米国の景気減速はIT業界の雇用と賃金に悪影響を及ぼさない――Forresterの予測

市場調査会社のForresterによると、米国経済は減速傾向にあるが、本格的な景気後退に陥る心配はないという。

» 2007年12月19日 05時00分 公開
[Deborah Perelman ,eWEEK]
eWEEK

 米国経済の見通しの悪化を受け、Forrester Researchでは2008年のIT支出の予測を修正した。

 しかし2008年の米国の実質GDP(国民総生産)の成長が年率1〜2%という軟調な時期が2〜3四半期にとどまり、景気後退までには至らないのであれば、IT業界の雇用情勢および賃金水準に悪影響が及ぶことはないと同社はみている。

 Forresterのアナリスト、アンドリュー・バーテルズ氏は米eWEEKの取材に対し、「われわれの予測が正しければ、経済成長がやや鈍化して景気後退のレベルに近づきはするものの、本格的な不景気までには至らないだろう。IT投資は鈍化するが、マイナスにはならない見通しだ」と語った。

 Forresterのアナリストらは、10月の時点でITハードウェア/ソフトウェア投資の伸び率として8%という予測を発表したが、12月10日の週には5%に下方修正した。しかし、これは米国および全世界におけるIT投資の減速に過ぎず、成長軌道から逸脱するものではないとしている。米国のIT投資の伸び率は、2007年の5.4%から2008年の4.6%へとわずかに低下する見込みだという。

 Forresterによると、IT投資の鈍化は2008年の第1〜3四半期に集中する見通しであり、その影響を最も強く受けるのがコンピュータと通信機器の分野だとしている。

 「IT雇用には深刻な影響が及ばないだろう、というのがわれわれの結論だ」とバーテルズ氏は話す。さらに同氏によると、今回のIT投資の減速は2006年末の状況に近いという。前回の投資減速は短期間で終わり、その後、急速に回復した。

 ITプロフェッショナルがIT投資の減速の影響を免れる可能性が高い理由として、短期間であればIT雇用情勢を左右するには至らないことが挙げられている。

 「前回のIT投資の減速は深刻なものでなく、期間的にも短かったため、CIO(最高情報責任者)が人員削減を決定するには至らなかった。今回も1年前と比べて1%にも満たない減少幅であれば、IT雇用に影響を与えることはないだろう」とバーテルズ氏は話す。

 IT業界の賃金水準も基本的には安泰であるようだ。経済状況が比較的安定しているとみられていた今年の秋の段階で、IT業界の賃金が大方決定されたからだ。しかしボーナスが収入の大きな部分を占めるITプロフェッショナルにとっては、財布が少し軽く感じられることになりそうだ。

 「報酬の多くを給与という形ではなくボーナスとして支払う傾向が強まっており、景気が減速して利益が減少したらボーナスは期待できない。ボーナスは報酬の非常に大きな部分を占めるが、昇給に影響が及ぶことはないだろう。現時点では、軽度の昇給凍結という状況しか見られない」(バーテルズ氏)

 Forresterによると、軽度の雇用凍結が実施される可能性もあるという。これは、人員を補充しなければ、そのポジションを廃止しなければならないといったやむを得ない必要性に迫られた場合にのみ新規雇用を行うというもの。しかし、景気の減速が数四半期よりも長期にわたるようなことがあれば、IT雇用にブレーキがかかるとしている。

 「本格的な景気後退が起きれば、採用凍結や人員削減といった悪影響がIT雇用の分野にも及ぶ可能性がある」とバーテルズ氏は話す。

 しかし、2008年に本格的な景気後退が起きたとしても、ITプロフェッショナルへの影響は2001〜2003年の景気後退のときほどのレベルにはならないようだ。

 「2001〜2003年に起きたのは、ほとんど前例がないことだ。それまで60年間、IT投資があれほどひどく落ち込んだことはなかった」とバーテルズ氏は指摘する。「現在われわれが目にしているのは、どちらかと言えば典型的な状況だ――投資が伸び悩み、雇用は減速しながらも減少してはいない。2000年はITブーム最後の年であり、IT投資は経済成長率の2倍のペースで伸びた。当時、IT投資をかつてないほど高いレベルに押し上げた要因はたくさんある」。

 しかし同氏によると、IT部門は必ずしも縮小していない。ただ、拡大していないだけだという。

 「成長鈍化が2四半期よりも長期に及ぶ本格的な景気後退が起きなければ、IT雇用の減少を引き起こすほど深刻な状況にはならないだろう」(同氏)

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