セールスフォース、第2四半期は予測を上回る好業績

セールスフォースの2008年第2四半期は、顧客数が過去最高となるなど、好業績を記録した。

» 2007年08月17日 15時36分 公開
[Renee Boucher Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 米Salesforce.comは8月15日、同社の顧客数が過去最高となり、2008年第2四半期における1株当たり総収入および利益が事前予測値を上回ったことを発表した。

 事前発表でも示唆されていた通り、Salesforce.comは大企業顧客の数を大幅に増やし、中小企業が主体となっていた同社の顧客層に、より国際的で財政力のある企業を加えるという目標を達成しようとしている。

 Salesforce.comの会長兼最高経営責任者(CEO)のマーク・ベニオフ氏が収支報告を行い、同四半期に新しく獲得した顧客に関する詳細を明らかにした。同氏によると、Salesforce.comの現在の顧客層は、契約数3万口以上の顧客が2社、2万口以上が4社、1万口以上が5社、1000口以上が68社になっているという。6か月前と比べ、1000口以上の契約数は40%も上昇している。

 ベニオフ氏は、「契約数もそうだが、顧客企業数の爆発的な増加が非常に目立っている」と述べ、同社にとっては過去最高の3万5000口を契約した顧客がいることを公表した。この企業顧客については、9月中に詳しく説明するという。

 とはいえ、第2四半期には、マーケティング部門の統廃合や営業部員の異動、新規雇用の削減などが原因となり、販売およびマーケティング部門に多少のほころびが見えたとも、ベニオフ氏は話している。

 7月31日に終了した第2四半期にSalesforce.comが獲得した新規契約企業は、3000社以上におよんだ。顧客数の増加により総収入額も上がり、前年同期比では49%増し、前期比では9%増しの1億7660万ドルに達している。Thomson Financialは、同社の第2四半期売上を1億7400万ドル、もしくは1株当たり利益1セントと予測していた。

 同期における1株当たり利益は、実際には3セントだった。第2四半期の好業績を受けて、同社は2008会計年度の収入予測額を上方修正し、総売上は約7億2700万〜7億3200万ドル、1株当たり利益は8〜10セントになると見積もり直している。突入したばかりの第3四半期の予測に関しては、収入が1億8700万〜1億8900万ドル、1株当たり利益が1〜2セントとSalesforce.comは述べている。

 ベニオフ氏によれば、第2四半期に獲得した最大級の契約の中には、同社が主力製品としているCRM(Customer Relationship Management)ソフトウェアではなく、今年後半に独自の「Apex」開発言語が追加されることになっている、Salesforce.comのプラットフォームにかかわるものがあったという。

 「当社にとっては史上最大規模となる、3万5000口もの契約を結んだ顧客がいた。この契約は、プラットフォームに関するものである」(ベニオフ氏)

 第2四半期は、Apexの限定的なリリースに始まり、マルチテナント型プラットフォームの提供までを成し遂げた四半期だったと、ベニオフ氏は語った。

 「今期に入り、顧客がApexを用いて、当社のサーバ上で独自のコードを動作させられるようになった。そうした環境が整ったことで、顧客はインフラストラクチャではなくイノベーションに注力し、マルチテナント型プラットフォームの構築、共有、運用に集中できるわけだ。SAPやMicrosoft、Oracleなどの製品では、この種のモデルの採用はほぼ不可能である」(ベニオフ氏)

 ソフトウェア界の三巨頭、すなわちSAP、Microsoft、Oracleがホスティング市場に本格参入したあかつきには、Salesforce.comの強力なライバルとなるだろう。SAPは今年末までに、中間市場をターゲットとした「A1S」オンデマンドスイートをリリースする予定だ。

 7月に、Salesforce.comより大幅に安い価格をつけたマルチテナントCRM「Titan」を発表したMicrosoftも、今年後半までは同ソフトウェアの実際の販売は始めない。一方、2005年1月にSiebel Systemsを買収したOracleのオンデマンドCRM事業は、「Siebel On Demand」を取得したことで格段に強化された。もっとも同社は、新たなオンデマンド製品のリリースは、当分の間見合わせるようだ。

 Salesforce.comの大口顧客の1社、ADPがOracleのオンデマンドCRMユーザーになる可能性があるという噂について、アナリストから質問を受けたベニオフ氏は、Oracleが最新の収支報告を行った際にADPの名前を出したことに、同氏自身が戸惑っていると答えた。

 「ADPのCEOとも話したが、この件にはADPも驚いていた」(ベニオフ氏)

 「結局のところ、Oracleが獲得していたのは、ユーザー数が10あまりのSterlingだとかいう小さな企業だった。業績発表に何らかの耳目を引く要素を追加しなければ、と思った結果だったのではないだろうか。いずれにせよ、Oracleのような大企業と十分張り合える力を持っていることを、われわれは誇りに思っている。SAPやMicrosoftの動向にも注目しているが、勝っているのは彼らではない。大げさな宣伝文句をひねり出すだけでなく、本物の技術を持っているなら、もっと活発に取り組みを進めているはずだ」(ベニオフ氏)

 Salesforce.comの未来はきわめて明るいと目されているが、不安材料がまったくないわけではない。ベニオフ氏はこれまでと同じように、同社の「AppExchange」アプリケーション市場から利益を得ていく具体的な方法についての質問は、会見でも実にうまくかわしていた。

 アナリストは、ApexプラットフォームやAppExchangeビジネスといった、CRM以外のサービスの成長が鈍い点が、Salesforce.comの弱点になる可能性があると指摘している。

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