180日以内にViridianを製造工程に向けてリリースできるだろう。Microsoftの現行の仮想化テクノロジは、Virtual Server 2005 R2 SP1にアップデートされる。SP1では、修正プログラムのほか、仮想化対応プロセッサのサポートなど新機能も幾つか追加される予定だ。リリース時期は、当初の2007年第1四半期から変更され、現在は2007年半ばの予定である。また、Virtual Machine ManagerもR2バージョンにアップデートされ、Viridianの管理に必要なツールを搭載する予定である。

 Viridianのβ版では、ユーザーやパートナーが、Windows Server 2008の最終バージョンを使って、Windows Server仮想化テクノロジーのリリース前バージョンの負荷テストやアプリケーションテストを実施できる。ただし、フィードバックの収集と、報告されたバグの修正にかかる時間を考えると、リリース候補版からRTM(製造工程向けリリース)までの期間が6カ月というのは、かなり楽観的なスケジュールであることに変わりはない。また、Viridianが完成した時点でこれがどのような形態でリリースされるか(例えば、サービスパックや機能パックとしてリリースされるか、そのほかのパッケージのコンポーネントとしてリリースされるか)についても発表されていない。また、今回見送られた機能が提供される時期についても、「Windows Server Virtualizationの将来のリリース」に搭載されるとされているのみで、詳細は発表されていない。このリリースはおそらく2009年より前にはならないだろう。

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仮想化 | Windows Server 2008 | WinHEC


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