パートナーにSaaSの難問を突き付けるSAPの「Business ByDesign」(2/2 ページ)

» 2007年10月01日 17時37分 公開
[Renee Boucher Ferguson,eWEEK]
eWEEK
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 Enterprise Applications Consultingのアナリスト、ジョシュア・グリーンバウム氏は、「最大のチャレンジは、これまで企業がチャネルに求めなかったようなことをSAPが要求しようとしていることだ」と指摘する。「彼らは、ビジネスソリューションをビジネスパーソンに販売するのに必要な高度な専門知識をパートナーに求めている。その一方で、パートナーは薄利多売方式を受け入れなければならないのだ。Business ByDesignは、これまで多くのパートナーにとって主要な収入源であった導入、統合、カスタマイズのコストを不要にするものだ」。

 グリーンバウム氏によると、高品質サービスを多売方式で提供しているパートナーの例は多くないという。「SAPにとって、十分な数のBusiness ByDesignのパートナーを探し出して育成するのは容易ではないだろう。しかしこの製品は、それを実現する可能性を十分に秘めている」と同氏は話す。

 グリーンバウム氏などのITアナリストが指摘するように、SAPが十分な数のパートナーをどこで見つけるかというのは、2つの側面が絡んだ複雑な問題だ。まず、SAPは既存のチャネルを犠牲にすることのないよう注意する必要がある。既にミッドマーケット向けに販売を行っているAll-in-Oneパートナーは、Business ByDesignのパートナーに適している(その場合、SaaSの構築はパートナーの第2の事業ラインになるだろう)が、これらのパートナーにとって、薄利多売という方式は十分なモチベーションにならないかもしれない。もう1つの問題は(SAPは口に出してはいないが)、同社はMicrosoftの既存のミッドマーケットチャネルからパートナーを獲得しようとする可能性があるということだ。しかしその場合、潜在的なパートナーが板挟みの状態に置かれることになる。

 「SAPは、Microsoftのパートナーが関心を示すことを望んでいる」とグリーンバウム氏は話す。「しかしパートナーは、どちらか一方の側につかなければならない。Microsoftは、SAPの顧客を取り込むというアプローチを展開してきた。SAPの狙いはパートナーに二者択一を迫るものとなるが、パートナーたちはこの競争に巻き込まれるのを望まないだろう」。

 ワシントン州レドモンドに本社を構えるMicrosoftは、自社の「Dynamics」アプリケーションスイートの販売では基本的に間接チャネルモデルに依存しているが、同社が製品提供方式としてSaaSモデルに軸足を移すのに伴い、SAPと同様の問題に直面している――いかにして技術志向のパートナーにビジネスソリューションを販売してもらうかということだ。「これは一夜にして実現できることではない」(グリーンバウム氏)

 Microsoftは9月27日、Dynamicsユーザーに「Premier Support」を提供すると発表した。これは、Dynamicsアプリケーションポートフォリオのサポートにかかわる複雑なプロセスを簡素化するのが狙いだ。Premier Supportパッケージには、技術担当顧客マネジャーを通じた単一の連絡窓口、一元的プロセスによるインフラとアプリケーションに関する専門的アドバイス、オンサイトサポートなどが含まれる。興味深いのは、このサービスをサポートするのはMicrosoft自身であり、同社のパートナーチャネルではないという点だ。これは、進化するアプリケーション市場において、パートナーの役割がどこまで変化するのかという疑問を投げ掛けるものだ。

 「われわれはパートナーと連携し、単一の窓口を通じてPremier Supportを顧客に提供する。これは、パートナーの洞察とベンダーの知識という両者の長所を生かすやり方だ」――Microsoftでワールドワイドエンタープライズサポートサービスを担当するグループマネジャーのアンディ・ビードル氏は、米eWEEKへの電子メールでこのように述べている。「Premier Supportでは、Microsoft Dynamics Supportビジネスで立証されたコラボレーションスキルのベストプラクティスを継続し、プロアクティブなサービスとリアクティブなサービスの両方でMicrosoft Dynamics導入パートナーと連携することができる」。

 AMRのジェイコブソン氏によると、SAPはBusiness ByDesignをホストするだけでなく(少なくとも短期的には、潜在的パートナーはこの部分に食い込む余地はない)、アップグレード/サポート構造を一元化するために、アプリケーション管理サービスもSAPが行うという。

 「これはSAPが製品の販売と管理の間でクローズドループを形成するのが目的だ。SAPは当初、ホスティングを行うが、この機能はいずれパートナーに委託されるものと予想される」と同氏は語る。

 しかしMicrosoftと同様、SAPはチャネル構築戦略をじっくりと開発するだけの資金的ゆとりがある。SAPは、Business ByDesignのリリースで段階的なアプローチを採用している。20社のβユーザーによるテストが既に行われたが、今後、もう20社のβユーザーによるテストが行われ、来年の本格リリースまでにさらに40社のユーザーによるテストが予定されている。SAPはチャネル構築でも段階的アプローチで臨む方針であり、同社の直販チームが先遣部隊として投入され、2008年の大半を費やしてチャネルの構築方法を検討するという。

 「SAPは、チャネルモデルの作成、需要の喚起、需要への対応に直販部隊を利用する方針だ。ある程度の販売ボリュームに達した段階で、SAPは全面的な事業展開に向けてパートナーを本格的に活用し始めることができるだろう」とジェイコブソン氏は調査メモに記している。

 ジェイコブソン氏によると、SAPはパートナーのための販売奨励金を捻出するためにロイヤルティ分割方式を提案しているが、その比率は不明だ。この提案は、従来、SAPのソフトウェアを購入することのなかったユーザー層へのリーチを狙ったものであるため、新たなスキルセットがパートナーチャネルから出現することが期待されるという。これには、電話セールス/マーケティング、レガシー製品用のデータ変換ツールセット、将来的にはホスティングサービスなどが含まれる。

 Business ByDesignが(ソフトウェアの成否を判断する最終的な基準である)クリティカルマスを獲得するのに伴い、Business ByDesignをSAPシステムや非SAPシステムにつなぐ連携作業を主体とする新タイプのパートナーが登場するだろう、とグリーンバウム氏は予測する。

 「当初は、複雑な連携作業を行うパートナーは比較的少ないと思われる。しかしBusiness ByDesignが成功しそうな状況になれば、バックオフィス用の各種の非SAPシステムと連携されるようになるだろう。実質的にはそれが成功の指標になるだろう。つまり、Business ByDesignが企業全体でどれだけ中心的な存在になり、従業員が同製品にどれだけ深くコミットするかということだ」(グリーンバウム氏)

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