「グリーンIT? また一過性のブームでは?」── そう考えている人が多いかもしれないが、企業にとってグリーンITは、明確なメリットをもたらすものだ。CSRの一環として取り組む企業も多いが、機器のサイズや消費電力は直接ランニングコストに影響するという。また、アプリケーションごとに個別に構築したシステムは無駄も多い。IIJテクノロジーは、データセンター全体の効率を高めるべく、サーバやストレージといったITリソースをプール化し、必要に応じてサービスとして顧客に提供している。また、省電力設計で冷却効率に優れた機器を採用するなど、グリーンITに向け先進的に取り組んでいる。調査会社アイ・ティ・アールのシニアアナリスト、生熊清司氏が「賢いIT活用のススメ」を同社に聞いた。
生熊 社会全体で環境への意識が高まる中、環境に配慮したIT基盤を構築する「グリーンIT」の取り組みが多くの企業で始まっています。IIJテクノロジーは、データセンター事業者としてITサービスを企業顧客に提供しているわけですが、彼らからはどのような要望が寄せられていますか?
永井 最近、ある外資系の会社が、データセンターを選定する際に重視するポイントとして、「リスク対応」に次いで「グリーンIT」を挙げていました。具体的には、「省電力機器でシステムを構築したい」「グリーン電力を調達したい」といった要望です。グリーンITはもはや、海外だけの話ではありません。日本の先進的な企業も取り組み始めています。
川本 CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の一環として取り組む企業もありますが、機器のサイズや消費電力は直接ランニングコストに影響します。高性能でサイズも小さく、省電力設計の機器を積極的に使わずにシステムを構築してしまえば、データセンター事業者であるわれわれのコストが高くつき、最終的には顧客の利用料金に跳ね返ってしまいます。ユーザー企業にとってグリーンITは、CSRとコストの観点から明確なメリットをもたらします。
生熊 年々、企業の扱うデータは増え、コンピューティングパワーへの需要も旺盛になっていると思います。グリーンITの観点から、こうした需要にどう応えていきますか。
川本 IIJテクノロジーは、「IBPS(Integration & Business Platform Service)」という名称で、サービス(インフラプラットホーム+運用アウトソーシング)とインテグレーションを有機的に組み合わせ、コスト、品質、スピードの観点からお客様の要望を最適化できるITサービスを提供しています。
1社ごと、さらにはアプリケーションごとにピーク時を想定して個別に構築したシステムでは、ホスティングするラックスペースも無駄が出てしまいますし、機器や空調のための電力もより多く消費されてしまいます。これに対してわれわれのIBPSでは、ITインフラを共通プラットフォーム化しているため、アプリケーションが必要とする性能と容量をサービスとしてオンデマンドで提供できます。共用することでシステム全体の使用効率が高まり、節約されたコストは顧客に還元することもできます。企業は、われわれのIBPSを利用することが、そのままグリーンITに貢献することになるはずです。
生熊 「運用」サービスを提供する際、顧客には具体的にどのような要望がありますか。また、IIJテクノロジーとしてはどう応えているのでしょうか。
川本 1社ごと、アプリケーションごとにシステムを構築すれば、それぞれのピーク時を想定せざるを得ず、高い固定費を抱えることになります。われわれのデータマネジメントサービスやサーバマネジメントサービスが良い解決策となるでしょう。需要に応じて迅速かつ柔軟にプロビジョニングし、ストレージやサーバを拡張できるため、大幅にコストを節約できます。
仮想化が耳目を集めていますが、大抵の場合、その議論は1つの物理的なCPUをスライスして活用する技術に集中しているようです。われわれが取り組んでいる仮想化は、ストレージやサーバのリソースをプール化して使用効率を高めるものです。
生熊 長年の懸案でもある「全体最適」を実現するものですね。
川本 そうです。そして「全体最適」をすれば、必然的にグリーンITにもつながってくるわけです。ただ、プール化して使用効率を高めるためには、ストレージやサーバを仮想化するだけでは足りません。つなぐネットワークの標準化と仮想化も必要です。
ストレージをつなぐネットワークに関しては、まだまだFC-SANの優位が続くでしょう。将来的には、現在あるさまざまなプロトコルが統合され、ストレージとサーバ、そして通信は、次第に単一のネットワークとして運用されるさようになるのではないでしょうか。例えば、標準化が進められているConverged Enhanced Ethernet(CEE)やFC over Ethernet(FCoE)などもその一つとなるかもしれません。
