最強のビジネスプロセスエンジンは人間のアタマ?「行く年来る年2007」ITmediaエンタープライズ版(1/2 ページ)

神社を守る狛犬「阿」(あ)と「吽」(うん)のように、伝統的な日本企業では、上司と部下、あるいは同僚同士が互いに呼吸を合わせるかのように仕事が進められてきた。まさに2007年、内部統制の整備に追われてきた多くの日本企業の課題がそこにあった。

» 2007年12月27日 08時12分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 2007年は、「ビジネスプロセス管理」(BPM)がにわかに脚光を浴びた年だった。業務をPlan、Do、Check、Act(PDCA)のサイクルで継続的に改善していくBPMは、仕事のやり方をモデリングによって可視化するIDSシェアーの「ARIS」によって1980年代から知られてはいたものの、製造工程における業務改善や品質改善には熱心だった日本企業もすぐに飛びつくことはなかった。

 日本企業の場合、終身雇用制の歴史があったり、上司と部下の関係が家族的なところもあって、いわゆる「あ・うん」の呼吸で仕事が進められるほど、洗練されていることがある。部署ごとに長年培った仕事のやり方があったり、それぞれの経験に任せておけば上手く仕事が回ってきた実績もある。

 しかし、テックバイザージェイピーの栗原潔氏は、「人間の頭が、最強のビジネスプロセスエンジンであることに間違いないが、統制は効かないし、全社的な変化対応力も乏しい」と話す。

 まさに2007年、内部統制の整備に追われてきた多くの日本企業の課題がそこにある。

 2008年1月1日付けでSAPジャパンの会長を退任し、八剱洋一郎社長にCEO職をバトンタッチするロバート・エンスリン氏は、日本のホワイトカラーのビジネスプロセスについて、「習慣化してしまい、大半は古いままだ」と指摘した。

 統制が効かないだけでなく、現場に任されていると、客観的な指標に基づいた継続的な改善も担保されず、いつの間にか錆び付いてしまう。現場が頑張れば何とかなるものだが、マネジャーや経営トップが変わったときの継続性までは望めない。継続的な改善や成長のためには、ビジネスプロセスをシステムとして「マネージ」する必要があるのだ。

 日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)やウィルコムの社長を歴任した八剱氏も、「システムづくりにあたっては、“これがわれわれのやり方だ”“これを捨ててしまえば、われわれではなくなってしまう”という現場のこだわりの凄さを目の当たりにした」と振り返っている。

継続的な業務改善がBPMの本質

 下の表は、栗原氏がさまざまなビジネスプロセス管理の手法を比較したものだ。文書やルールが埋め込まれた伝票で仕事を進めていけば、やや統制は効いてくるが、変化対応力は乏しい。また、SAP ERPのようにベストプラクティスが組み込まれたパッケージアプリケーションを導入すれば、統制はきちんと効かせられるものの、依然として変化対応力は乏しいままだ。

 これらに対して、BPM製品は、統制と俊敏性を併せて実現できると栗原氏は指摘する。システムとして統制を効かせながら、ビジネスプロセスをPDCAのサイクルで回し、KPI(主要業績指標)を基に、継続的に改善していく仕組みがBPMの本質だからだ。

統制の有効性 俊敏性
人間の頭の中 × 局所的に○、全社的には×
紙の文書で管理 ×
プログラム内のロジック ×〜△
BPM
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