米国で急拡大したギフトカードサービスだが、日本での定着はまだこれからといったところだ。普及に向けてさまざまな課題が浮かび上がっている。
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矢野経済研究所は、電子決済市場(非接触IC型電子マネー、ギフトカード、ネットワーク型電子マネー、デビット決済サービス、クレジットカード)に関する市場調査を実施した。その市場規模は約36兆円に達しており、非常に身近なものになりつつあることが明らかになった。
今回は、電子決済市場の中でも、特に今後の拡大が期待されている、ギフトカード市場について述べる。
プラスチック型プリペイドカード、いわゆるギフトカードは、2000年以降に米国で急拡大したサービスであり、米国におけるギフトカードの市場は、10兆円を超えるといわれている。今回の調査からは、国内においても2009年度のギフトカードの発行額が3300億円まで拡大していることが分かった。
米国でギフトカードが普及した背景として、従来の商品券サービスは、盗難、紛失、強盗などの犯罪に対する懸念があり、商品券を発行する店舗は管理面で不安を抱えていた。こうした店舗側の不安を払拭し、消費者の新しいギフト需要を喚起するために、POSを通してカードのバリューを利用できるという、ギフトカードのサービスが開発された。
日本では、米国でのギフトカードの普及を受けて、2005年ごろから、ベンダー企業がギフトカード導入支援事業者(ディストリビューター)として、小売店を中心にギフトカードの導入支援を開始した。ただし、導入した小売業者は当初、ギフトカードをどのように活用すればセールスプロモーションにつながるのかが分からずに、苦労していた状況が続いていた。
その後、ギフトカード導入支援事業者とカード発行者は、ポイントサービスとの連携や値引きサービス、チャージする際にバリューを上乗せするオンチャージサービス、会員証との連携など、顧客満足を高める取組みを強化していった。そうした取組みが徐々に実を結び、自己利用を中心に、発行規模が拡大する傾向にある。
しかし、ギフトとしての利用に関しては、依然として課題が残ったままである。日本においては、紙の商品券によるフォーマルギフトが主流となっており、プラスチックカードのギフトカードを、ギフトとして利用する習慣が根付くのには時間がかかっている。
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