システム構築の砦「パッケージソフト」にもマイナス成長の余波アナリストの視点(1/2 ページ)

メインフレームからオープンシステムへの移行、そしてWeb化とシステム構築のトレンドが変遷する中、パッケージソフトは一定のポジションを確保してきた。だが2009年は初のマイナス成長に陥るなど苦戦を強いられる。同市場の現状を数字で分析する。

» 2009年07月24日 08時00分 公開
[村瀬浩一(富士キメラ総研),ITmedia]

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2009年度のパッケージソフトウェア市場はマイナス成長

 メインフレームを主体とするクローズドなシステムからオープン系サーバによるオープンシステムへの移行が起こり、Web化への流れが進行する中、効率的かつ安価にシステムを開発でき、システムの構成変更もしやすいパッケージソフトウェアは重宝されてきた。

 それと足並みをそろえるようにパッケージソフトウェアビジネス市場も成長を遂げてきた。だが、サブプライムローン問題により景気が急激に落ち込んだことで、2008年度下半期以降、IT投資の抑制傾向が表面化した。これに伴い、2009年度における日本の同市場の規模は1兆2452億円となり、2008年度の1兆2531億円を下回る見通しだ。同市場がマイナス成長に転じるのは、富士キメラ総研が調査を開始した2002年から2009年までで初となる。

パッケージソフトウェアビジネス市場の規模 パッケージソフトウェアビジネス市場の規模(出典:富士キメラ総研2009 パッケージソリューション・マーケティング便覧」)

 マイナス成長の一因は、日本の基幹産業である輸出型製造業の投資抑制だ。製造業は、消費需要の低迷に加え、急速な円高によって業績が悪化している。パッケージソフトウェアで高い導入比率を誇っていた製造業での落ち込みが響く。

 2010年度以降は、先送りになっていた案件の再開や業務プロセスの再構築に伴うシステム更新などが活発になり、市場の成長が見込まれる。現在、景気低迷の影響から、環境変化に強い企業体制を構築するべく、生産性の低い海外拠点からの撤退、それに伴う物流拠点の統合などの業務プロセス改革が行われている。新たな体制作りが進むにつれ、同市場への投資も復調していく。

 特にパッケージソフトウェアビジネスは、ライセンスのサポート費用を柱にした安定的な収益が見込まれる。2013年度は、ソフトウェアライセンス費用の市場規模が8138億円、サポート費用の市場規模は4393億円になると予測される。2013年度におけるライセンス関連の成長比率は2008年度に比べて118.7%、サポート関連は135.1%となる見通しだ。このように、サポート関連の成長がパッケージソフトウェアビジネスを押し上げていく。

BI、ワークフロー、CMSなどが高いプラス成長

 2009年度のパッケージソフトウェアビジネス市場はマイナス成長の見通しだが、関連するツールは対前年比110%前後の成長が見込まれる。

2009年度のパッケージソフトウェアの市場分析 2009年度のパッケージソフトウェアの市場分析(出典:富士キメラ総研2009 パッケージソリューション・マーケティング便覧」)

 具体的には、ビジネスインテリジェンス(BI)/ワークフロー/コンテンツ管理システム(CMS)/ETL(データ抽出、変換、加工)関連などのツールを指す。特にBIやETL、企業情報ポータル(EIP)、経営パフォーマンス管理のツールは基幹系システムに比べ、低予算で導入できる。企業の既存の資産を生かし、競争力を向上させる目的で活用が進んでいる。

 パッケージソフトウェアビジネス市場の中で規模が大きい分野は、大企業向けERPやOS、データセンターだ。だが、一般化が進み需要が一巡する中で、2009年度はこれらの分野でマイナス成長が見込まれる。対2013年度で見ても低成長となる見通しだ。

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