3R(削減、再利用、リサイクル)のプラスとマイナス環境経営の二重性(1/2 ページ)

産業分野における環境対応は、持続可能で成長性と矛盾しないものでなくてはならない。

» 2008年11月18日 14時13分 公開
[ITmedia]

 早稲田大学IT戦略研究所所長でビジネススクール教授の根来龍之氏は、早稲田大学で講演し、「循環型経済システムの構築には、3R(Reduce=廃棄物の発生抑制、Reuse=再利用、Recycle=再資源化)の中で、Recycleがもっとも好ましい取り組みだ。経済システム的に考えても、リサイクルした資源から新しい製品が出てきて、それが売れれば、経済成長が可能になる」と説明した。さらにリサイクルの概念を取り上げ、素材の品質や機能を低下させることなく、何度もリサイクルさせるアップサイクルという手法の効用を説いた。以下はその講演内容の一部をまとめたものだ。



リユースは必ずしもいいことではない

「プラットフォーム型製品には環境経済的に意義がある」と語る根来氏

 次のような議論がよく聞かれる。メーカーは長持ちのする製品を作り、消費者はそれを修理したり、あるいは使い回したりしながら、できるだけ長く使うようにすれば、それだけ資源を無駄にしなくてすむ、というのだ。しかし、本当にそうだろうか。

 確かに、循環型経済システムを構築するためには、3R(Reduce=廃棄物の発生抑制、Reuse=再利用、Recycle=再資源化)に取り組まなければいけない。だが、再利用と再資源化は矛盾する。再利用されている限り、再資源化サイクルに入ることはない。実は、循環型経済システムにおいては、部品や素材を回収して再生産(リプロダクション)に利用する方がより重要な意味を持っているのではないか。

 再資源化(Recycle)つまり資源リサイクルとは、原材料投入→生産→使用→再生というサイクルを確立し、回していくことだ。再資源化は、資源の浪費を防ぐだけでなく、それによって経済活動を沈滞させないという意味で3Rの中でもっとも好ましい。

 新製品が次々と市場に出されることは資源の無駄だという意見がある。しかし、一方に資源として回収しやすい製品があり、もう一方に回収しにくい製品があるとしたら、回収しにくい製品をいつまでも使ってもらうよりは、回収しやすい製品に置き換えていく方が、長期的には好ましい。なぜなら、回収しにくい製品はリサイクルできないゴミになるだけだが、回収しやすい製品はリサイクルによって経済活動に何度でもつながりうるからである。その意味では、再利用(Reuse)と称して製品を長く使ってもらうことは、必ずしもいいことだとは言えない。

計画的陳腐化は決して悪ではない

 経営学の世界には、計画的陳腐化という言葉がある。これは、新製品の購買促進を目的として、企業が意図的に製品のライフサイクルを短縮する戦略のことである。具体的には、物理的陳腐化、心理的陳腐化、機能的陳腐化という3つの種類がある。

 物理的陳腐化とは、例えば7年経ったら物理的に使えなくなることを前提にして製品を設計するというようなことである。心理的陳腐化とは、デザインを変えたりすることによって、次々に新鮮さやカッコ良さをアピールしていくものだ。そして、機能的陳腐化とは、IT機器に特によく見られるように、機能をグレードアップすることによって、新しい製品を買ってもらうということである。

 いずれについても、資源の無駄使いではないかということで、一部の人たちは計画的陳腐化を強く批判している。それに対して、私は「計画的陳腐化は必ずしも悪ではない」と言いたい。次々に出てくる新しい製品が、資源リサイクルが可能なものなら、あるいは画期的な省エネ(Reduceの1種)を実現するものなら、計画的陳腐化も決して悪ではない。

 経済システム的に考えても、リサイクルした資源から新しい製品が出てきて、それが売れれば、経済成長が可能になるから、決して悪にはならない。それに対して、製品の再利用(Reuse)は、生産活動を拡大することで成長を続ける経済システムで成り立っている社会に停滞を招く可能性があり、必ずしも人々の幸福にはつながらない。

 循環型経済システムは、経済成長と矛盾しない形で実現される必要がある。

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