Apexでオンデマンド型SOAの実現目指すSalesforce

Salesforce.comが同社初のデベロッパーカンファレンスにおいて、オンデマンド型アプリケーションの開発を支援する「Salesforce SOA」を発表。

» 2007年05月23日 14時28分 公開
[Renee Boucher Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 Salesforce.comは、「Apex」をテーマとした同社初のデベロッパーカンファレンスにおいて、オンデマンド型アプリケーションの開発を支援する新しいプラットフォーム機能を発表した。Apexは、同社がリリースを予定しているオンデマンド型プログラミング言語。

 カリフォルニア州サンタクララで開催されたカンファレンスで発表された「Salesforce SOA」は、ApexコードでWebサービスを作成するだけでなく(この機能は2003年からSalesforceユーザーに提供されていた)、Webサービスを利用することも可能にする。

 サンフランシスコに本拠を構えるSalesforce.comでデベロッパーマーケティングを担当するアダム・グロス副社長は、「これはシステム間で複数のWebサービスを協調させるための骨組みとなるものだ」と説明する。

 12月にリリースされる予定のプログラミング言語Apexは、マルチテナント型オンデマンドアプリケーションの開発用に設計されており、これらのアプリケーションはApexを1つのサービスとして利用する。つまり、インフラやセットアップコストを伴わない純然たる開発環境なのである。

 Apexコードは、Apexプラットフォーム上に置かれる。Apexプラットフォームは、データを管理するためのモデルやオブジェクトなどのアプリケーション、ユーザー間のコラボレーションを管理するためのワークフローエンジン、フォームを扱うユーザーインタフェースモデル、プログラム的アクセスやほかのアプリケーションとの連携を実現するためのSalesforce APIなどを作成するためのツールセットである。

 Salesforce SOAは基本的に、Apexコード全体の一部を構成する機能であり、Webサービスを利用して外部のアプリケーションまたはシステムからワークフローやプロセスを取り込む役割を果たす。これにより、課金、在庫管理、受注などのシステムが提供するWebサービスに連携したアプリケーションを容易に開発することができる。

 それだけでなく、開発者は社内のOracle FinancialsやSAP Order ManagementなどからWebサービスを呼び出し、それらをFedExやHoovers、Yahoo!などの社外のWebサービスに渡すこともできる。

 Salesforce.comのパートナーであるAppirio(本社:サンフランシスコ)の創業者で同社の最高マーケティング責任者を務めるナリンダー・シン氏は、ユーザーが自社のビジネスに合わせてSalesforceのデータでGoogleのホームページをカスタマイズできるようにするために、Salesforce SOAを利用している。

 GoogleとSalesforceは既に、ユーザーが自分のホームページをカスタマイズする機能を提供しているが、シン氏が行ったのは、Salesforceの内部に追加コンポーネントを作成することだった。これにより、管理者は世界中のどこからでも、ログインしてガジェットのパラメータを変更し、情報をリアルタイムで表示させることができるという。

 「これはSalesforce SOAが提供する基盤技術によって可能になった。Salesforce SOAのおかげで、リアルタイムで更新したり、世界のどこからでも大幅なカスタマイズを行えるようになった」とシン氏は話す。

 「SOAを導入する前は、リアルタイム機能を実装するのが非常に難しく、さまざまな障害に対処しなければならなかった。本格的なカスタマイズ機能も断念せざるを得なかった。すっきりとしたユーザーインタフェースにならかったからだ。しかし今では、リアルタイム更新とSalesforceとの双方向通信が可能になった」(同氏)

 Salesforceに依存しているパートナーなどのデベロッパー各社はApexモデルに興味を示しているが、彼らの多くは価格やライセンス方式などの詳細が明らかにされるのを待っているようだ。

 Salesforceのマーク・ベニオフCEOは、先週行われた2008年1〜3月期決算発表のテレカンファレンスで、AppExchangeの収益化計画に関するアナリストの質問を巧みにかわした。AppExchangeはアプリケーションの取引市場であり、Apexで開発したアプリケーションもここで宣伝・販売できるようになる。

 「AppExchangeは戦略的構想であり、Apexプラットフォームと全面的な連携を実現した。今日、AppExchangeアプリケーションは多くの顧客によって導入され、多くのISV(独立系ソフトウェアベンダー)によって利用されている。当社のパートナーである約250社のISVの約半数がAppStore(AppExchangeの営利化/マーケティング部門)に登録している。われわれは楽観主義者だが、この取り組みはまだ始まったばかりだ」とベニオフ氏は語った。

 Apexでも収益化問題が残されている。SalesforceのパートナーであるForceAmp(本社:コロラド州デンバー)の幹部、ビル・エマーソン氏は3月に米eWEEKの取材で、Apexを中心に展開するビジネスモデルを模索中だと話していた。

 「われわれはApexに見られるイノベーションと技術が気に入った。Apexのβテストにも参加している。しかし、この技術がビジネスとして成立するかどうか判断するための材料が必要だ。1ユーザー当たりのインフラコストや、われわれがこの技術の上に何を付加して顧客に販売できるのか、といったことだ。最大のポイントはインフラのコストだろう」とエマーソン氏は語る。

 「われわれが1ユーザーに付き月額65ドルで何かを販売するとすれば、Salesforceには幾ら支払わなければならないのだろうか。60ドル支払わなければならないのであれば、ビジネスとして成立しない」(同氏)

 SalesforceがApexの周りに巨大なデベロッパー/パートナーベースを構築するのに成功すれば、同社はオンデマンドCRM(カスタマーリレーションシップ管理)企業から、オンデマンド開発分野における有力なプラットフォーム企業へと成長するだろう。そうなれば、Salesforceは迫り来るMicrosoft、Oracle、SAPなどの競合企業を大きく引き離すポジションを確保することになりそうだ(関連記事)

 ApexのSalesforce SOA機能は、8月に開発者向けにプレビューが行われる予定だ。

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