それまで筆者を含めた全員が、漏えいした情報はデジタルデータだろうという先入感を持っていた。しかし、そうとは限らない。A社にはコピー機が4台ある。コピー機には印刷枚数を数えるカウンター機が挿入されていた(10年ほど前のコピー機はそういうタイプが主流だった)。筆者はA社のメンバーに、「カウンターの管理はどうしていますか」と聞いた。
この時代はまだコピー単価が高額だったので、一般の企業ではカウンターで印刷枚数を管理していた。通常は、オフィスを最後に退出する人が数字を管理簿に記載し、カウンターを外して退出する。この時点でコピーが使用できなくなる。カウンターは、所定の場所(通常は金庫の鍵などと同じ場所)に保管し、施錠することになっている。
ただ、A社では緊急訴訟などへの対応を理由に、カウンターが常にコピー機に挿入されたままだった。事務員によれば、総務担当者が帰宅前にカウンターを見て、台帳に記録することはしていたようだ。
これを聞いて筆者は、A社のメンバーに「B社に関する情報のうち、紙文書に相当するものはどのくらいありますか。また、海外のエージェントが購入した情報にデジタルデータもあるはずです。至急調査してください」と依頼した。こう伝えるすると、さすがは弁護士事務所の方々であり、作業は早かった。週が明けた月曜日の夜7時頃には全ての調査が完了するというので、筆者も報告を受けた。結果は次の通りだった。
こうした事実から、筆者は調査プロジェクトのメンバーに、まず当時の清掃員に関する調査とその当時の書類状況について、全ての「事実」を報告するようにお願いした。すると、この清掃員は中国人の元留学生で、卒業後しばらくはアルバイトで清掃員をしていたことが分かった。既に帰国し、中国では有名な一流企業に就職しているという。
漏えいした情報とこれらの事実を突き合わせてみると、とんでもないことが判明した。
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