USBフラッシュメモリ用Linuxディストリビューションの比較Super Review(1/4 ページ)

ASUS Eee PCの人気を見れば分かるとおり、フラッシュメモリ上でLinuxを利用することは今やコンシューマーレベルでも現実的なことになっている。ここでは、フラッシュメモリから利用可能なLinuxディストリビューションを5つまとめて紹介しよう。

» 2008年05月31日 00時00分 公開
[Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 最近のASUS Eee PCの人気を見れば分かるとおり、フラッシュメモリ上でLinuxを利用することは今や消費者市場でのビジネス的にも現実的なことになっている。ところでEee PCを持っていなくても、ごく普通のUSBフラッシュメモリからLinuxだけではなくデータも含めて利用することは可能で、しかもフラッシュメモリから利用可能なLinuxディストリビューションは複数存在するということはご存じだろうか。本稿ではそのようなディストリビューションの幾つかを比較してみた。

 Linuxディストリビューションの中には、Mandriva Flashなどのようにはじめから特にUSBフラッシュメモリでの使用を想定して作成されたものもある。また、USBフラッシュメモリにインストールするためのインストーラが用意されているものもあれば、幾らか簡単な変更を加えることで強制的にUSBフラッシュメモリにインストールすることができるというものもある。今回は、DSL(Damn Small Linux)、Puppy LinuxPendrivelinux、Ubuntu、Mandriva Flashの5つのディストリビューションをUSBフラッシュメモリへのインストール/利用という観点から評価してみた。

 今回試した5つのディストリビューションの中ではUbuntuのみ、USBフラッシュメモリから利用するための標準的な方法が特に用意されていなかった。一方PendrivelinuxMandriva FlashはUSBフラッシュメモリ専用のディストリビューションだ。これら5つのLinuxディストリビューションは、容量が100Mバイト以下の小型ディストリビューション(DSLPuppy Linux)と、フル装備のディストリビューション(Mandriva、Pendrivelinux、Ubuntu)の2種類に大別できる。

スモール・イズ・ビューティフル

 DSLPuppy Linuxはどちらも小型のディストリビューションで、大掛かりなシステム要求はない。DSLは、RAMがたった16Mバイトの486DXマシンでも利用できる。ただしUSBデバイスからブートすることが可能な486DXマシンを見つけること自体が難しいように思われるので、この利点にどれほどの価値があるのかはよく分からない。DSLPuppy Linuxはどちらも、小型だが柔軟なブート/インストール・オプションを提供する多目的なディストリビューションになることを目指している。なおどちらもOSとアプリケーションをすべてRAMに読み込むため高速だ。

 DSLは50Mバイトのディストリビューションで、最初のブートはライブCDから行う。一度ブートすれば、インストール用アプリケーションのPendrive(Apps→Tools→USB-HDD Pendrive)を使用してUSBフラッシュメモリにインストールできる。Pendriveはテキストベースのインストーラで、コマンド用ウインドウで実行される。試したところ、USBフラッシュメモリの検知もインストールもまったく問題なく行うことができた。

 DSLは復旧用ツールとしても便利で、壊れたマシンをブートして貴重なデータをコピーしたりするためにも利用できる。軽量なJWMウインドウマネージャを使用していて、「スタート」ボタン(DSLでは「DSL」ボタン)に慣れているユーザーも簡単に使い始めることができるはずだ。豊富な機能の装備を目指しているため、音楽プレイヤー、複数のWebブラウザ、ワードプロセッサ、スプレッドシートなど、標準的なタイプのアプリケーションが数多くそろっている。Firefox以外はどれも(特定の目的のためだけの)小型のアプリケーションだが、myDSL Extension Browserを使用してDSLを拡張することもできる。またコミュニティーリポジトリにあるパッケージを利用すれば、OpenOffice.orgなど、より多くの定番ソフトウェアを追加することもできる。DSLはこのように試してみる分には驚異的といった感じであり、また拡張することも可能なのだが、日常的に使用する本格的なポータブルデスクトップとしては他と比べて最高の選択肢というわけではないと感じた。

 DSLと同様にPuppy Linuxも100Mバイトを切る小型のディストリビューションで、やはり一番最初はライブCDからブートする。CDをブートした後は、OSとファイルシステムがすべてRAM内に読み込まれる。つまりPuppyでもファイルは毎回CDから読み込まれるわけではない。USBフラッシュメモリにインストールするには、Puppy Universal Installerを利用する。Puppy Universal Installerは、パーティーションに分割されていなかったり、ブートフラグが誤っていたりするものも含めて、ほぼあらゆるUSBフラッシュメモリを扱うことができる。ただしインストール手順がかなり複雑になることがあるという難点がある。Puppy Universal Installerでは作業内容がかなり分かりやすくなっているが、それでもディスクやパーティーションを調整する必要がある際には、それらについてあらかじめ知識を持っている必要があるだろう。例えばパーティーションのフラグが間違っている場合、問題が自動的に修正されるわけではなくGPartedが起動されるので、ユーザーが自分で修正する必要がある。

 最近リリースされたバージョン4.0はこれまでの版よりも大きく向上していて、ワードプロセッサのAbiWord 2.4.6、スプレッドシートのGnumeric 1.7.13、電子メールクライアントのSylpheed 2.4.7、Webブラウザを含む統合インターネットアプリケーションのMozilla SeaMonkey 1.1.8などをJWMウインドウマネージャ上で使用することができる。またPETgetというパッケージマネージャがあって、Puppyの公式レポジトリに自動的に接続して追加のソフトウェアをインストールできる。OpenOffice.orgは現在のところは4.0のレポジトリでは提供されていないが、バージョン3.0のレポジトリからインストールできた。

 Puppy Linuxで問題になるかもしれないこととして、データが直ちにフラッシュメモリに保存されるとは限らないという点がある。作成/編集したファイルは作業中にはメモリに保存されていて、メモリの内容がフラッシュメモリに書き込まれるのは、定期的に行われる書き込みの際か、シャットダウン作業の際かのどちらかになる。ただしデスクトップ上にあるSave(保存)ボタンを利用すれば、フラッシュメモリへの書き込みを強制的に行うこともできる。しかしこのように保存が間隔を空けて行われるため、タイミングによってはファイルの内容が失われる恐れがある。

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