IP電話はあくまでも一例だ。これまでの話は今後登場してくるNGN時代のアプリケーションにも当てはまる。つまり、NGN時代のアプリケーションは、よりネットワークと密接な会話をするようになる。ネットワーク側としては、アプリケーションと接続し、制御するきっかけになればと好機といえる。
NGNを通信キャリアが提供することは、サービスアプリケーションの基盤を通信キャリアが支配するという世界の到来を意味している。しかし、ITU-Tの仕様は、サービスストラタムとトランスポートストラタムに関しての明確な機能や、どのプレーヤーが提供すべきであるかという点について言及していない。つまり、ITU-Tの教科書通りにNGNを構築すればサービスアプリケーションを支配できるほど甘くはないということだ。しかも、空席のまま、通信キャリア以外のプレーヤーがサービスストラタムを支配する構図もあり得るのだ。
仮にサービスストラタムにほかのプレーヤーが参入すると、サービスアプリケーションに対する通信キャリアの影響力は限りなく低くなる。さらに、サービスストラタムを支配するプレーヤーの制御下にトランスポートストラタムを提供する通信キャリアが置かれることになり、横並びの選択肢の1つとなってしまう。これは単純に言えばNTT、KDDI、Softbankが横並びのトランスポートストラタムプロバイダーという位置付けになり、機能で差別化できない通信キャリアは価格で勝負する以外になくなってしまう。価格競争の悪夢に直結する。通信キャリアとしては、この状況だけは避けなければならない。
まず通信キャリアとしてなすべきことは、強力なサービスストラタムをトランスポートストラタムと分離させることなく垂直統合型でサービスを提供する。強力なキャリア独自のサービスストラタムを通信キャリアが提供することができれば、アプリケーション側はサービスストラタムに合わせた開発をするようになる。
もちろんサービスアプリケーション側の開発負担を減らすための開発環境の提供も重要だ。多くの機能を通信キャリアが提供するサービスストラタム側で提供するスキームを作り上げることができれば、第2、第3のサービスアプリケーションはNGNに合わせた形に開発されることになる。
通信キャリアが先行して強力なアプリケーションをベースにサービスストラタムを形成すると、各社のNGNは異なった独自のものになる。さらに各サービスアプリケーションは、各NGNに合わせて開発されているのでほかのNGNに簡単に移ることが不可能になってくる。
サービスストラタムは魅力的な座席だ。実際、すでにOracle、IBM、NEC、日立製作所、Microsoftといったプレーヤーがサービスストラタムの空席を巡って激しい戦いを開始している。通信キャリアはシステム開発を生業としているのではないので、ソフトウェアベンダーがこの領域に入り込んでくることは避けられないだろう。
しかし、入り方が重要だ。ソフトウェアベンダーにとっては1社のNGNに入り込むのではなく、願わくは全部のキャリアの座席を獲得したいと思うのは自然だ。つまり、ソフトウェアベンダーの考えるサービスストラタムの形を標準化したいと考える。こうなると通信キャリアはいい「カモ」にしかならない。通信キャリア独自のサービスストラタムをソフトウェアベンダーの利用で作り上げなければ、ソフトウェアベンダーの支配する暗黒の世界に突入してしまうのだ。
サービスストラタムを支配できなければ、トランスポートは選択肢の1つであり、通信キャリアの優位性は全く確保できない。NGNイコール通信キャリアで市場を引っ張っているように見えるが、実は価格でたたかれるだけのICTピラミッドの最下層の座から抜け出せなくなってしまうのだ。
通信キャリアがとるべき戦略はシンプルに言えば、「まずは有力なソフトウェアベンダーを活用し、独自で強力なサービスストラタムを独自に提供するスキームをつくること」に尽きると考える。
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