「紙」の次を担うスペシャリストのアイデア日本のインターネット企業 変革の旗手たち【番外編】

日本を代表する新聞社で、来年には創刊130周年を迎える朝日新聞社。ITに精通したスペシャリストをさまざまな分野から募り、中途採用している。同社の取り組みについて、デジタルメディア本部の吉岡久美子氏に聞いた。

» 2008年01月29日 00時00分 公開
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

 日本を代表する新聞社で、来年には創刊130周年を迎える朝日新聞社。インターネットの普及により、紙の新聞を発刊するだけでなく、ネット上でのビジネスを拡充する必要にも迫られている。「のんびりしている暇はない」と、ITに精通したスペシャリストをさまざまな分野から募り、人事採用している。朝日新聞社の取り組みは、メディアの未来を映すともいえる。同社のインターネットへの取り組みについて、デジタルメディア本部ビジネス開発セクションの吉岡久美子氏に話を聞いた。

朝日新聞社のネットへの取り組み

ITmedia 朝日新聞社は今、インターネットビジネスなどの経験を持つ人を積極的に採用しているそうですね。

スタンフォード大に留学した吉岡さん

吉岡 朝日新聞社は現在、インターネットビジネスの経験を持つ人材の中途採用を積極的に進めています。わたしもその一環で入社した一人です。これまで培った経験を自由に伸び伸びと生かすように言われております。「朝日新聞社の文化に吸収されないでほしい」と言われているほどです。インターネットでビジネスをする上では、130年という長い歴史の中で築いた独特の文化に拘っていてはいられないという意識が高まっています。

 ただし、対外的にはこれまで培ったメディアとしての信頼や取材力は武器にする考えです。多くの人が朝日新聞社は「堅い会社」というイメージを持っていると思いますが、このイメージを戦略的に生かしていき、その基盤の上で新たな事業モデルを確立しようとしているのです。

ITmedia 新しい事業モデルを構築する上で、吉岡さんはどのような役割を担っていますか?

吉岡 今は朝日新聞社が提供するWebサイトである「asahi.com」上に実装する新ビジネスの開発を手掛けており、現在はアフィリエイトサービスの担当をしています。「ショッピング」ページで、旬の商品をコラム形式で紹介したり、ニュースに関連する商品を関連情報として誘導することもあります。またサイト上で本を紹介する「Book」ページでは、ユーザーの好みがユニークで、高校野球や環境問題、英語関連の書籍などに人気が集まるなど、asahi.comならではの傾向がある点が面白いです。企画に予想通りの良い反応が返ってくることに喜びを感じます。朝日新聞社は陣容がそろっていますので、企画だけでなく、デザインやシステムなど複数の部門が連携して、新しいことがすぐに実行できる点が素晴らしいと感じます。

「企画に予想通りの良い反応が返ってくるとうれしい」という

ITmedia 朝日新聞社の人材育成で印象的な取り組みは何ですか?

吉岡 米国のスタンフォード大に1年間留学させてもらい、先進的なメディアについて研究していました。SNSのMySpaceやFacebookが米国でなぜ爆発的な利用者数を獲得したのか、トラディショナルメディアはそれらをどのように生かしているかなど、最新事情を勉強することができました。

ITmedia 働いて物足りない点や改善するべきと感じることはありますか?

吉岡 企画を出すためのブレーンストーミングをあまりしない点に疑問を感じています。経験上、社員が集まって自由にアイデアを出し合うブレーンストーミングをすることで、斬新な企画が生まれることを知っています。それが今の職場にはあまりありません。各自が独自に出した考えは自己満足の世界にとどまってしまうことがあります。これからはブレーンストーミングをするよう提案したいと考えています。

「朝日新聞社のコンテンツ制作力は強み」という

ITmedia 現在の職場にはどんな人が適していますか?

吉岡 常に創造的に働く人が向いています。読者がどんな情報を欲しがっているのか、サイト上の回遊性をどのように確保するかなど常にクリエイティブであることが求められます。

 個人的には、創造性を高めるためにセミナーや大学の生涯学習に参加したり、雑誌に欠かさず目を通したりなど情報収集の努力をしています。現在は、建築家の安藤忠雄さんの『建築を語る』という本を読んで勉強しています。まったく異なる分野ではありますが、建築と創造性には共通点があるからです。

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