ドル安がIT業界に与える影響とは?

IT業界にとってドル安は必ずしも悲観すべきことではないようだ。

» 2008年01月15日 10時59分 公開
[Deb Perelman,eWEEK]
eWEEK

 米ドルの価値の下落が36カ月以上にわたって続いている。ドルが世界経済を支える強固な屋台骨だった時代を懐かしく思い、米国通貨の慢性的な弱体化という状況に慣れていない観測筋は、この状況を悲観視している。

 しかし誰もがドル安の影響を否定的にとらえているわけではない。特にIT業界ではそうだ。

 Deloitte Researchのチーフエコノミストであるカール・スタイトマン氏は米eWEEKの取材で、「ドル安は喜ばしいとも言える。IT業界は巨大な輸出産業であり、ドル安は国際市場における米国のIT製品の競争力を高める」と述べている。

 国際市場でドルが果たす役割の低下を指摘し、ドル価値の下落がIT経済に影響を及ぼすのはずっと先のことであると主張する人もいる。

 Rick Munnarizの上席アナリスト、リック・ムナリズ氏は、「Goldman Sachsによると、米国は景気後退期にあるが、IT関連株は影響を受けていない。年末までには、Webの利用人口で中国が米国を上回るだろう。これが意味するのは、世界はドル安を嘆いていないということだ」と語る。

 しかし、米国通貨の下落の長期的影響は深刻なものになるかもしれない。

 「あらゆる物事には2つの側面がある。極めて単純化して言えば、ドルが下落すれば、この数年間に見られたものとほぼ反対の効果が生じるということだ。人々が中国製品を買ったのは安かったからだ。つまりドル安は、米国が低価格製品の生産国になる可能性があるということだ」とムナリズ氏は話す。

 しかし、こういった状況がすぐに訪れると考えている人は少ない。観測筋によると、価値が低下しようとも、ドルが強い通貨であることに変わりはないという。

 「ドル安が劇的な影響をもたらすとは思わない。確かにドルの価値は低下している。人々が米国の通貨政策を信頼しないという状況が続くかぎり、当分、ドルが強くなることはないだろう」とムナリズ氏は指摘する。

 しかしアナリストらによると、海外で広範に事業を展開しているIT分野の企業は、投資ポートフォリオを大きく分散するのが良いと考えている投資家と共通する部分が多く、IT企業は通貨価値の変動に左右されにくい立場にあるという。

 「大幅に分散した市場ポートフォリオは、短期的には安定をもたらす」と話すのは、Pund-IT Researchのアナリストのチャールズ・キング氏だ。

 「しかしグローバルマーケットは両刃の剣だ。企業が市場のあらゆる部分に進出するのは正しい選択だが、それによって新たなリスクにもさらされることになるのだ」とキング氏は話す。

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