キャッシュカードや電子マネー、社員証をはじめとするICカードの利用が大幅に増えている。それに伴い、国内のICカード市場は新たな需要の開拓に乗り出すことが求められる。同市場の今をアナリストが分析する。
交通乗車券、キャッシュカード、クレジットカード、運転免許証、社員証、住民基本台帳カード……われわれは日常生活において、さまざまなカードを利用している。
磁気カードやリライトカードの利用も依然としてあるが、近年大幅に利用が増えているのはICカードである。交通乗車券を先駆けとして、キャッシュカードや電子マネーなど、多くのカードがIC化されている。その余波は企業や教育機関にも及ぶ。ICカード化された社員証や学生証は、入退室管理システムなどの認証用デバイスとして活用されている。
図1は、各種カードの基となるICカードの発行枚数である。接触式及び非接触式(TypeA/TypeB/FeliCa)の主な用途をまとめたものが、表1だ。
ICカードタイプ | 主な利用アプリケーション |
---|---|
接触式 | クレジットカード、キャッシュカード、ETCカードなど |
TypeA(非接触式) | 社員証や学生証など |
TypeB(非接触式) | 住民基本台帳カードや公共系カードなど |
FeliCa | 交通系カード、社員証、学生証 |
表1:接触式及び非接触式(TypeA/TypeB/FeliCa)の主な用途 |
接触式/非接触式(接触/非接触一体型を含む)を合わせた国内のICカード発行市場は、2008年実績で1億8400万枚(前年比96.8%)、金額に換算すると785億円(同88.4%)となっている。2009年は数量が1億8500万枚(同100.5%)、金額が780億円(同99.4%)になる見通しだ。
現在、クレジットカード会社は総量規制の影響を受け、クレジットカードをはじめとする接触式ICカードの発行や更新を抑制している。またカードの普及に伴い需要が飽和状態になりつつある3G携帯電話向けUIMカードにおいて、数量が減少している。一方で、各種料金割引制度などの施策により、ETC(自動料金収受システム)向けカードの需要が拡大した。全体で見ると、発行枚数は微減にとどまっている。
非接触式ICカードは、交通乗車券や電子マネー向けの需要が中心である。需要の飽和がみられるのは、ここ数年で大型案件が出尽くしたこと、カードの普及が一巡したことが一因となっている。
接触式/非接触式ICカードの新たな用途の開拓は進んでいない。市場全体でも大きな変動が見られない状況だ。今後は低コスト型カードの投入による需要の掘り起こしが期待される。
図2はカード関連ビジネスとして、決済サービス市場を分析した結果である。決済サービスは、クレジットカード決済、デビットカード決済、電子マネー(プリペイド型/ポストペイ型/サーバ型)決済を対象としている。
2009年における決済サービス市場の規模は34兆730億円(前年比97.5%)となった。景気悪化の影響で消費に落ち込みがみられたほか、高額決済で利用されるクレジットカード決済の金額が減少したことが響いた。
プリペイド型電子マネー決済は、コンビニエンスストアや駅の中における利用者が増えた。決済に必要なインフラの整備が進んだからだ。景気が落ち込む中、現金に代わる小額決済の利用が進み、決済金額の総額は拡大している。同決済サービスに参入する企業は、チャージ金額を増やすキャンペーンを実施するなど、決済単価の増加に注力している。
ポストペイ型電子マネーは、小額決済が中心だ。クレジット会社が、普段クレジットカードを利用しない層の小額決済を取り込もうとする動きが影響している。だが、ポストペイ型マネーは、ガソリンスタンドやタクシーでも利用可能になっている。これに伴い、高額な製品やサービスにおける利用も増加傾向にある。
クレジットカードに加え、電子マネーの利用が拡大してきた今、現金決済からカードを活用した決済サービスへの移行が進んでいる。
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