ソニー、AWSのAI基盤で推論処理300倍増へ ファンエンゲージメントはどう変わる?AIニュースピックアップ

ソニーグループはAWSの生成AIやエージェント型AIを活用し、社内のエンタープライズAI基盤強化と、ファンとクリエイターをつなぐエンゲージメント基盤の構築を進めている。

» 2025年12月05日 07時00分 公開
[後藤大地ITmedia]

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 Amazon Web Services(AWS)は2025年12月2日(現地時間)、ソニーグループが同社のAIサービスを活用し、社内のエンタープライズAI基盤やファンとクリエイターの関係性を高めるエンゲージメント基盤を構築していると発表した。この取り組みにより、エレクトロニクスやゲーム、音楽、映画、アニメといった多様な事業領域において、ファンとコンテンツ制作者の関係性をより深める狙いがある。

全社的な業務効率化とAI活用の加速

 AWSの説明によると、ソニーグループは生成AIやエージェント型AIを含む幅広いAIサービスを利用し、全社的な業務効率化とAI活用を推進している。ソニーが掲げる「感動(Kando)」の提供を、グローバル規模で支える基盤として位置付けられている。

 社内利用の面ではソニーのエンタープライズAI基盤にAWSの「Amazon Bedrock AgentCore」(以下、AgentCore)が採用されている。AgentCoreはAIエージェントの構築や展開、管理を支援し、企業のセキュリティや可観測性、拡張性を備えている。この基盤は現在、1日当たり約15万件の推論処理を行っており、今後数年で処理量が300倍に増加する見込みだ。従業員は文書作成や問い合わせ対応、需要予測、不正検知、発想支援、新規アイデア創出などの用途でAIを利用している。

 AIモデル開発ではAWSが提供する「Amazon Nova Forge」プログラムも利用されている。初期段階の成果として、レビューや評価プロセスを支援するAIエージェントが、最大100倍の効率化を実現できる可能性が示されている。

 ソニーグループの事業戦略における中心的な要素と位置付けられているのが、ソニーエンゲージメントプラットフォームだ。データ基盤「Sony Data Ocean」は、500種類を超えるデータセットから最大760TBのデータを処理する。「Amazon SageMaker」などのAWSサービスで構築されており、AIを用いた分析結果を通じて、共通の関心を持つファン同士の関係性を高め、クリエイターに視聴動向の洞察を提供する役割を担う。

ソニーグループ 小寺剛氏は「AWS re:Invent 2025」にも登壇した(出典:編集部撮影)

 エンゲージメント基盤自体は、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが運営する「PlayStation」のオンラインサービスで培った基盤機能を活用する。アカウント管理や決済、データ処理、セキュリティなどの機能を拡張し、ゲーム以外のエンターテインメント分野にも展開することで、業務運営や顧客体験の効率化を図るとしている。

 ソニーグループ執行役最高デジタル責任者(CDO)の小寺剛氏は、データとAIを活用することでファンとクリエイターの新たな結び付きを生み出せると述べ、自社の創造性と技術力を通じた価値提供の方針を示している。またAWS最高経営責任者(CEO)のマット・ガーマン氏は、約5万7000人の従業員がAIエージェントを活用している点に触れ、この協業がソニーの事業変革を支えているとの認識を示している。

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