生熊 システムを「構築」する際はどうですか。グリーンITの観点で、顧客らが重視している機器の選定基準はありますか。
藤原 高密度で集約できるサーバが求められていますが、電源や空調が追いついていないのが現状です。ラックのコストを抑えるために1ラックに詰め込んでも、既存の多くのデータセンターでは冷却が上手くいかず、トラブルを引き起こしたりしています。フロア全体を冷却する方式では、うまく冷却できないラックもでてきます。そのため、熱いラックをスポットで冷やす方法を取り入れようとしています。
川本 これまでは1台のラックに詰めるだけ詰めたら、それだけコストは節約できましたが、あまりの発熱量で隣のスペースを空ける必要が出てきました。より多くのサーバを1台のラックに集約できたとしても、全体では同じことです。発熱をどう処理するのか。やはり、スポットで冷やす方法がポイントになります。
藤原 かつてのような水冷方式が再び使えないかと考えたりもしますが、設備の関係で難しいですね。
生熊 昨年夏、FC-SANの再構築を実施されたそうですね。まずはその狙いを教えてください。
川本 これまでの構成では、フロアやビルをまたいでシームレスにアクセスできるSANを構成できませんでした。1つのフロアに配置できるストレージには制約があり、また、余裕があっても異なるフロアからはそのリソースを活用できませんでした。そこで、各フロアにエッジスイッチを置き、これらのトラフィックを1つのコアスイッチに集約して帯域管理を行う「エッジ・コア・エッジ型」に切り替えました。
生熊 SANの中核を成すスイッチにBrocade製品を選んだ理由は何ですか。
川本 既存システムがBrocade製品でしたので、まずは信頼性の高さに実績があったことと、移行のコストが低かったことが挙げられます。また、消費電力が他社製品に比べてかなり低く抑えられる点も重要な判断基準でした。
生熊 データセンターの中でも、ストレージ・ネットワークの消費電力を抑えることは全体への影響が大きいと言われていますから、アーキテクチャから省電力設計を実現しているBrocade製品を選択されたわけですね。
川本 検討段階では、消費電力に関する数値データやコスト比較資料を提示していただきました。マルチプロトコル対応によるアクセスの統合が実現できるプラットフォームなので、全体として見た場合に、発熱量や消費電力、データセンターのフットプリントを減らせる事も大きな特徴と考えます。
生熊 今後、データセンターはどうあるべきでしょうか。将来像を描いてみてください。
永井 「性能」よりも「効率性」が求められることは間違いないでしょう。例えば、電力ロスを伴うAC-DC変換を行わない直流方式も、そのひとつの策かと思います。
川本 併せて、データセンターの電力料金も従量課金にすべきだという意見もあります。
永井 そうですね、今の課金は、ラックやネットワークと同様、「30アンペア 1本幾ら」で固定制です。従量制に変えていくことで、消費電力を抑えることができるのではないでしょうか。ストレージならGバイト単位、サーバならCPU単位、ネットワークならファイアウォール、ロードバランサー、ポート単位、そして電力も従量制にした方が分かりやすいと思います。
川本 電力も含めた、これらの費用を処理量で割って比較しながら、企業がもっと賢くITを利用できるようになればいいですね。
ITmedia エグゼクティブ ラウンドテーブル : いま企業が取り組むべきグリーンIT戦略とは? | |
---|---|
日時 | 2008年6月24日(火) 15時00分〜19時00分(受付開始14:30) |
会場 | 霞山会館 霞山の間 |
概要 | ITmediaエグゼクティブ会員限定ラウンドテーブル&情報交換会 |
定員 | 30名 |
主催 | ITmedia エグゼクティブ |
協力 | 早稲田大学IT戦略研究所〔エグゼクティブ・リーダーズ・フォーラム〕経営情報学会 |
協賛 | ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社 |
SANスイッチをはじめとするデータセンター・ネットワーキング・ソリューションのリーディング・プロバイダーであるBrocade。グリーンITが叫ばれる昨今、設立以来一貫して製品の省電力化に取り組み、ユーザ企業が評価するBrocadeの強みとはいったいどこから来るのか?
今なら、米ストレージ・ネットワーキング協会(SNIA)のグリーン・ストレージ・イニシアチブで会長を努めるBrocadeが、グリーンITとは何か、グリーンITのために考慮すべきポイントとは何かを解説するホワイトペーパーのダウンロード・キャンペーン実施中。クイズに回答いただいた方の中から抽選でNintendo WiiとQUOカードが当たります。ぜひご参加ください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2008年6月30日