Software Freedom Law Centerから営利目的のクライアント向けの法律事務所がスピンオフTrend Insight(1/2 ページ)

Software Freedom Law Centerが、Moglen Ravicher LLCという新たな法律事務所を設立した。「営利目的のクライアントという稀なケースのため」とエベン・モグレン氏は話しているが、その設立の背景には何があるのか。

» 2008年04月01日 08時00分 公開
[Bruce Byfield,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 FOSS(フリー/オープンソースソフトウェア)プロジェクトに法的サービスを提供しているSFLC(Software Freedom Law Center)が、Moglen Ravicher LLCという新たな法律事務所を設立した。SFLCの法律顧問であるエベン・モグレン氏とダン・ラビチャー氏の名前がつけられたこの新会社は、SFLCの既存のサービスを営利目的のクライアントに対して提供することになる。

 ラビチャー氏によると「新会社は、SFLCの100%子会社でありSFLCが100%運営する。モグレン氏もわたしも、この会社として有料で請け負う仕事から得た収入があればすべてSFLCの運営の支援に回したいと希望しているので、まったくの別会社を設立することは考えなかった」とのことだ。Moglen Ravicherの収入をSFLCの運営に回す一方で、Moglen Ravicherは両氏が弁護士として働く時間などを含めSFLCのリソースを使用することになる。

 新会社を設立しなければならなかった理由は、非営利目的のクライアントだけを対象に支援するというポリシーをSFLCが自ら取り決めているためだ。ラビチャー氏によると「Moglen Ravicherを設立した目的は、SFLCの無償サービス対象外の営利組織であるFOSSコミュニティーメンバーに対して、SFLCが提供しているサービスと同じものを提供するということだ」という。

 モグレン氏の説明によると、SFLCがそのようなポリシーを取り決めている理由の1つは「SFLCがどのように業務運営しているかを、SFLCの監督当局――つまり、SFLCをニューヨーク州非営利団体として管理しているニューヨーク州司法長官室慈善局と、SFLCの課税控除を管理している内国歳入庁――に対して明確で透明な形で説明することができるため」とのことだ。

 とはいえモグレン氏によるとさらに重要なこととして、「SFLCへの寄付者(その多くは企業)が抱える恐れのある、SFLCのクライアントの中に自分たちのライバル企業が含まれているのではないかという懸念を払拭したい」ということもあったという。

 新会社Moglen Ravicherの設立は26日に公表されたばかりだが、モグレン氏によると実際には、クライアントから営利組織を除外していることがSFLCの目的であるFOSS支援の妨げになることがあるかもしれないと思い、「しばらく前」にすでに設立していたのだという。つまり、ますます多くのFOSSプロジェクトが企業によって設立されたりビジネス化されたりするようになってきているので、SFLCの法律顧問たちは、いつか営利目的のクライアントを支援する立場になるべき時がくるかもしれないと予見していたということだ。

 そしてその「いつか」は、Moglen Ravicherの最初のクライアントであるOpenNMSによってもたらされた。OpenNMSは小規模な企業で、現在、同社のネットワーク管理製品についてGPL(GNU一般公衆利用許諾契約書)違反の疑いがあるケースを抱えている。

 モグレン氏もラビチャー氏もOpenNMSの件については現在のところ具体的なことを話す準備ができていないとしたものの、モグレン氏は「弁護する価値はあるが世界を揺るがすほど重大なケースではない」と述べた。それでも「OpenNMSの代理となることはわれわれのクライアントすべてとコミュニティー全体にとってプラスになることなので、このケースを引き受けたいと考えている」とのことだ。

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