Linden Labの進める“Second Life”オープンソース化への道Trend Insight(1/2 ページ)

2007年1月、Second Lifeを運営するLinden LabからSecond LifeのビュワーがGPL 2.0ライセンスの適用下でリリースされた。業界リーダーの位置を占めている段階でのこの判断の裏には、CEOのある狙いがあった。

» 2007年09月14日 13時23分 公開
[Tina-Gasperson,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 本年度初頭Linden Labからは、その運営するオンラインバーチャルコミュニティーSecond Life用のビュワーがGPL 2.0ライセンスの適用下でリリースされたが(関連記事参照)、「派生著作物にはGPLライセンスを適用しなければならない」という負担から開発者を解放するため、特定のオープンソースライセンスについての“FLOSS例外規定”と呼ばれる条項が付加されている。こうした例外規定をLindenが付加したのは、Second Lifeビュワーのコードをベースにした新規アプリケーション開発を奨励するためだとのことである。「弊社Linden Labによる単独開発に固執しない方が、Second Lifeの持つ可能性を伸ばせるはずだと気づいたためです」と、Lindenのオープンソース開発の責任者を務めるロブ・ランフィアー氏は語る。「わたしたちが必要としたのは、より大きく成長させるために、全世界の開発者の協力を募る方法を確立することでした」

 ランフィアー氏がLinden Labに参加したのは、既にオープンソース化構想が立ち上げられていた2006年9月のことである。そのきっかけとなったのは同社CEOを務めるフィリップ・ローズデール氏であり、同氏は以前にReal NetworksのCTOを務めていたこともあって、Second Lifeビュワーのオープンソース化だけでなく、高度に複雑化したプロジェクトの運営そのものについてもオープンソースの専門家による指導が必要であることにすぐに気づいたのだそうだ。そしてローズデール氏が目をつけたのが、Real用のHelixクライアントのオープンソース化を任されていたランフィアー氏という訳である。

 「(当時のLindenは)ソースコードの公開とサービスの提供を同時に進める作業の困難さを甘く見すぎており、ちょっとした信用問題になりかねない事態でした」とランフィアー氏は語る。「わたしは以前にReal Networksで9年間働いてHelixコミュニティー構想の技術面に関する責任者を務めていたので、こうした(オープンソース化)問題は経験済みの事柄だった訳です。この種の仕事は誰でもできるという職種ではないので、そのための人材を雇おうにも、必要なスキルを有した外部の人間が限られすぎていたのですね」

 ランフィアー氏には、ビュワーのコードをコミュニティーに公開することで得られるメリットについて確固たる見通しがあった。「今で言うところのインターネット的なテクノロジーを生み出せるチャンスを過去に得ていた、AOL、Prodigy、Compuserveといった企業の事例を見ると分かるように、これらはいずれも各自のネットワークにアクセスする顧客数をいかに確保するかでしのぎを削っていました。こうした企業が当時提供していたサービスは、今日のインターネットと同等の存在となっていた可能性を秘めていたはずです。それを妨げたのは、オープン化する方法を確立すべき重要な時期において、利益の追求に没頭していたからに他なりません。その結果皮肉なことに、これらの企業は、CiscoやGoogleといった現在のインターネット界の巨人と呼ばれている存在になりおおせる機会を逃した訳です。自らの牙城を守ることに固執しすぎたのが敗因だといえますね」

 こうした教訓を踏まえたランフィアー氏がLindenに対して求めているのは、Second Lifeのオープン化を可能な限り進めることで、それも単なる一時の流行に流されるのではなく、その作業を徹底化しておくことである。「個々のレベルで顧客の囲い込みを狙うことも選択肢の1つかもしれませんが、それよりもほかのサービスを生み出す土台となるエコシステムを構築した方が、最終的には得られるものが大きいはずです。わたしが興味深く感じているのは、独自の主力製品を確保しているにもかかわらず、業界リーダーの位置を占めている段階でそのオープンソース化を進めようとしているLindenの判断は、ほかの同種企業には見られない現象だという点です。通常こうした行為は、かつての権勢を失った企業が投げ売り的に放出するか、夢よ再び的な悪あがきとして行うのが常でした。いずれにせよ、今から5から10年もすればこの種のサービスを賄う有力なオープンソース系ソフトウェアが出現するであろうと予測されていますから、それならばいっそのこと今のうちにオープンソース化してしまえば、多くの人間が無用な労力に時間を費やす必要がなくなるはずです」

 ランフィアー氏の説明するところでは、この1月にアナウンスされたオープンソース化プロジェクトに関しては、各種の障害を克服しなければならないそうだ。「まずは、幾つかの整理作業が必要です」と同氏は語る。「実際、プロプライエタリ系ソフトウェアをオープンソース化する際には、常にクリーンアップの問題がつきものです。例えばjpeg 2000のレンダリングエンジンはサードパーティーからライセンス供与されたものが使われていたので、これをうまいこと分離しなければなりませんでした」この件についてランフィアー氏が行った措置は、レンダリングモジュール用のコードを記述してオープンソース系の代替品と置き換えられるようにしたことである。「Linden Labの構築したコードはすべてオープンソース化されていますが、ビュワーのコードの中にはいまだ3から4個のサードパーティー製プロプライエタリ系ライブラリが残留しています。現状ではその分離作業を進めているところです」

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