ホクレンは、「アナログな事務処理」の解消によって、農薬請負散布業務における年間管理面積を3倍に拡大した。修正するたびに複製ファイルが生まれ、「どれが最新版か分からなくなる」といった混乱から、同組織はどのように脱出したのか。
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将来的に労働力人口が減少する中で、不足する労働力をいかに補うかは喫緊の課題だ。ホクレン農業協同組合連合会(以下、ホクレン)は、生産者の負担軽減や労働力不足対策のためにドローンによる農薬請負散布業務に2021年度から取り組んできた。
同事業の拡大を阻む要因として、当初は外部事業者の処理能力の限界が疑われていたが、実は課題があったのは足元の「アナログな事務処理」だったという。
ホクレンは、JAグループ北海道で経済事業を担う組織だ。2024年度の取扱高は1兆6800億円に達する。全国の消費者に農畜産物を供給する販売事業や、生産者の営農活動を支える購買事業・営農支援を主な業務とする。
ホクレンの近江健太郎氏(資材生活事業本部 肥料農薬部 農薬課 課長)は「農薬請負散布事業のボトルネックは農薬請負散布業者のキャパシティーにあると当初は考えていたが、真の課題は自分たちの事務処理にあった」と振り返る。
ドローンによる農薬請負散布業務ではホクレンとJA、散布請負業者の三者間で情報をやり取りしている。「Microsoft Excel」で共有していた依頼内容について、情報を修正するたびにファイルが複製されて最新版が分からなくなるといった混乱が生じていた。修正のたびに電話でのやりとりが繰り返され、古いフォーマットが混在することによる集計不備も頻発していた。散布内容と請求書の突合作業に最長で6時間かかることもあった。
農薬請負散布事業を開始した初年度(2021年度)の実績は700haだった。ホクレンが掲げる長期ビジョン「Vision2030」で目標とされる1万haの達成は「到底無理だと途方に暮れていた」(近江氏)という。
農薬請負散布業務における事務作業の効率化を図るため、農薬課の若手職員である戸部剛太氏と小川夕希奈氏は、外部組織と共同編集ができるツールを求めて岸田直也氏(資材生活事業本部 資材生活企画課DX推進担当)に相談した。
ホクレンでは「Vision2030」達成に向けてデジタル技術を活用した業務改革を進めており、2021年にサイボウズのノーコード開発ツール「kintone」(キントーン)を導入。JAや取引先をはじめとする外部組織との連携が必要な業務を中心に利用してきた。
岸田氏の提案を受け、ノーコード開発が可能であることと、外部との連携機能が決め手となり、農薬請負散布業務の効率化にkintoneを利用することになった。高度なIT知識を持たない状態でアプリ開発に着手することとなった戸部氏と小川氏は、サイボウズが提供するコンテンツでの学習や、ホクレンのデジタル推進課へのヒアリングを積み重ねた。
こうしてホクレンとJA、散布請負業者の3組織間で利用する「農薬請負散布アプリ」が完成した。
外部組織と共同編集できるゲストスペース機能を活用したことで、発注から報告までをkintoneで一元管理できる仕組みが整った。圃場マップの登録や農薬請負散布面積の自動計算、外部組織への項目ごとの閲覧・編集制限といった機能も実装した。
新しく開発した「請求書アプリ」と連携させることで、散布内容と請求書の情報突合にかかる時間が15分に短縮された。
以前は年間1000haだった管理規模は3000ha超に拡大した。かつては達成を悲観していた、「Vision2030」が掲げる1万haを目指す土台が整った。
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