不朽の名作映画「七人の侍」をマネジメントの視点からとらえてみると、リーダーシップの本質のようなものが見えてくる。
黒澤明監督の名作「七人の侍」をご覧になった方は多いだろう。多くの映画評論家が日本映画の最高傑作と位置付けている。ジョージ・ルーカスはじめ海外の映画監督にも影響を与えた作品である。よく練られた脚本、迫力あるアクション、正確な時代考証、どれを取っても一級の娯楽作品である。
この不朽の名作を全く別のビジネスの視点から読み解いてみよう。まだご覧になっていない方は一見をお勧めする。以下、映画のあらすじを追って考察を進めるので、未見の方はご注意願いたい。ただ、この映画は何度見ても面白いという人が多数なので、あらすじを知った上で見たとしても鑑賞の価値を損ねることはないと考える。
映画の冒頭、野武士の群れが山間の小さな村を襲う相談をしている。偶然居合わせた村人がこの話を聞き、村は大騒ぎになる。野武士は前年にも村を襲撃しており、このとき村人はなすすべもなく、多大な代償を払って辛くも切り抜けていた。今回はどうするべきか。村人達の意見は分かれるが、村の長老は他の村の成功事例を参考にして、腹の減った侍を雇って野武士と戦う決断をする。
村人の日常業務は稲や麦の栽培であるが、今回は野武士撃退というプロジェクト遂行を選んだのである。村人はプロジェクトの専門家ではない。そこで腹の減った侍、つまり外部専門家を招請し、指導と支援を仰いで野武士に立ち向かうことにしたのだ。
「やるべし!」は、長老のプロジェクト遂行に関する意志決定である。
街に出た村人は当初は行き当たりばったりで侍の採用を画策し、良い結果を出せなかった。人材発掘は難しいのである。たまたま豪農の子供を盗人から救った島田勘兵衛(志村喬)を見つけ、曲折を経てプロジェクト専門家として採用に至り、以降は勘兵衛をプロジェクトリーダーとして業務全般の委託をしている。
侍の報酬はプロジェクト遂行中、腹いっぱい飯が食えるというだけであり、命がけの業務に対する代償としてはささやかなもので、参加を断わる侍が大多数であった。実際、プロジェクト終了までに7名中4名が亡くなっている。その中で集まった七人の侍の動機はいろいろであるが、自発的に参加したという意味ではNPO活動ととらえることもできるだろう。
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