オリックス・バファローズや中小企業庁が取り組む「ソーシャル革命」とは?(1/2 ページ)

salesforce.comのマーク・ベニオフ氏が来日し、オリックス・バファローズや中小企業庁などのゲストとともに「カスタマーカンパニー」(顧客中心企業)への変革について語った。

» 2013年05月29日 10時21分 公開
[本宮学,ITmedia]
photo salesforce.comのマーク・ベニオフCEO

 セールスフォース・ドットコムは5月28日、都内でクラウド関連イベント「Customer Company Tour 東京」を開催。基調講演に立った米salesforce.comのマーク・ベニオフCEOは、プロ野球球団のオリックス・バファローズや日本の中小企業庁などのゲストを招き入れ、さまざまな企業や組織のクラウド活用事例を紹介した。

 「全てがインターネットにつながる時代になった」――ベニオフ氏は現代の企業ITを取り巻く環境についてこう話す。企業ITの歴史はメインフレームからクライアント/サーバシステムへと移り変わり、今ではクラウドやモバイルといった「第3の波」が台頭しつつある。こうした新たなテクノロジが、企業と顧客、パートナー、製品、サービスの関係性を変えつつあるという。

 その潮流を体現している企業の1つが、英国を代表するファッションブランドであるBurberryだ。同社は2012年、多数のデジタルサイネージを店内に設置した「未来型店舗」をロンドンでオープンした。この店舗では、顧客に取り付けたRFIDセンサーと顧客のSNSアカウントをシステム上で連携させることで、顧客1人1人に合わせたコンテンツを次々に店内のディスプレイに映し出すという。

photo Burberryの「未来型店舗」の様子。同社はこのほか、コラボレーションツールのChatterをベースに開発した社内SNSを活用するほか、ソーシャルマーケティングツールのBuddy MediaやRadian 6を活用し、SNS上の顧客の声をヘルプデスク業務に取り込む「ソーシャルCRM」を展開している

 「クラウドやモバイル、ソーシャル技術を活用し、顧客やパートナーと深く結び付く。これこそが『カスタマーカンパニー』(顧客中心の会社)になるということだ」とベニオフ氏は話す。例えば日本では、自社SNS「トヨタフレンド」を構築したトヨタ自動車や、カメラと連携するモバイルアプリを展開しているキヤノンなどがカスタマーカンパニーと呼べるという。

経営者同士のコミュニティーを――中小企業庁がクラウドサービスを展開へ

 基調講演のゲストとしてベニオフ氏に招き入れられたのが、経済産業省 中小企業庁 事業環境部長の鍛冶克彦氏だ。同庁は同日、salesforce.comの各種サービスを全面採用して中小企業向けのポータルサイトを構築することを発表している。

photo 経済産業省 中小企業庁 事業環境部長の鍛冶克彦氏

 7月オープン予定というこのポータルサイトは、経営者同士がコミュニケーションしたり、弁護士や税理士、コンサルタントなどの専門家からアドバイスを受けられる仕組みを用意。オープン後3年以内で、企業100万社と専門家1万人の参加を目指すとしている。

 「日本の中小企業は、ここ数年で60万社ほど減ってしまった」と鍛冶氏は話す。同庁がその原因について調査したところ、1つの原因として「女性経営者が先輩経営者からアドバイスを受けるためのコミュニティーがない」といった問題が浮上したという。

 他方で、「日本の中小企業は大企業の下請けであることが多いが、製造業の場合、大企業のグローバル化に伴って仕事が減ってしまっている」という調査結果も。ポータルサイトでは、経営者同士のコミュニケーションを促すとともに、それまで関係が薄かった異業種間での協業も支援していく考えだ。

 「中小企業の発展にはコミュニティーが重要。例えば、ある女性が自分の子どもを抱っこするためのひもを作ったところ、それが近所で評判になって起業した例もある。そうしたコミュニティーを支援するためにもクラウドは重要だ」と鍛冶氏は話す。

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