Linden Labの進める“Second Life”オープンソース化への道Trend Insight(2/2 ページ)

» 2007年09月14日 13時23分 公開
[Tina-Gasperson,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
前のページへ 1|2       

ランフィアー氏の説明では、Second Lifeビュワーは当初からオープンソース化を想定して開発が行われたそうだ。「このビュワーについては、端からセキュリティというものを期待していませんでした」と同氏は語る。つまりこれは、そのすべてとまでは行かないにしろ、トランザクションの大半はサーバサイドで処理されるはずであり、セキュリティに対する監視はそこで十分に行えるはずだという発想である。「逆に、多くの3Dゲームなどはクライアントサイドで実行するものなので、クライアント側の不正行為を防止するためのさまざまな方策が講じられています。そうした性質上、こうした企業がオープンソース化に踏み切るのはかなり難しいでしょう。それに対してSecond Lifeはゲームではないので、Lindenドルに関する処理もサーバサイドで行うようにしています。そのほか、開発者がオリジナルの設計から逸脱したものを作ってしまったカ所が幾つかあり、クライアントを過度に信用する構造になっている部分ができていました。そうした部分については、オープンソース化の前に見直して、必要なパッチを当てるという作業も行いましたね」

 そのほかの運用上の問題としては、ビュワーコードのダウンロードサイトに多数の開発者が大挙してアクセスした場合を想定して、予想されるサーバ負荷をさばけるだけのインフラストラクチャを整備しておくという課題も持ち上がっていた。「tarボール化したソースのダウンロード用サイトだけではなく、バグリポートやwiki用のサイトなども用意する必要があり、細かいことを挙げて至らきりがありません」とランフィアー氏は語る。

 そして解決すべき問題は、技術的な課題だけではなかった。「こうした活動の裏づけとなる、具体的なビジネス戦略を打ち出す必要がありました」とランフィアー氏は語る。「この方針を採るのが何故正しいのかを説明し、それを全員に納得させ、進むべき正しい道を見極めるというのは、非常に重要なことです」 ランフィアー氏が特に留意したのは、開発チームによるオープンソース化作業を可能な限りスムースに進行させることであった。「特に神経を使ったのは、極力混乱をもたらさないようにしながら作業を進展させることでした。実際の作業はかなりのハードワークとなりましたが、人海戦術的な進め方はしないことを取り決めていました。またこの種のプロジェクトでは避けられないことですが、開発作業が進行する際にもいろいろと別件の出来事が持ち上がってきましたね」

 LindenのSecond Lifeビュワーのようなオープンソースプロジェクトを指揮するITディレクターにとって重要だとランフィアー氏が語っているのは、プロジェクトを取り巻く文化的な側面を理解することである。「ソースコードを公開する仕組みを作ればそれで終わりというものではありません。最初に行うべき手順の1つは、品質保証の態勢を確立しておくことでしょう。インフラストラクチャの整備にあせって手を出すと、バージョン管理に破たんを来したり、ツールが氾濫する結果になりかねません。こうしたプロセスは徐々に進めていくのが肝要です」

 またバグに関するデータベースの公開をためらってもいけないとされている。「一概に企業というのは、こうした情報をほかに漏らしたがらないものです。ソースコードの公開とは、それに付随するバグの情報を公開することでもあり、関係する事柄をメーリングリストなどの公開の場で討論をすることにもなるという事実が、プロプライエタリ系ソフトウェア開発に慣れきった企業にはピンと来ないのでしょう。問題の性質によっては、こうした要件の方がソースコードそのものより重要となる場合もあるのですが」

 オープンソース化を検討している企業が留意すべきそのほかの要件としては、コミュニティーの扱い方を決して誤ってはいけないということも挙げられる。「計画には、そうした意識改革の必要性も盛り込んでおく必要があります。この(Lindenにおける)作業が本格的に進み出すテンポの速さにはわたし自身が圧倒されましたが、それが行えた理由の1つは、オープンソース化に先がけて、必要となる一部の開発者との間で良好な関係を築いておけたからです。例えばSecond Life関連のプロジェクトの1つに、定められていた規約を厳密に順守していないところがでてきました。その際の選択肢としては、厳罰をもって接してそのプロジェクト自体を御破算にすることも可能でしたが、開発チーム側の認識としては、そんなことをしても不毛なモグラたたきを繰り返すだけであり、それよりもビュワーのオープンソース化を最優先すべきだという共通意識が形成されていました。今回の件については、問題は規約の方にあったとも言えるでしょう。結局、こうした外部の人々とうまくつきあうことができたおかげで、コードの公開時にはわたしたちを助けてくれる1つのオープンソースコミュニティーが形成されていましたね」

Tina Gaspersonは1998年よりフリーランスのライターとして活動中で、主要な業界紙にビジネスおよびテクノロジー関連の記事を執筆している。


前のページへ 1|2       

Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.

注目のテーマ