ITmediaエンタープライズ書評特集

担当編集者おすすめ、IFRSをざっくり理解するための2冊ITmedia エンタープライズ書評

「ITmedia エンタープライズ書評」第3回。今回は国際財務報告基準(IFRS)の基礎を学ぶ書籍を2冊ご紹介します。

» 2010年12月15日 11時00分 公開
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IFRS導入前に会計の基本を知る

 IFRSは投資家を重視した会計基準といわれています。“将来、どれだけキャッシュを生み出すか”という「未来」の情報を、会計を用いて提供することに重点を置いているからです。従来の企業会計(「管理会計」「財務会計」)は、企業の「過去」と「現在」しか表わしておらず、IFRSが要求する会計情報には対応できていませんでした。

 ただし、IFRSを導入した後でも、今までの企業会計がまったく用をなさなくなるわけではありません。そのため、IFRSの導入前に、現状の企業会計を理解しておいてもけっして損にはならないと思います。

 『この1冊ですべてわかる 会計の基本』は、決算書の読み方、M&Aのメカニズム、税務会計の基本、企業分析の仕方など、企業会計を含む「会計」のさまざまな“姿”を説明した書籍です。経理部の方はもちろん、経営企画や営業、業務、IT部門の方など、会計に関わるさまざまな立場の人が活用できる内容です。

 著者の岩谷誠治氏は『12歳でもわかる! 決算書の読み方』(フォレスト出版)や『システム開発のための収益認識プロセスと会計の接点』(中央経済社)など、入門書から専門書まで会計に関わる書籍を多数執筆しています。IFRS関連のセミナーでも人気を博しています。本書をひも解くことでIFRSへの理解が深まるとともに、会計全体のさまざまな知識も身につくのではないでしょうか。

IFRSを導入するためのタスク

 IFRSに関する情報はちまたに溢れていますが、導入企業にとっては「何をすればよいか」ということが最も気になることだと思います。そのような疑問に応える1冊が、『現場で使える IFRS導入の実務』です。

 著者の野口由美子氏は「IFRS of the day」でIFRSに関する情報を発信しており、「ITmedia エンタープライズ」にも記事を寄稿しています。

 IFRS導入において、会計の十分な理解は欠かせません。ただ、経理部員や会計士ではない限り、IFRSの各論を細かくフォローするのは非常に困難です。なので、まずは、「IFRS導入」というプロジェクトの全体像を見渡すことが重要だと思います。なぜなら、IFRSの中身がどのように変わっても、全体像を俯瞰することができれば、変化に合わせてプロジェクトの軌道修正を行えるからです。

 本書はプロジェクトの立ち上げから運用監視まで、IFRSの導入に関わるタスクを時系列(30カ月間)に沿って説明しています。各工程は、「調査・計画段階」「計画実行段階」「運用監視段階」といった風にカテゴリ分けされています。各カテゴリは「1カ月目 各差異分析の立案と実施」というように手を動かせるレベルのアクションとして細分化されています。

 IFRSの導入は全社横断で進める大事業です。監査法人やコンサルタント、SIerなど社内外の様々な立場の人が関わります。本書は経理部の目線で書かれていますので、彼らがどのようにして業務部門、IT部門、グループ企業、監査法人、コンサルタント、SIerなどとかかわっていくかが分かります。

 「ITmedia エンタープライズ」や「IFRS 国際会計基準フォーラム」で最新情報をチェックしつつ、本書で工程全体を確認すると、IFRSへの理解が深まるのではないでしょうか。

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