多様化するブログ活用法ブログの過去、現在、未来〜日本ブログ界の5年間と今後を占う(1)

日本にブログサービスが登場して5年。情報発信の場として定着し、さらに多様化を進めるブログについて、その軌跡と今後の展望を3回に渡って考察しよう。

» 2008年12月03日 12時39分 公開
[小林陽子(みずほ情報総研),ITmedia]

ブログ出現から5年?

 ブログが日本に出現して約5年だそうだ。というと、「いや、もっと前からあったよ」と感じる方がいるかもしれない。その感覚は筆者も分かる。いわゆる「ブログみたいなもの」は10年ぐらいの時間をかけていまの姿になったからだ。短期連載「ブログの過去、現在、未来〜日本ブログ界の5年間と今後を占う」の第1回は、いまやすっかり定着したブログを振り返ってみる。

 ブログの実態については、総務省情報通信政策研究所が2008年7月に出した調査結果「ブログの実態に関する調査研究の結果」が詳しい。調査では、ブログを「個人やグループなどにより運営され、時系列で更新されるウェブページ」としたうえで、「サービスやコンテンツが主に日本語で提供されているブログサイトなどを利用して開設されているブログを対象として調査」を行っている。

 この考え方に沿い、仮に「ブログサイト上で開設されているもの」をブログと呼ぶことにすると、日本のブログのスタートは、大手ISPやベンチャー企業が、各種の無料ブログ構築サービスを提供し始めた2003年後半から2004年ごろと考えるのがよさそうである。この時期に、TypePad、ココログ、アメーバブログ(アメブロ)、Seesaaブログなどが相次いでサービスを開始しており、5年という数字はこの「ブログサービスの誕生」を起点にしている。

 しかし、掲載されるコンテンツやサービス利用の目的に着目した場合、実際には「ブログみたいなもの」がそれ以前からウェブ上には存在していた。

ブログみたいなもの

 ウェブ上に公開され、特定の著者が記事を書き、それに他者がコメントを付け、公開日付の新しい記事が上位に表示される、という形態・表現全般を「ブログみたいなもの」と表した場合、そのスタートは1990年代半ばになろう。

 ウェブ上で個人的な日記に類する情報を公開し、コメントで反応を得るという利用目的に合うものを「ブログみたいなもの」ということもできる。こちらも1990年代の半ば過ぎには、Web日記を集めた日記リンクスや日記猿人というWebサイトがあった。

 1980年代のパソコン通信やfjといったニュースグループのユーザーが、ウェブ上に移行してきたのもこの時期だ(2ちゃんねるも1999年にサービスインした)。先に述べた各種ブログサービスが一気にメジャーとなったのは、情報を発信することに慣れているユーザーが多くいたことが、要因の1つとして挙げられるだろう。

 その後、大手ISPなどが相次いでブログサービスを開始し、ブログの一般化が一気に進んだ。現在国内ブログは、総数1690万、記事総数は約13億5000万件にのぼっている。ブログ数は2004年〜2005年にかけて急増し、その後も増加傾向にある。ただし、新規開設数は近年40〜50万件/月で推移しており、やや横ばいといえそうだ。※データはすべて「ブログの実態に関する調査研究の結果」より

進化したツールとしてのブログ

 いまやブログは、画像、音声、動画、地図といったさまざまな形態のコンテンツが掲載可能であり、グループでブログを共有するグループブログ、携帯電話で更新するモブログ(モバイルブログ)といった派生ツールも生まれた。そして、プロフやSNS、Twitterなどのツール展開への足がかりを作ったともいえるだろう。ブログはいま、ツールや表現形態の特徴や使いやすさを組み合わせながら、「ブログを使って何をするか」を調整している段階だといえる。

 現在、ブログの使われ方は大きく2つに分けられると筆者は考える。1つは話題を提供し、反応を得るという「会話・レスポンス型」。もう1つは著者の情報蓄積をメインとした、ワークエリアとしての「アーカイブ・ハブ型」である。

メディアとしての会話・レスポンス型ブログ

 会話・レスポンス型ブログは、著者(ブロガー)が広く一般に向け話題を提供し、その反応が議論を呼ぶようなブログの使われ方である。最近では、マスメディア報道の検証もブログで盛んに行われている。

 とはいえこれはまだ発展途上にあり、「〇〇の掲示板にこう書いてあった」「〇〇のブログでは△△らしい」といった会話が、職場や茶の間で通用するケースは少ない。確かにウェブ上での議論が大きなうねりを呼ぶこともあるが、日常的にわれわれがその動向を気にするところまではまだいっていない。

 こうした会話・レスポンス型のブログは日常的に注目度が高く、煽りや荒らしなどの問題もはらんでいるが、マスメディアと比較して深い論考ができる場合もある。また、異なるスタンスのブログ同士がトラックバックでつながりあうバランス感覚は、これまでになかったものといえよう。

情報蓄積、ワークエリアのアーカイブ・ハブ型ブログ

 会話・レスポンス型に対して、個人が行動を記録できるワークエリアとしての使われ方がアーカイブ・ハブ型である。

 ブロガーは日々の記録を、主として自分の情報管理のためにブログに書く。ウェブ上に公開されてはいるのだが、ブロガーが読者として想定しているのは自分と知人といった狭い範囲である。

 ここでは、ブログは個人の情報管理のハブの役割も果たしている。近年、複数のブログやストレージ、IMやコミュニティツールといった、特定の目的に沿って機能が洗練されているツールを多数使い分ける人がでてきた。彼らは、ブログに各ツールへの入口ガジェットを張り込んだり、リンクでコネクションすることによってブログをポータルサイトのようなプラットフォームにして用いているのである。

 例えば、動画はニコニコ動画へアップしてブログにはリンクだけを掲載する、まとめ記事はソーシャルブックマークへのリンクにする、といった使われ方が起きている。蓄積した情報の利用しやすさを求めるブログの使い方であり、知人や周辺ツール類とつながっているためのハブとしての使い方といえよう。

 「日付で管理できるので便利です」と、あるハブ型ブロガーは言う。「自分の作業履歴を残せるし、ブログからリンクしたツールに飛んでもらえれば、写真やイベント案内も、仲のよい友人と共有できます」。彼らは、不特定多数の人に自分のブログが読まれることよりも、いわば自分のデスクトップを、狭い範囲に公開しているような状況を好むのだ。

 先進ブロガーはこうも言う。「ウェブ上でツールやサービスを組み合わせることで、自分のPCがなくても、どこからでも自分の情報にアクセスできる環境を作ることができます。ハードディスクはバックアップ用ですね」話題のクラウド・コンピューティングを思わせる活用法である。

 会話・レスポンス型のブログが、情報を発信・交流するための「日の当たるブログ」であるとすれば、アーカイブ・ハブ型の人にとってのブログはツールであり、活用することで生活を便利にするための「クラウド(雲の中)のブログ」になるのではないだろうか。いずれにせよ、ブログの能力と魅力を活用して時代を牽引するのは、これからも個人ブロガーなのかもしれない。

参考:「ブログの実態に関する調査研究の結果」総務省情報通信政策研究所調査研究部 平成20年7月

著者プロフィール:小林陽子

みずほ情報総研コンサルティング部コンサルタント。システムアナリスト。企業内人材育成や人事制度設計を中心に,戦略策定などのコンサルティングを展開中。


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