北陸電力はkintoneを全社導入し、2年間で約750のアプリを現場主導で開発、年間約3万時間の業務削減効果を生んだ。これまで紙の書類の記載内容を手入力してきた同社は、なぜkintoneを選び、どのように全社に浸透させたのか。
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大手電力会社の北陸電力は、北陸3県を中心に電気やガスなどのエネルギー事業を展開している。同社は中期経営計画でDX(デジタルトランスフォーメーション)を経営を支える取り組みと位置付け、推進してきた。DXを進める上で同社は、デジタル活用ニーズの高まりへの対応と、現場の改善アイデアを迅速に形にする体制の整備に課題を感じていた。
こうした課題を解消すべく、同社が注目したのがサイボウズのノーコードツール「kintone」だった。
情報システム部門を介さずに従業員がシステムを構築することで、業務改善のスピードを高める狙いとも合致した。
同社はkintoneの導入検討段階で、kintoneの販売パートナーでDX支援を手掛けるJBCCの協力の下、社内勉強会を実施した。100人以上が参加した勉強会で、アプリ作成のアイデアが50個集まったという。
これらのアイデアを基にkintoneによる効率化効果を試算し、全社導入を決めて短期間で社内に展開した。kintone活用に理解を示すキーマンが各部署やグループ会社にいて協力を得られたことが、導入がスムーズに進んだ要因の一つだと同社は分析する。
北陸電力はkintoneの導入に当たり、ワークフローを起点にする方針を立てた。毎年1回全従業員が提出する申請書類の提出システムを構築した。誰もが一度はkintoneに触れる機会を作り、市民開発への発展を狙う意図があった。部門ごとにバラバラだった承認フローが、kintoneの導入により全社で共通化されるという効果も生まれた。
この結果、部署異動後も共通のプロセスの下で業務を進められるようになり、属人化した暗黙知に左右されない、スピード感のある事業運営につながったという。
北陸電力本社では750のアプリが現場主導で作成され、年間約3万時間の業務削減が実現した。社内アンケートでは、従業員の約5人に1人が「アプリ作成を経験した」と回答。「自分で簡単に作れた」「業務が効率化できた」といった肯定的な意見が全体の約7割を占めたという。
グループ会社への展開はどうか。同社のグループ会社には専任のシステム担当者が在籍していない会社もあるため、グループの共通業務をデジタル化するアプリを本社が約20個展開した。kintoneが共通基盤となり、改善策が組織や会社をまたいで横展開されるようになった。現在では本社とグループ18社で約7000ユーザーがkintoneを利用している。
大企業でのツール展開の懸念点になりやすい、ガバナンスやセキュリティの面はどうか。同社では、共有スペースで作成したアプリをDX部門に申請し、社内ルールに準拠したものを本番環境に移行している。
こうした展開を後押ししたのが、北陸電力本社のDX部門による教育と、システム開発を担うグループ会社である北電情報システムサービスによる支援だった。
本社のDX部門は「まず使ってもらわなければ、良さは伝わらない」と考え、2025年度にグループ全体で100回を超える教育を実施し、延べ1200人が参加した。
2025年12月には、「北陸電力グループDXオープンデイ2025」というイベントを開催した。グループ各社から約350人が参加し、各職場におけるアプリ活用事例が紹介された。
北電情報システムサービスは問合せフォームやFAQの共有、研修の申し込みフォームや過去の教育動画のアーカイブ公開などを担当している。各社が利用する共通アプリを展開するポータルサイトの構築や運用も担っている。問い合わせ対応や教育の窓口を一本化したことで、グループ会社の利用者がkintoneを使いやすい環境が整った。
北陸電力によると、グループ展開の成果が特に表れたのが通勤や住居、出張に関わる申請系のアプリだという。
従来は「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」で作成した書類を紙に印刷し、グループ共通業務を管理する北電パートナーサービスに社内郵便で送付し、同社の承認後に基幹システムに手入力していた。
kintoneの「ゲストスペース」(複数の組織間で情報を共有できる機能)を使うことで、申請から承認までオンラインで完結するようになった。申請者と承認者が同じ画面を見ながら確認できる点や、申請者自身が過去の申請内容を確認可能な点を評価する声が上がっているという。
kintoneはバックオフィス業務だけでなく、電力会社特有の業務にも利用されている。火力発電所の特定設備における部品周期を管理するアプリでは、過去の調達経緯をシステム化した。必要な情報に迅速にアクセスできるようになった。
今後、北陸電力は、DX教育による従業員のリテラシー向上と、kintoneを利用した市民開発の取り組みをさらに進める方針だ。水平展開が可能な共通アプリの整備や教育支援、成功事例の横展開や発表の場の整備も継続し、デジタルに苦手意識を持つ従業員を含めた全社的なスキルの底上げに注力するとしている。kintoneのデータベースを活用したAI活用なども視野に入れ、生産性向上につなげたいとしている。
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