不景気に強いSOA戦略の構築方法赤ちゃんを風呂の湯と一緒に捨てないために(1/2 ページ)

主要なコストセンターとみられることの多いITは不況になると上級管理職が真っ先に予算削減に手を付ける分野の1つだ。しかし、SOAはうまくするとその限りではないようだ。

» 2009年02月04日 08時20分 公開
[Ross Mason,eWEEK]
eWEEK

 現下の経済危機と景気後退は、今日のIT支出と2009年のIT予算の双方に大きな影響を及ぼしつつある。主要なコストセンターとみられることの多いITは、不況になると上級管理職が真っ先に予算削減に手を付ける分野の1つだ。ここでは、Knowledge Center寄稿者のロス・メイソン氏が、不況に強いサービスオリエンテッドアーキテクチャ(SOA)戦略の構築方法を説明する。

 ITマネージャーはいま、お決まりのタスクに直面している。すなわち“Doing more with less(最小のコストで最大の成果を)”である。“上から”の命令を受けて、冗費を節減し、核の冬に備えようという場合、まずはすべての新規プロジェクトを中断して、既存インフラの合理化と保守を優先させるのが自然な本能的判断だろう。しかし、企業の中核においてITがますますクリティカルな存在になりつつある今日、この“Doing more with less”アプローチは、むしろ逆効果を生み、致命的な結果をもたらすものとなりかねない。

 もし全社一律にプロジェクトを削減することが意味のないことであるならば、収縮する予算環境の中で、クリティカルな競争市場におけるビジネス優位性を維持するためにITマネージャーが選択できるアプローチにはどのようなものがあるだろう? ここでは既存のサービスオリエンテッドアーキテクチャ(SOA)プロジェクトをいま一度検討してみよう。SOAイニシアティブが有効なビジネス目的(機敏性の向上、部門間の連携強化、統合化による経営効率化など)のために計画されたものなら、そのイニシアティブを撤回することはビジネスに重大なダメージをもたらすだろう。

 幸運なことに、ここ数年で利用可能なツールやアプローチは劇的な進化を遂げた。SOAは、もはや以前のようなハイインベストメント/ハイリスクのプロジェクトではなくなった。すでに多くのケースで、過酷な標準化(SOAP/WS-*など)や複雑でヘビーウエイトなインフラストラクチャソフトウェアは、シンプルなアプローチ(RESTなど)とライトウエイトなオープンソースツールにリプレースされつつある。

 こうした傾向は企業や組織が、初期導入事例の失敗から学習し、よりプラグマティックかつニーズドリブンなSOAを追求できるようになったことを意味する。この場合、SOAのためのSOAといったトップダウンイニシアティブは、明確に“アウト”である。現在のような景気状況では、一からすべてを再構築することは難しい。むしろ今日のSOAプロジェクトが目指すべき方向は、新しいツールとテクニックを利用して、既存のIT資産が持つ価値を最後の一滴まで徹底的に搾り取る方法だ。

 以下、SOA戦略を追求するIT組織が今日、“赤ちゃんを風呂の湯と一緒に“捨てないために(効率性を優先して大切なものまで捨ててしまわないように、の意)取るべき5つのステップである。

ステップ1:ビジネス目標と、その目標をサポートするためにITが何をなすべきか見定める

 テクノロジー型ビジネスプロセス(マーチャンダイジング、サプライチェーン、プライシングなど)への投資は、伝統的なIT化によるコスト削減効果より、収益性に最大で10倍ものインパクトを及ぼす。ビジネス目標をサポートすることは、ITが単に注文書を処理する“ユーティリティ”になることではない。ITは、ビジネス部門とのパートナーシップの中で、何が可能であるかを彼らに示し、テクノロジーによる変革を積極的に提唱していく必要がある。

容赦のない優先順位付け

ステップ2:プロジェクトに容赦なく優先順位をつける

 「あればなおよし」と「なくてはならない」を峻別しよう。組織におけるITの重要なビジネス目標を見定めたら、現行プロジェクトのポートフォリオにメスを入れる。そしてビジネス目標に合致し、直接的に「なくてはならない」プロジェクトだけを残す。これは単にコスト削減のために行うのではなく、ビジネス目標に直結するプロジェクトへ限られた資源を集中するためである。

 ただし、優先順位付けは、必ずしも新しいアプローチやツールの検証、評価を終わらせることを意味するものではない。むしろフォーカスを絞り込めば、優先順位の高い問題を解決するために、あるいは代替プランのリスクを計算するために、新たにリソースを追加して複数のアプローチを試すことが可能になる。

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