Ajaxをはじめとしたリッチクライアントが普及してきた。今後どのように成長を続けるのか。野村総合研究所情報技術本部の上級研究員、田中達雄氏に話してもらう。
リッチクライアントは、2003年ごろ萌芽した豊かな表現力と高い運用性を兼ね備えたWebクライアント技術であり、最近改めて注目を浴びている。日々、Ajax、Adobe AIR、Microsoft Silverlight、JavaFX、Visualforceなどのリッチクライアントに関する記事を目にする読者も多いだろう。
リッチクライアントが注目される理由を次の3つと考えている。
変遷を振り返ると、2004年ごろまでが萌芽期、2005年から2006年中ごろまでが第1次普及期、2006年中ごろから2008年が第2次普及期となる(図1参照)。
今のリッチクライアントは、第1次普及期に顕在化したリッチクライアントの課題(例えば、Webクリエイターとシステム開発者の協業を可能にする開発ツール、リッチクライアント間のブリッジ技術、オフライン機能実装など)を解決し、リッチクライアントが備えるべき機能を搭載したものとなっている。技術的に成熟したものが市場に投入されている状況だ。
リッチクライアントは、いったんクライアント環境にダウンロードされてから、適宜サーバ側のビジネスロジックを呼び出す方法で動作する。画面遷移の度にサーバ側でプログラムを動作させるHTMLクライアントと比べ、ユーザーインタフェースの独立性を高めることができる。その仕組みは、ユーザーインタフェース、ビジネスロジック、ビジネスプロセスなどを分離し、再構築するサービス指向の考え方と相性が良い。
さらに最近のSaaSもSOA(サービス指向アーキテクチャ)化してきており、SaaSのユーザーインタフェースをリッチクライアントで企業独自に開発する環境も提供され始めている。SAPのNetWeaverやOracleのWebCenter、Salesforece.comのVisualforceなどが代表例だ。
ビジネス面では、Webのユーザーインタフェースに対する価値観が変わってきた。今やWebサイトは多くの人が訪れる「企業の顔」とも呼べる存在となっており、単なる電子カタログという役割を超え、大切なお客様をおもてなしする場、ショッピングを楽しむ場へ変わりつつある。
そんな大切なお客様をおもてなしする場の操作性に問題があったり、貧相な表現力ではその企業のお客様に対する接し方の底が知れる。ユーザー側も多くの企業がWebサイトを公開する中、わかりやすく使いやすいサイトでなければ使わなくなっている。
顧客接点として成熟期を迎えようとしているWebサイトを、お客様をおもてなしする場に相応しいものに仕立てるには、リッチクライアントの高い操作性や表現力のポテンシャルが必要とされている。
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